Intelの開発者会議「Intel Developer Forum(IDF) 2015 San Francisco」(IDF 2015)が米カリフォルニア州サンフランシスコ市内のMoscone Center Westで8月18〜20日の会期で開催している。8月初旬には「Skylake」(開発コード名)こと第6世代Coreプロセッサー・ファミリーのデスクトップPC向けモデル「Core i7-6700K」が登場し、ノートPCやタブレット向けのラインアップについても比較的近いタイミングでの発表となる見込みで、「Skylake一色」になると思われていたIDF 2015だが、その初日に行った基調講演は、その予想とは異なる内容となっていた。
「開発者のためのカンファレンス」を標榜して内容の試行錯誤が続いていた近年のIDFだが、2015年は従来のPC限定のOEMメーカーよりも、より幅広い層の開発者をターゲットとしてアピールしたいという意図を感じた。例えば、組み込み向け小型プロセッサ「Quark」を発表して以降、小型ボードのEdison、ボタン大のCurieなどを発表し、これまでIntelが比較的苦手としていた小型の組み込み機器やウェアラブル機器での協業や、同プラットフォームを活用して製品開発を行うデベロッパをCESなどの場面で紹介する機会が増えている。IDF 2015も例外ではなく、これらプラットフォームを使って開発を行うスタートアップ企業数社の紹介ビデオを流すところから基調講演はスタートした。
「IoT」(Internet of Things)は最近IT業界ではよく用いるキーワードだが、その意味するところは幅広い。IntelがこのIoT分野で最も得意とするのは、末端のセンサデバイスで収集したデータを処理するバックエンドのデータセンター向け高性能プロセッサだが、一方で、末端のデバイスや各種センサ技術にも興味を示しており、ここでのエコシステム拡大を狙っているのが最近のIntelの特徴でもある。
Intelは、2014年に「Basis Peak」というフィットネス向けに特化したスマートウォッチを開発するBasis Scienceを買収しているが、買収後初めてとなる製品は2015年に登場しており、米Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏自らが身に付けてステージ上で講演を行っている。これはほんの一例だが、Intelの技術を少しずつ浸透させていくのが狙いなのだろう。
デバイス以上に“熱心”なのが「RealSense 3D」対応のカメラ技術だ。IR(赤外線)センサを組み合わせて撮影対象の“深度”(奥行き)を測ることが可能なカメラで、小型モジュールの開発でノートPCやタブレットでの採用例を増やしている。深度を測れるメリットの1つは「対象物体のサイズや立体的な構造を把握できる」点にあり、Kinect for Xboxのようにモーションセンシングによるジェスチャー入力に活用している。
この特徴を利用して、RealSense 3D対応カメラを搭載したスマートフォンやタブレットを手に持ちながら対象物をさまざまな角度や位置から撮影することで、3Dカメラの撮影情報と加速度センサの移動軌跡を組み合わせて、物体や背景の三次元構造をデータ化することが可能だ。
IDFの基調講演ではGoogleが進める「Project Tango」との連携を紹介しており、このRealSense 3D対応カメラ搭載スマートフォンとProject Tangoを組み合わせて、ステージ上に用意したリビングセットの空間をリアルタイムで3Dオブジェクトに変換する処理を紹介していた。
このほか、ロボット制御OS(ROS)におけるRealSenseサポートの発表や、Razerが開発したRealSense搭載WebカメラでのTwitch中継実演なども披露するなど、少しずつ普及しつつあるのがうかがえる。後者について、IntelではTwitchによるゲーム中継大会のスポンサードを行っており、ここでもRealSense技術(と同社Coreプロセッサ・ファミリー)を積極的にアピールしているようだ。
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