「ガジェット」という言葉が今日持つ意味はさまざまだが、ある辞書には「ちょっと気の利いた小道具や装置」という意味で載っていた。
街を歩いていると、時折、技術革新に置いて行かれていたり、時代の流れでニーズが変化し、もう必要とされていないのかも……と感じる、ロストテクノロジーのようなガジェットを見かけたりすることがある。
今回はそのような「街中ロストガジェット」にあらためて注目してみたい。
つい数年前までは、外でインターネットをする場合の選択肢の1つとして「公衆インターネット端末」があった。空港やホテルのロビー、図書館といったところに設置され、利用形態や料金、端末もさまざまである。
近年では、スマホの急速な普及によって個人の手持ちの端末だけでネットでのコミュニケーションはもちろん、調べ物や買い物に十分事足りるようになった。さらに、公衆Wi-Fiの拡大やSIMロックフリー端末の浸透によって、国内だけでなく海外でもネットを使うことにそれほど不自由しなくなった。ちょうど携帯電話が普及して公衆電話がその数を減らしていったように、公衆インターネット端末も今後減少の一途をたどっていくのだと思われる。
そんな消えゆく運命を大いに感じさせる「絶滅危惧種」である公衆インターネット端末にあらためて注目してみる。今回は、とある複合ビルの一角に不思議な雰囲気を持つ公衆インターネット端末を見つけたのでご紹介したい。
東京・西新宿にあるこちらの複合ビルを地下に降りる。
レストランが並ぶビル地下街の一角の奥まった空間に、ぼんやりとディスプレイの光が見える。
少し奥に隠れるように、つとめて遠慮がちに、誰からも忘れ去られたような公衆インターネット端末がポツンと存在していた。地下鉄の駅とオフィスビルの間を移動するサラリーマンや、レストラン街に食事をアテにしてやってきた人たちが行き交う中、あまりにも存在感がない。
近づいてみる。このように、西新宿地下のレストラン街にたった1つだけのインターネット端末。多分、毎日ここを通っている人すら気付いていないかもしれない、それくらい奥ゆかしさを感じるたたずまいである。そして何か特別なことができそうな、まるでライトノベルであれば異世界の入り口扱いになりそうな、そんな雰囲気すら醸し出している。
端末はNEC製だった。課金機部はアットステーションという、2000年から販売されている端末のようだ。ネットカフェに入っているような制御ソフトがインストールされており、価格は10分100円だった。
100円玉投入で利用開始。
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