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» 2016年03月14日 06時00分 UPDATE

「不動産×VR」で内見が不要になる? ドローンやOculusの活用も

物件選びにおいて最も時間の掛かる「内見」の煩わしさを解消してくれそうなWebサービスが国内外で登場している。ドローンやOculus Riftなどの先端技術を駆使しているのが特徴だ。

[橋本沙織,ITmedia]

 春と言えば、多くの人が新しい環境で生活をスタートさせる季節。それに伴い、3月は引っ越しの需要が高まる時期でもある。引っ越しの面倒と言えば、やはり「物件探し」である。新居を見つけるためのプロセスは楽しくもあるが、時間がかぎられている中でいくつも物件を内見するのは大変だ。

 これが地方への転勤や、ましてや海外赴任ともなればますます苦労する。これまで住んだことのない土地だからこそ物件は慎重に選びたいものだが、遠く離れた土地に何度も足を運ぶのは大変……。そんな内見の煩わしさを解消してくれそうな、「新しい物件の選び方」が国内外で提案されている。

VRサービスのイメージ。Halstead PropertyのFacebookページより引用

VR技術を活用し、遠隔での内見を可能に

 ニューヨーク州の中心地であるマンハッタンに本社を置く大手不動産仲介会社のHalstead Propertyが、Facebook傘下のOculusと提携し、VR技術を活用した物件の内見サービスを始める。

 Halstead Propertyの顧客はVRヘッドセットの「Oculus Rift」を装着することで、気になる物件にわざわざ足を運ぶことなく、仮想現実の世界に作られた物件に「ワープ」することで内見できる仕組みだ。

 同社によれば、VRの空間で部屋の隅々まで自分の目と足で確認することが可能で、あたかも自分が本当にその部屋にいるかのように「実際にその部屋に住んだら……」と想像することができる。当初はVRの空間にうまく適応できず、部屋の入口や壁に当たってつっかえてしまったり、船酔いのような感覚を覚えるかもしれないが、それも徐々に慣れてくるという。このサービスでは、まだ竣工していない物件の内見も可能となる。

 顧客としては遠く離れた場所にある物件を見るために、わざわざ時間と旅費を使う必要がなくなる。同時に、不動産会社にとってもメリットは大きいだろう。

 物件を購入してくれるかも分からない顧客をわざわざ現地へ連れて行く手間が省けることは言うまでもなく、内見のハードルを下げることで今まで取りこぼしていた顧客の来客も見込めるかもしれない。特に外国に休暇用の家を買うような富裕層の取り込みにも貢献するはずだ。また、現地即売会である「オープンハウス」を開催する頻度も下げられるだろう。

ドローン、Google Glass……先端技術の活用続々

 Halstead PropertyはVR技術を活用しているが、米国の不動産業界では他にも先端テクノロジーをビジネスに活用するケースが見受けられる。

 多店舗を展開する不動産仲介会社のDouglas Ellimanは、ドローンで撮影した物件の映像を顧客にiPadで見せるサービスを展開。他にも、Google Glassを自社のアプリと連携させて不動産情報を提供する会社もある。各社、「よりリアルな情報を顧客に提供すること」に試行錯誤しているのだ。

ドローンで撮影したビデオで物件情報をチェック(Douglas Elliman

 Halstead Propertyの親会社であるTerra HoldingsのLeone氏はニューヨークタイムズの取材に対してこう話す。「近い将来、実際にクローゼットを開け閉めする感覚や、蛇口をひねって出てくるお湯の温度なんかも体験してもらえる日がくるだろう」

 ニューヨーク在住の筆者も、国土が広大なアメリカでの物件探しに苦労した経験をもつ一人。内見するための移動は、体力的にもきついのだ。世界でもトップクラスの人口密度を有するニューヨーク。当然人の入れ替わりも激しく物件が決まるスピードも速いので、このような先端技術により効率化されることは、大いに歓迎したい。

SUUMOなど国内サービスも登場

 時を同じくして、日本の事例も登場し始めている。SUUMOがVR用のゴーグルと同社の公式アプリを使って、VRで物件を内見できる「SUUMOスコープ」を提供し始めたのは2015年9月のことだ。

SUUMOスコープ

 SUUMOスコープは紙製のスコープを自分で組み立て、アプリをインストールしたスマートフォンを内部にはめこんで使うという手軽なものだ。「VRを不動産の物件探しに利用する」という点では同様だとしても、Oculus Riftなどの専用デバイスを使用する米国のサービスとはその規模感も利用シーンも異なる。こちらはなんと、無料のマンション情報誌についてくる「雑誌の付録」なのだ。

 加えて、三菱地所が2016年から導入する「VR営業ツール」も注目すべき事例だ。こちらは住宅展示場に出展している物件内などに、サムスン製のヘッドセット「Gear VR」とタブレット端末を設置し、“没入体験型”の営業ツールとして提供する。

 国内外を問わず、こうした先端技術と不動産業界の相性は非常に良さそうだ。これまでは“コンセプトの提案”に過ぎなかったVRが、単なるバズワードにとどまらず、いよいよ既存のサービスや業界との接点を表し始めてきた。今後の展開にも引き続き注目したい。

ライター

執筆:橋本沙織、編集:岡徳之


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