Appleが示した3つの重要なイニシアチブ林信行が見るApple発表イベント(2/3 ページ)

» 2016年03月23日 00時00分 公開
[林信行ITmedia]

“10億台企業”ならではの「健康」への取り組み

 Appleが、責任ある企業として示したもう1つの取り組みが「健康」への取り組みだった。世界中で5億台以上が動いているというiPhone。この数の多さを難病の解決に活用しようと2015年に発表されたのがオープンソース技術「ResearchKit」だ。既に日本を含む世界中の大学や研究所で、パーキンソン病から糖尿病、ぜんそくなどさまざまな難病の研究に用いられている。

 この技術の登場で、パーキンソン病を始め、多くの難病に対して史上最大規模の研究プロジェクトが動き始めた。その結果、例えば糖尿病に関しては、これまで同系統に区分されていた糖尿病患者の中でも細分類が行われるなど、一定の成果が出始めている。また米国の50の州でぜんそくを引き起こしている原因が発見された。

ResearchKitの成果として、調査結果から2型糖尿病患者の中にもさまざまなタイプがあることが分かった

 そんなResearchKitの登場から1年が経ち、Appleはこの経験を通してもう1つ学んだことがあった。それはResearchKitで作った病状を監視するアプリは、医療行為の効き目を評価するだけでなく、例えば投薬の量を調整したり、患者の心身の状態を理解して接したりと、患者へのケアの部分でも大きく役に立つ、ということだった。

 そこで今回、AppleはResearchKitに並ぶ技術として、新たにCareKitと呼ばれるオープンソース技術を公開。まずはパーキンソン病のケアをするアプリを同時発表した。

新たに「CareKit」を公開

パーキンソン病のケアをするアプリが登場した

 この技術が持つ可能性は非常に幅が広い。筆者も最近は医療・ヘルスケア系の講演が多く、その中で知り合った福島県を拠点とするひもろぎグループの渡部芳徳代表は、以前から「うつ病の状態を良くするためには、自分のその日のうつの状態を把握し、その上で少しずつ投薬量を減らしていくのが理想」だと語っており、毎日のうつの度合いを測れるアプリ「アン・サポ」を開発している。

 これまでのHealthKitやResearchKitには、これをうつ病のケアに役立てる方法はなかったが、今回のCareKitは、まさにこうしたことを可能にするための技術であり、それだけに筆者も個人的に精神疾患の分野での活用に期待をしている。

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