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» 2016年04月21日 06時00分 UPDATE

科学思考を日常へ:「体験型はもう古い」 リニューアルした日本科学未来館の狙いと新しい展示をチェック (1/2)

リニューアルした日本科学未来館は従来の科学館とは一線を画す、どこにもない新しい科学館を目指す。

[井上輝一,ITmedia]

 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は4月20日、東京・お台場の日本科学未来館常設展をリニューアルオープンした。前回の記事では「9次元からきた男」を取り上げたが、今回は新展示「未来逆算思考」「100億人でサバイバル」を中心に、リニューアルの狙いを紹介する。

思い描く未来を作るには? 「未来逆算思考」

新展示「未来逆算思考」 50年後の地球を思い描き、そこから現在までやるべきことを逆算する「未来逆算思考」

 「未来逆算思考」は、いわゆる持続可能な社会をより分かりやすく、ゲーム形式で考えられるコーナーだ。50年後の地球がどうあってほしいか、子孫にどんな地球を贈ることができるのかという観点で、8種類の50年後の地球の中から1つを選ぶ。その地球を実現するべく、未来から現在にさかのぼって思考する。

中央に現在から未来までを見通せる大きなディスプレイがある 中央に現在から未来までを見通せる大きなディスプレイがある。山あり谷ありだ

 思考と言われるとなんだか難しいように聞こえるが、実際にやることは簡単だ。展示中央にある、現在から未来までを見通せる大きなディスプレイを見て、コースを考えて手元のモニターでなぞるだけ。実際にやってみた動画がこちらだ。

 残念ながら理想の地球を子孫に残すことができなかった筆者には、子孫から「気持ちはうれしかったよ!」というお手紙が来た。理想の地球を未来へ残すには何をすればいいだろうか。子孫たちに対して何をしてあげられるだろうか。考えさせられる展示だ。

手紙の内容 「『芸術文化に満ちあふれた地球』は、私たちの時代まで届きませんでした。残念です……。」

地球のシステムと人間社会を巨大模型化 「100億人でサバイバル」

「100億人でサバイバル」 地球のシステムと人間社会を巨大模型にした「100億人でサバイバル」

 「100億人でサバイバル」は、実際に起こった災害の被害を模型の中で起こすことで、私たちの身近にも命にかかわる危険が存在するということを示すコーナーだ。直径6.7メートルの模型の中では、地球や人間社会から生まれるさまざまなハザードが赤い玉として表現されている。これが火山に溜まれば火山噴火として、二酸化炭素の玉と相互作用して地域を温暖化すれば感染症の発生として人間社会に襲い掛かる。

 これらの災害は2011年3月の東日本大震災や、1990年11月の雲仙普賢岳噴火など、実際に起こったものをモデルとしている。2016年4月14日に熊本地震が起きたばかりだが、この「100億人でサバイバル」を通じて「危険の種に気付く」「正体を突き止める」「災害に備える」「被害を抑える」「経験を生かす」といったことをいま一度考えられるよう、研究成果や解説などを展示している。

 「私たちの命や社会の存続を脅かす危険から身を守るには、それらが生み出される仕組みを知る必要があります。減災という形で、皆さん個人や社会全体に役に立ってほしいという思いを込めました」と、日本科学未来館館長の毛利衛氏は制作の意図を語った。

「100億人でサバイバル」に込めた思いを語る毛利氏 「100億人でサバイバル」に込めた思いを語る毛利氏

 「東日本大震災の経験を元に、また、私自身のNASAで受けた危機管理訓練の中で叩きこまれた『自分が今どういう状況にいるのか』『これからどういう風になっていくのか』と先へ先へ読んで考えていく思考方法をコンセプトとして展示に取り入れました」(毛利氏)

 「これからは自然ばかりではなくて、人間が関わる災害が増えます。原子力発電所の津波による被害で、私たちは影響を受けました。また、なかなか目には見えないエボラ熱などの『感染症』がひしひしと私たちの存在を脅かしています。それらが個々に起きるのではなく、つながっているんです。地球の大きな火山活動、太陽からのエネルギー、人間が地球上どこでも行けるようになったことなどいろんなファクターが複雑にからみあっています。それをシンプルにわかるように、精いっぱい表現しました」(毛利氏)

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