“パソコンの斜陽化”でMicrosoftがパートナーに打ち出すメッセージとはCOMPUTEX TAIPEI 2016(1/2 ページ)

» 2016年06月02日 21時07分 公開

 例年、COMPUTEX TAIPEIでのMicrosoftの基調講演といえば、現地台湾に存在する多数のOEMパートナーとの関係をアピールするため、OEM担当のトップである同社Nick Parker氏がOEM各社の新製品を紹介しつつ、同社の最新戦略をアピールするのが常だった。

 だが今回、メインプレゼンターとなったのはWindows&デバイス部門(WDG)のトップで、Windows開発を指揮するTerry Myerson氏。このほか、デモストレーションの場面ではすべて中国語が用いられるなど、台湾だけでなく中国本土でのビジネスを意識した仕掛けが多数見られたのが特徴だ。

米MicrosoftエグゼクティブバイスプレジデントでWindows&デバイス部門(WDG)担当のTerry Myerson氏

 これには2つの意味があると考える。1つは経済圏として大きく成長した中国をビジネスとして非常に意識していることをアピールするもの、そして2つ目に、今回新たに発表された施策において、現地のパートナーを多数巻き込むことを狙いとしたことが考えられる。このあたりに留意しつつ、今回の基調講演の模様をみていこう。

Anniversary Updateと次に注力すべき分野

 基調講演に登場したMyerson氏はWindows 10エコシステムの拡大に触れつつ、もはや定番となった世界で3億台のインストールベースと、過去最大の導入スピードを示すスライドを提示して、その強固な地盤をアピールした。

Windows 10のインストールベースが3億台を超えたことをアピールする定例のスライド

こちらも同じく、過去最大ペースでWindows 10の利用台数が拡大していることを示すスライド

 しかし、OEM各社の現在の最大の関心は、今年7月中にも登場がウワサされている「Redstone(RS1)」こと「Anniversary Update」にある。

 Anniversary Updateは、Windows 7/8.1から10への無償アップグレード期間が終了する7月29日より前のタイミングで提供が開始されるが、このタイミングに合わせて同時期に出荷されるWindows 10搭載PCをこのAnniversary Update適用済みのものにする形にしておくのが望ましい。無償アップグレードによる旧ユーザーのWindows 10への誘導はすでに鈍化しているとみられるが、このAnniversary Update適用済みPCが今夏以降の商戦の要となる。秋ごろ登場が予測されるIntelの第7世代Coreプロセッサの「Kaby Lake」搭載マシンの市場投入と合わせ、今年後半の盛り上がりに期待したい。

 壇上ではAnniversary Updateのデモストレーションが披露されたが、担当したのはWDGのWindowsエクスペリエンス担当エンジニアリングマネージャのLi-Chen Miller氏。米国出身なので中国語はそれほど上手くないと前置きしながらも、すべてのデモストレーションを中国語のスピーチとライティングでこなしており、会場を沸かせている。現地向けサービスではあるが、中国語圏でのビジネスを非常に意識したものだと考えられる。

すべて中国語で行われた今回のAnniversary Updateのデモストレーション。英語字幕が表示されるのだが、白い背景に隠れてほとんど見えなかったのはご愛敬。まずはMicrosoft Bandなどコンパニオンデバイスを使ってのWindowsサインインの様子を紹介

Cortanaのデモも行われたが、実は台湾ではまだ同サービスが提供されておらず(標準中国語で本土向けのものは提供されている)、その点を後ほど質疑応答で突っ込まれていた

 Myerson氏の後には、恒例となるParker氏のOEM製品紹介が行われた。PC市場の縮退が叫ばれる昨今ではあるが、カテゴリによっては現在も成長中の分野もある。そこでOEMメーカー各社が可能性を模索しつつ、こうした重点分野への投資や製品展開を行うよう促し、全体としてのバランスを保っていくのがMicrosoftとしての狙いということになる。

米Microsoft OEM部門担当コーポレートバイスプレジデントのNick Parker氏

 2 in 1が成長カテゴリであることはたびたび触れられているが、やはりここでの注目は「ゲーミング」と「IoT」だろう。ゲーミングではハイエンドPCだけでなく、VR HMD型のデバイス製品が紹介されており、後述の新発表と合わせて業界やMicrosoftとしての注目分野であることがうかがえる。IoTも同様に、従来のPC OEMが製品範囲を拡大する中で徐々に水平展開が進んでおり、今後のさらなる成長が望まれる。

現在どのカテゴリの製品が伸びているかの比較。やはり2 in 1タブレットとゲームは強い。それにIoTなど組み込み分野が続く

ゲーミングのカテゴリにOculusやHTC ViveなどVR HMDが含まれている点に注目

IoT分野は従来どおり業務用タブレットやスマートフォンが中心だが、同時にIoTゲートウェイや新しいタイプのPOS、産業用ロボットなど横展開も進む

 また、ちょっとしたトラブルで基調講演中のタイミングではParker氏にほとんど紹介されなかったが、マウスコンピューターのWindows Hello対応デバイス2製品がこのCOMPUTEXのタイミングで発表されている。

 1つは通常のPCに顔認証機能を付与するカメラで、もう1つは非常に小型のUSBドングル型指紋認証装置だ。顔認証カメラは、現在Intelが提供しているRealSenseカメラが日本円で約1万5000円ほどとやや高めで、これをより手軽に入手できるものを目指したという。

 一方のUSB指紋認証装置は小型軽量でシンプルなものを目指しており、求めやすい価格でじゃまにならないサイズのものを制作したという。多少ラグはあるものの、スリープ状態からのWindows Helloによるサインインも可能とのことで、夏のAnniversary Update提供と合わせて楽しみにしたい。

マウスコンピュータが提供予定のWindows Helloの顔認証機能を提供するカメラ

こちらは指紋認証用USBデバイス。起動時にノートPCやタブレットに挿入して指で触れているだけでサインインが可能になる仕組みをイメージしている

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