App Storeに加えられる3つの改善――林信行がフィル・シラーにインタビューWWDC直前の重大独占ニュース!(2/3 ページ)

» 2016年06月09日 03時45分 公開
[林信行ITmedia]

定額課金で、ついに崩れた70:30の法則

 ここからは、AppleがApp Storeで取り組んでいる改善について、より詳細に見ていく。1つ目のアプリ審査期間の短縮に関しては、これ以上深く述べることはないが、残りの2つの変更は、アプリ開発者向けにもう少し解説する必要があるだろう。

 まずは「サブスクリプション」(定額課金)型サービスについて。

 月額課金型ビジネスといえば、iPhone以前のiモード時代、日本では年間数千億円規模の世界に誇る市場が築かれていた。その定額課金ビジネスが、ついに日本で半数以上のシェアを持つスマートフォン、iPhone上で実質全面解禁がなされる。

 シラー氏は「これまでiPhone上でサービスを提供したいが、適切な課金モデルがないために断念していた開発者にとって、今回の変更は大きなビジネスチャンスをもたらすだろう」と語る。

 そのルール変更では、ただ、カテゴリーによる縛りが撤廃されただけではない。これまでApp Storeを通したビジネスで、常に出てくるのが70:30の黄金ルール。つまり、売り上げのうちの7割は開発者に入るが、3割はAppleが徴収するという収益分配のルールがある。しかし、定額課金に限って、ついにこのモデルが撤廃される。

 定額課金を開始した初年度は、従来通りの70:30の分配となるが、2年目以降もユーザーが定額課金での利用を続けた場合は比率が85:15(つまり、開発者は売り上げの85%を得られる)に変わるという。

 「2年目以降から分配率が上がることは、開発者にとってアプリがユーザーにとって高い価値を提供し続けるように改善を続けるモチベーションにもなるはずだ」とシラー氏は話す。

 ちなみに、この利益分配のルール変更は、既に提供済みのアプリに対しても適応される。つまり、既に2年目、3年目のユーザーがいる映像・音楽/ニュース/クラウドなどの定額課金型アプリでは、すぐにでも85:15での利益分配変更が適応される模様だ。

 また、定額課金ビジネスでは、プライスポイントの見直しも行われる。

 現在のApp Storeでは、最も安価なアプリが120円、その次が240円といった具合に、あらかじめ用意されたプライスポイント(価格帯)が86あり、アプリに1つの価格帯を設定すると自動的に各国通貨でそれに対応する価格が割り振られていた(例えば4.99ドルのアプリは、日本では600円、ヨーロッパでは5.79ユーロなど)。今回、サブスクリプションによる定額課金に限り、このプライスポイント(価格帯)が200に増える。

 「これによりサービスのグレードなどに応じた細かな価格設定のチューニングが可能になる」とシラー氏は言う。

 もう1つ重要なのが、国単位での価格設定を個別に設定できる、という変更だ。

 「例えば、先進国ではある程度の価格で提供しているサービスでも、新興国ではもう少し控えめな価格を設定して、まずはユーザー数を獲得したいということがあると思います。新しい定額課金のルールでは、そうした国別の価格設定が可能になります」。

 Appleは、1つのアプリ内で異なるグレードのサービスを用意し、グレードごとに別の価格を設定することも想定している。例えば、毎月120円を支払えば特定の機能は使えるが、より専門的な機能も使いたい人は毎月240円を、全機能を使いたい場合は毎月600円を支払う、といった具合だ。

 こうした異なるサービスグレード間の移行(アップグレードやダウングレード)も可能なら、同じ月額料金内でのサイドグレードも可能になる。

 サイドグレードとは、例えば、同じアプリ内のスポーツ情報だけの購読と、ニュース情報だけの購読がともに同じ120円で提供されている場合に、購読内容をスポーツから、ニュースに切り変える、といった具合に、同じ価格の別サービスに購読内容を切り替えることを指す。

 売り上げの分配比率変更やプライスポイントの追加、国別の料金設定は、これまで開発者から再三要望が上がってきたが、その度にAppleが拒み続けてきたApp Storeの仕様変更だ。これは筆者の想像だが、Appleは新たに始めるサブスクリプションモデルから、こうした変更を実験的に取り入れ、どのような影響が出るのかを実験した上で、他のビジネスモデルに対しても展開を広めていくのではないだろうか。

 なお、これまで同様、Appleが最も重視しているのはアプリ開発者ではなく、一般のユーザーだ。

 突然の課金料改定が起きた場合には、必ずユーザーに通知が行く仕組みを設け、万が一、ユーザーが新料金を受け入れも、拒みもしない(つまり無反応)な場合には、定額課金がそこで停止するようにサービスを設計するという。

 ちなみにAppleは、一部の開発者に対しては、既にこの新しいサブスクリプションのルールについてブリーフィング済みのようで、新ルールを聞いた開発者らは一様に喜んでいたとシラー氏は語る。

 「ゲームアプリにしても、プロ用のツールにしても、企業用のアプリにしても、メンテナンスを続け、より良い機能を開発し続けるために、多くの開発者が持続的な収入を必要としている。サブスクリプションモデルの提供は、そうした開発者たちにとって福音となることだろう」。

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