街中ロストガジェット:「消えた公衆電話」と「残ったもの」

» 2016年07月12日 06時00分 公開
[赤祖父ITmedia]

 毎回、街の絶滅危惧種と思われるガジェット等を紹介してきた本連載だが、今回は少し視点を変え、「既に無くなったモノの跡地」を観察してみる。

連載「街中ロストガジェット」とは

街を歩いていると、時代に取り残されたような、人々から忘れ去られたようなガジェットを見かけることがある。そんな「街中ロストガジェット」のある風景を訪ねていく。

ライター:赤祖父

1980年生まれ。情報サイト「ハイエナズクラブ」編集等をはじめ趣味でネットにいろいろ書いている。本職はシステムエンジニア。「迷ったら買ってみる」が信条の新しもの好きだが、街歩きやレトロなものも好きで、その集大成が本連載のテーマとなっている。


過去の“当たり前”が変わるとき

 西新宿の地下道を歩いていたところ、このような無機質な空間の一角に、くぼみに不自然な台と、何かを塞いだパネルがあった。何の役にも立たない無用な設備、いわゆる「トマソン」とでも言うべきものだ。もともとは何だったのだろうと不思議に感じて観察していると、この対面の壁に答えがあった。

 向かいと同様の台と、公衆電話。これを見て、もともと左右両側に公衆電話があったのだろう、と理解できた。こちら側の公衆電話はなぜか台の上ではなく壁に付けるかたちで残存しており、これはこれで不自然に感じる光景だが、先の写真の塞いだパネルの向こうには電話線や電源を引いていたのであろうことは推測できよう。

 公衆電話の跡地はなぜ残り続けるのか。これはあくまで推測だが、つい20年ほど前までは公共施設やビルなどの建物や空間を設計する際に、トイレや階段があるのと同様、公衆電話の設置スペースも最初から「当たり前に」あることを前提として考えられていたのではないだろうか。

 ところがそれ以降、携帯電話の急速な普及により相対的に公衆電話のニーズは減少の一途をたどっていったのは想像に難くない。維持費等を考えると撤去というのが自然な流れで、簡単にまとめると当時の感覚として「要らなくなるとは思ってもみなかった」という事情があったのかもしれない。

残された空間は

 駅の一角にあった公衆電話スペース。昔は何台か並んでいたのだろうが、今は1台のみひっそりと残されている。このスペースは最初から公衆電話を設置することを前提として作られているため、特に別の利用法も無いままの空間がなんとなく寂しい雰囲気を醸し出している。

 こちらは老舗デパート内の一角にあった公衆電話スペース。もともとは各ブースに電話が設置されていたのだろうが、ひとつおきに間引きしてあった。メモパッドだけは残されているのが老舗デパートらしい心遣いなのかもしれない。

 こちらのビルの一角にあった台は明らかに公衆電話が設置されていたと見えるが、今は無用の長物と化している。後付けの棚のようなので撤去も可能だろうが、撤去するほど邪魔ということでもないために放置され続けているのかもしれない。

 ここにもおそらく公衆電話が並んでいたのだろうが、今は完全に撤去され「充電スポット」として生まれ変わっていた。連載第1回のインターネット端末と同様、公衆電話スペースの居抜き物件である。

 こちらは色使い、曲線、配置すべてがレトロでおしゃれなデザインの公衆電話の跡地だ。この空間だけでも美しいが、是非別の用途で再利用しないともったいないとも思わせられる。

 新宿西口の地下道にある公衆電話。ここにはかつて大量の公衆電話が並んでいたが、今はそのスペースの大半がコインロッカーに置き換わっていた。外国人観光客の増加に伴いコインロッカーの需要が高まったのを受けて、設置場所としてちょうどよい“空き地”だったのだろう。

“跡地”が記憶する風景

 このように公衆電話の跡地は現在も増え続けている。跡地として今もそのまま残され続けているだけの例も多数あるが、一方ではコインロッカーに置き換わったりフリー充電スポットになっているように、「時代のニーズを反映する空間」であるとも考えられる。

 公衆電話がそうであったように、現在当たり前のように街中で見かけるあれやこれやも、気付けば無用の長物と化し、ほんの数年後には姿を消しているのかもしれない。そのとき残される跡地には、過去の風景が記憶されているだろうか。


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