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» 2016年09月02日 06時00分 UPDATE

第7世代Coreは出たものの……:スマホで覇権を握れなかったIntelの生きる道 (1/3)

1万2000人もの人員削減、次期Atomプロセッサの中止、ARMとの提携など、戦略の岐路に立つIntel。同社は今後どこへ向かおうとしているのか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 Intelが戦略の岐路に立っている。PC市場が横ばいまたは微減傾向に陥る中、ここ数年ほどくすぶり続けていた動きが、最近の相次ぐ同社の発表で明らかになってきた。

 最近のIntelは、CESなど対外向けイベントで基調講演を行う際に「IoT」「5G」「データセンター」といったキーワードを掲げ、PCの話題にあまり触れない傾向があったが、8月中旬に米国で開催した開発者向けイベント「Intel Developer Forum(IDF) 2016」ではそれがより目立った。

 2時間に及ぶIDFの基調講演で、PC向けプロセッサ新製品である開発コード名「Kaby Lake(ケイビーレイク)」こと「第7世代Core」に触れたのはわずか10数分程度で、ほとんどPCの世界にフォーカスを当てることがなかったのだ。

 もちろん、8月30日(米国時間)のKaby Lake正式発表を前にしてのイベントということもあり、多くを語れなかった事情はあるだろう。しかし、2016年は迷えるIntelが次に向けて大きく舵を切り始めた記念すべき年になるのかもしれない。

IDF 2016(1) IDF 2016の基調講演より。XeonにAlteraのFPGA「Stratix 10」を組み込んだサーバ向け製品を手に、「Intel+Altera」の合併成果を訴える米Intelのブライアン・クルザニッチCEO。PC向け新型プロセッサであるKaby Lakeこと第7世代Coreの紹介に割かれた時間はわずかだった
Kaby Lake 8月30日(米国時間)に発表された第7世代Coreは、第6世代Core(Skylake)と同じ14nmプロセスルールだが、動作周波数が向上し、4K動画のデコード/エンコードなどをサポートする。現状でTDP(熱設計電力)が4.5W〜15Wのタブレット/ノートPC向けモデルが発表され、搭載製品は9月から市場投入される見込みだ

PCプロセッサでは支配的な地位を得ているが……

 「Intelと言えば、PCプロセッサの会社」というのは多くの共通認識だと思うが、同社の利益の源泉は、PCというよりはむしろサーバやデータセンター事業にある。

 Intelが7月20日に発表した2016年度第2四半期(4〜6月期)決算の事業部別売上を見ると、PCプロセッサを扱うClient Computing Group(CCG)とサーバ向けプロセッサや関連製品を扱うData Center Group(DCG)の間では売上で2倍近い差があるにもかかわらず、営業利益はほぼ同水準となっている。つまりサーバ向け製品の方が利益率が高く、同社の屋台骨を支える2本の柱の1本であることが分かる。

IDF 2016(2) 2016年度第2四半期(4〜6月期)決算の事業部別売上の抜粋
IDF 2016(3) 2016年度第2四半期(4〜6月期)決算のセグメントごとの売上の内訳

 かつてPCとサーバ業界でAdvanced Micro Devices(AMD)が好調だったのも、サーバ向けの「Opteron」プロセッサ事業に支えられてのものだ。現在このポジションはIntelの「Xeon」に取って代わられており、Xeonが大きな利益を生んでいる。

 とはいえ、PC事業もまた依然として同社を支える柱の1つには違いない。個々の単価や利益はサーバに及ばずとも、Gartnerなどの調査会社の資料によれば、世界の年間PC出荷台数は8000万台以上で非常に大きな市場だ。

 一方、PCは販売台数ベースで今後の成長余地があまり見込めない市場でもあり、Intelは次を見据えた決断に迫られている。

 Intelはスマートフォンやタブレットなど「スマートデバイス」市場に活路を見いだし、「Atom」プロセッサをベースにしたSoC(System on a chip)を市場投入して、Qualcommなどのライバル企業に対抗すべく活動を続けていた。

 しかし利益を度外視したプロセッサのばらまきによる市場拡大戦略は「安価なWindowsタブレット」という興味深い市場を作り出したものの、本丸であるスマートフォンやその周辺市場に侵食することはかなわず、自らの体力を削るだけの結果となった。

 2016年第1四半期(1〜3月期)決算発表直後の4月中旬に発表された1万2000人もの大規模な人員削減や、次期Atomプロセッサ「Broxton」を含む将来製品のキャンセルは、こうした失敗を受けたものだ。

製品全体を高価格帯へシフト

 苦戦するIntelは、製品全体を高価格帯へシフトするという選択をした。以前にも触れたが、同社はエントリークラスの製品の価格レンジを従来の200〜300ドル程度から400〜500ドル程度まで引き上げようとしている。

 PC市場が縮小へと向かう中、減りゆく出荷台数をカバーすべく平均販売価格(Average Selling Price:ASP)、つまり製品単価を引き上げることで対応しようというのは自然な流れだ。これは一定の効果がみられ、例えば、2015年第2四半期と翌2016年第2四半期との比較で販売個数は15%減少しているのに対し、ASPは13%も上昇している。

 ただ、Atom計画のキャンセルによるPCの高価格帯へのシフトも、PC市場縮小の流れにおいては対症療法にすぎない。PC市場が今後数年程度で半減したり消滅したりすることは考えにくいが、今後5〜10年を見据えれば、2本柱の1本としてIntelを支えるには不十分な存在になるだろう。

 スマートデバイス市場への進出の道も閉ざされた今、世界最大の半導体企業としてIntelの研究開発費や製造工場を支える新たな柱を探さなければならない。その葛藤がIDF 2016ではよく現れていた。

 現在Intelは、将来的なPC市場の縮小に向けて、大きく分けて3つの方策を採っていると考える。1つ目は「新たな成長分野を見つける」、2つ目は「既存の分野を徹底的に伸ばす」、最後の3つ目は「当面の減少分をなんとかフォローする」だ。

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