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» 2017年01月04日 07時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:2017年のPCが向かう先 エコシステムからの排除にどう対応するのか (1/2)

Microsoftが推進する2in1は思ったほど伸びていない一方で、WindowsにもMacにも新しい入力デバイスの提案がなされた2016年。モバイルファーストのトレンドにより、エコシステムからのPC排除が進む中、2017年のPCはどこへ向かおうとしているのか。

[本田雅一,ITmedia]

 ITmedia PC USERで「その年におけるPC動向を占うコラム」を始め、今回で6回目だ。1年前に書いた前回のコラムは、ほぼ半分を外してしまった。他誌に年初コラムを書いていたころも含め、ここまで外したのは初めてかもしれない。

 1年前のコラムでは、2in1がより進化・深化し、ノートPCに変わる新たな軸としてPC市場の成長を支えるかもしれないと書いた。しかし、思ったほど2in1市場は伸びていないようだ。「興味深い製品」と「道具として優れた製品」の間にはギャップがある。まだ2in1の成熟には時間がかかるのかもしれない。

2in1 Microsoftが自ら手掛ける2in1の代表的なモデル「Surface Pro 4」。PCとタブレットを融合した2in1は徐々に使い勝手がよくなってきているものの、一般ユーザーに浸透するほどの成熟にはまだ時間がかかるか

 一方で「Windows 10の登場がVAIO S11のような原点回帰のモバイルPCを生み出す可能性もある」とした予想は、結果的にではあるが、あまり外していない。斬新な製品を狙って意欲的な2in1を開発するメーカーもあるが、いずれもあまり定着していない状況だ。

 翻って言うならば、ディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス、ストレージ容量、それに各種性能といった従来の評価点以外、新たな切り口は見つかっていないということなのかもしれない。

 筆者が上記のように書いた意図は、MicrosoftがWindows 10で(以前のような)キーボードとポインティングデバイスだけで使うデスクトップ型GUIを再び重視し始めたことで、クラムシェル型ノートPCが見直されるのではないか、と考えたから。また、PCにLTEを内蔵する動きが広がれば、モバイルPCの使われ方にも変化が生まれるかもしれないと考えたからだ。

 しかし、大多数のPCユーザーがスマートフォンを持っていることを考えると、PCへのLTE内蔵を望む声はまだ大きくないのかもしれない。内蔵モデルがもっと増えていくには、ハードウェアの進歩ではなく、SIMのソフトウェア化とそれに伴う通信プランの見直しといった環境の変化が必要になると思う。

PCの基本形は変えずに、拡張していく方向へ

 さて、こうした2016年の動きを見て感じたのは、「やはりPCの形なんて変わる必要はないんじゃないか?」という、この数年は言いたくてもなかなか口に出しにくかった本音である。PCの形はそのままに、高性能になっていってくれれば、それで構わないという考えは思考停止なのか、それとも妥当な結論なのか。

 VR(仮想現実)ディスプレイやVRコントローラーが今よりポピュラーになったとしても、今のPCの形が変わる必然性はなく、2in1がメインストリームになることもない。ならば、PCは今のままでもいいじゃないか……というわけだ。

 結局のところ、PC業界はかつてXeroxのSTARが生み出したGUIによるユーザーインタフェースと、それに伴って発明されたインタフェースデバイスの枠組みからいまだに抜け出せていない。

 マウスが初めて登場したころのことだ。「こんな陳腐なデバイスはそのうちなくなり、視線やジェスチャーなど、もっと未来的なデバイスで操作をするようになる」と言われたことがあるが、いまだにマウス(とその代替であるトラックパッドなど)は使われ続けている。

 しかし、そう考えながらあらためて2016年のPCトレンドを見直してみると、「Surface」シリーズでPCの進化系を探ってきたMicrosoftも「PCの基本形は変えない方がよい」と考えるに至ったのかもしれない(Appleは以前から、タブレットとPCの融合といったアイデアに対して保守的だった)。

 すなわち、PCの基本形を変えないまま、何か新しい切り口のユーザーインタフェースを作ろうとしている。

 例えば、Appleが新たに提案した「Touch Bar」は、それを搭載するモデルでも通常のファンクションキーモデルでも、どちらでも「MacBook Pro」として問題なく機能する。パソコンとしての使い勝手は変えず、そこにディスプレイ+タッチパネルによるプラスαの操作をもたらした。

Touch Bar フルモデルチェンジした「MacBook Pro」では、キーボードで1番上の列が省かれ、ここに高精細なOLED(有機EL)ディスプレイと静電型マルチタッチパネルを組み合わせた「Touch Bar」が追加された。Touch Barはアプリケーションによって表示が切り替わって使い方も変化する。右端には、電源ボタンと指紋認証センサーの「Touch ID」も統合されている(Touch Barなしの下位モデルもあり)

 Microsoftの「Surface Dial」も同様に、Windows PCに対して補助的に作用するが、これまでのPCにはない切り口のユーザーインタフェースを生み出すという点でTouch Barと目指している方向は同じだ。

Surface Dial Microsoftが投入したBluetooth接続の全く新しいダイヤル型入力デバイス「Surface Dial」。液晶一体型デスクトップPC「Surface Studio」などの画面上に置くと、利用しているアプリケーションの機能に合わせてダイヤル周囲に円形のメニューが表示され、ダイヤルを回すことでさまざまな操作が行える。ダイヤルを回しながらペンで描くことで、ペン先の太さを徐々に変えながら線を引くといったことも可能だ

 いずれもディスプレイ表示とアナログ的な入力手段を組み合わせており、Touch Bar、Surface Dialともに基本ソフト(OS)側に「仕込み」を入れておくことで実現しているなど共通点は多い。

 基本ソフトを開発しているプラットフォーマーでなければ広めることは難しいアプローチを用いて、PCの形を変えるのではなく、利用者の使い勝手を変えないまま体験の幅をどう拡張するかを模索しているわけだ。

 30年以上もユーザーインタフェースの基本スタイルが変わらないのだから、それを根本的に変えるのではなく、幅を広げる、拡張するといったやり方は地味だが効果的と言えるだろう。

 上記二つの要素が、今後、手放せないものになるかどうかは現時点では何とも言えないが、2017年はこうした動きを見守る年になるだろうか。

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