ITmedia PC USERで「その年におけるPC動向を占うコラム」を始め、今回で5回目となる。年刊連載といったところだろうか。
まずは前回、2015年の年頭コラムを振り返ってから本題に入ることにしよう。2015年の主なテーマとしたのは、Intelの新プラットフォーム「Skylake(第6世代Core)」が、PC業界にとって極めて重要なアップデートとなり、業界トレンドをリードするという内容だった。
実際、2015年を振り返るとSkylakeの投入によって、とりわけモバイル系のPCは大きな進化を遂げた。電力効率の大幅な向上と、内蔵GPUのパフォーマンスアップは、ノートPCやタブレットに大きな恩恵をもたらすからだ。もちろん電力効率の向上はデスクトップPCでも、サーバでも重要なポイントとなる。
ただし、同時に立ち上がると予想したワイヤレスデータ通信技術の「WiGig」とワイヤレス給電技術の「Rezence」に関しては、業界全体としての動きが鈍かった。いずれも本格的な動きが見られるのは2016年以降になりそうだ。
WiGigは60GHzという高い周波数帯を利用し、最大7Gbps(理論値)の高速なワイヤレスデータ通信を可能にする技術。DellやHPが、ディスプレイ出力やUSB 3.0、有線LANをまとめてワイヤレス化できるビジネスPC用のドッキングステーションを製品化しているが、まだ存在感は薄い。WiGigはWi-Fi Allianceが2016年初頭に認定プログラム(WiGig CERTIFIED)を開始する予定だ。
RezenceはノートPCの無線充電を実現する磁気共鳴方式のワイヤレス給電技術。同規格を推進する業界団体のAlliance for Wireless Power(A4WP)が、電磁誘導型方式のワイヤレス給電技術(Powermat)を推す業界団体Power Matters Alliance(PMA)と合併し、2015年11月に新しい標準化団体「AirFuel Alliance」を発足した状況だ。ワイヤレス給電技術は、Wireless Power Consortium(WPC)の「Qi」がスマートフォンを中心に普及しつつあるが、A4WPとPMAの合併が少なからず影響を与えるだろう。
もう1つの大きな予測として、スマートフォンやタブレットが一定以上のユーザー層を確保している中で、PCという分野では、より高パフォーマンスな製品が好まれるようになるというものがあった。メーカーも、そうしたニーズを察知してプレミアムプラスのノートPCを増やしてくると考えたのだ。
確かに、日本ではVAIOによる新しい「VAIO Z」がそのような方向へ進んだものの、グローバルの視点ではプレミアムプラスのノートPCが多数生まれたとは言えない年だった。相変わらず、Appleの「MacBook Pro」がそのニーズを引き受けている。
グローバルではそのMacBook Proに対抗すべく、Microsoftが米国で10月に「Surface Book」を発売したが、サードパーティーがプレミアムクラスのノートPC(2in1)をなかなか出してこないからこそ、自身がリスクテイクして発売した……すなわち、まだその動きは出始めたばかりで、市場では定着していないとも言える。
ということで、前回は2015年を占うにしては少々気が早い内容の年始コラムだったのだが、懲りずに2016年も続けていきたい。ただし、Intelのプラットフォーム戦略を元にしたロジックではなく、テクノロジー業界のメガトレンドをウォッチしながらの話として進める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.