AppleのM3チップを搭載した新型MacBook Airは、2023年10月に同社が初めてM3チップファミリーが発表した時から、登場が待ち望まれていた製品だ。
これまで新世代のApple Siliconが開発される度に、売れ筋のMacBook Airにも新チップを搭載してきたAppleだが、M3チップの発表から半年近くが経過したこのタイミングまで採用しなかったことに驚いた読者もいたことだろう。
前世代モデルのM2 MacBook Airからのメカニカルな設計に変更はなく、カラーバリエーションも同じだ。13インチ(13.6型)、15インチ(15.3型)という画面サイズも共通だ。
なお、今回のタイミングでM1チップを搭載したMacBook Airは製品ラインアップから姿を消した。代わりにM2 MacBook Airの13インチモデルがその位置に据えられている。M3チップ搭載モデルとは1万6000円(税込み、以下同様)の価格差だ。また入門用モデルはこれまで8GBメモリのバリエーションしかなかったが、今回から16GBも選べるようになった。新しいMacのノートPCを検討している人にとっては、この価格差の捉え方も気になるところだ。
このコラムでは、M2 MacBook AirやM3チップを搭載したiMacとのパフォーマンスの違いを考慮しながら、実際の使用感や購入時の参考となる情報についてレポートしていきたい。
なお、筆者がテストしたのは15インチのM3 MacBook Airに16GBのメモリと512GBのSSDを搭載したモデル(25万8800円)である。
結論から先に書いておこう。M3 MacBook AirはApple自身が訴求しているように、極めて高いエネルギー効率を示す高性能なM3チップの搭載が最も大きなトピックだ。
しかし、いくつかの細かな改良を考慮すると、実はMacBook Airシリーズの後継機種として優れているだけではなく、Intelプロセッサを搭載したさまざまなMacからの移行を促すハイコストパフォーマンスモデルでもある。
Intelプロセッサを搭載するモデルからの買い替えであれば、MacBook Airはもちろんだが、クアッドコアのIntelプロセッサを採用する13インチMacBook Proからの買い替えでも大きな満足を得られる。
それどころか、今回評価した15インチのM3 MacBook Airであれば、SDメモリーカードスロットやHDMI出力、Thunderboltポートといった入力端子の不足はあるが、画面サイズとパフォーマンスと言う点ではIntelプロセッサ搭載時代の16インチMacBook Proに匹敵する。GPUのパフォーマンスもAMD Radeon Pro 5500M内蔵モデルに近い。
その上で本体の発熱もほとんど気にならず、軽量でバッテリー駆動時間も長い。内蔵するカメラも画質が大幅に向上する。
さらに、Intel時代のiMacを使っていたユーザーにとっても魅力がある。本体のディスプレイを閉じた状態に限られるとはいえ、2枚の外部ディスプレイを接続できるようになった。
M2 MacBook Airにディスプレイを接続し、キーボードとトラックパッドを用意すれば、インテルプロセッサ時代の27インチiMacに匹敵、あるいはそれを超える作業環境を得られる。
一方で、M2 MacBook Airを購入した人は悲嘆する必要は無い。確かにM3 MacBook Airは特定の条件下で3Dグラフィックスのハードウェアアクセラレーターが効くことで、M2 MacBook Airよりもはるかに高い性能を発揮する。
しかし、このアクセラレーターが効く局面と言うのは、3Dグラフィックスを生成する際のメッシュシーダーとレイトレーシングを用いる場合のパフォーマンスである。言い換えれば、3Dグラフィックスのデザインを行ったり、ゲームを重視していなかったりするのであれば、さほど大きな違いは生まれない。
例えば、Adobe LightroomでEOS RのRAWファイル現像を100枚行った際の処理時間は、CPUのパフォーマンスに若干の優位性があるM3 MacBook Airが、M2 MacBook Airと比べて2秒ほど早くなるだけだ。
動画編集ソフト「Final Cut Pro」で15本の4K映像を組み合わせた動画をテロップやエフェクト付きで書き出すプロジェクトでも、中間ファイルの生成速度、編集後のマスターを書き出す速度、いずれもM3 MacBook AirとM2 MacBook Airの間で顕著な違いはなかった。
これはMedia Engineのパフォーマンスがほぼ同等だからだ。M3 MacBook AirはAV1のデコードをハードウェアで行うため、一部の動画ストリーミングサービスを再生する際の電力効率が高くなり、バッテリー寿命がさらに伸びる。しかし言い換えるならば、それ以外のパフォーマンスは大きくは変わらない。
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