ところで今回、AppleのWebページを見ていると、新しいMacBook Airが“AI PC”の要素を備えているという訴求が強調されている。
このタイミングでこうした訴求を行っているのは、IntelやWindows PCにおいてAI PCと言うコンセプトが新しいものであると宣伝されているからだろう。しかし、MacはApple Siliconを生み出してから、ずっと“AI PC”のままだ。
AppleのAI処理チップの歴史は決して短くはない。iPhoneで培ってきたNeural Engineは、iPhone 11に搭載した「A13 Bionic」以降も強化を続けており、OSレベルだけではなく、さまざまなアプリケーションから利用されている。
Appleとしては、各社がアピールするAI PCというコンセプトは「Windows PCのキャンペーンが始まる前から、既にMacはAI PCですよ」と言いたいのかもしれない。
実際にmacOSには、さまざまなAIの処理アプローチが組み込まれている。
実はこの原稿も、筆者は頸椎にケガを負っている関係でほとんどの文字入力作業を音声入力で行っている。iPhoneおよびMacでの音声入力は、数年前にNeural Engineを用いた新世代にアップデートされており、かなり入力精度が高まっている。その恩恵はM1チップ以降を搭載するMacで受けられる。もちろん、M3チップ搭載モデルなら、最も高性能なNeural Engineで、最も高い精度の処理結果が得られる。
また、言うまでもないが、生成AIの多くはオンラインで提供されており、MicrosoftのCopilotを用いたプレゼンテーションの自動生成といった機能は、macOSでもオンライン上からWindowsと同じように利用できる。
そして、ChatGPTに代表される大規模言語モデルにしても、オンラインで自由にMacから利用できる。こうして書いている原稿も、エッジ処理によって行われるAIを活用した音声入力に加え、オンラインでのAI言語処理による文章の整理を活用して作られたものだ。
つまり、現在のAIを活用した作業効率の向上という意味では、WindowsとMacで大きな違いはなく、AIの活用に関しては、むしろMacの方が進んでいる実感がある。
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