Apple Vision Proは「極めて未来的なiPad」――あえて渡米してでも買うべきだと感じたワケを改めて語ろう本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2024年02月05日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 2月2日、米国において「Apple Vision Pro」が発売された。日本を含む他国では2024年後半(7月以降)から順次発売される予定で、“今”手に入れたいなら米国で入手するしかない。

 米国以外では発売が先ということもあり、現時点ではメニュー表示などは英語のみ、文字入力システムも英語のみ、修理は米国のみで受付と、日本において(あるいは日本人が)使う上で多くの制約を抱えていることは事実だ。

 Appleの製品やソフトウェアはスケジューリング(ロードマップ)が比較的安定しており、見通しが立てやすい面もある。

 ソフトウェアに着目すると、6月に開催される開発者向けイベント「WWDC(World Wide Developers Conference)」ではOSの新機能やUI(ユーザーインタフェース)の変更点が予告され、9〜10月にかけて順次OSのバージョンアップが行われる。2024年からは、この流れにApple Vision Proに採用される「visionOS」も加わることになるだろう。

 恐らく、このタイミングで米国以外での販売情報も明らかとなるだろう。生産のリードタイムなどを考慮するなら、米国外での発売のタイミングで機構設計に大きな変更が起きる可能性はほとんどない。ただし、グローバル(米国外)での販売に向けて、半導体を含めてハードウェア面でのマイナーチェンジ(一部改良)は行われる可能性がある。

 合理的に考えると、日本のユーザーが“わざわざ”米国まで出向いてApple Vision Proを買いに行く理由はない。しかし、筆者はイニシャルリリースとなる北米版を買うべく既に予約を済ませ、この記事を書きながら渡米の準備を進めている。この記事が載る頃には、無事入手できている……と信じたい。

 このこと自体は、2023年6月のWWDC 2023で先行体験をした時から決心していたことだ。本稿では「なぜあえて初物を買うのか?」という理由を話をしていきたい。

米国 米国ではApple Vision Proが発売された

Apple Vision Proで「得られるもの」は何か?

 Apple Vision Proが起動すると、目の前には自分がいつも過ごしている部屋の風景が広がる。住み慣れた空間には、iPhoneやiPad、Macで見慣れたアイコンが浮遊する様子が見える。

 アイコンに近づいてみると、それは単なるシンボルではなく、きちんと体積をもつ工芸品のように作られているかのように精巧だ。そして見つめるだけで、それらはさりげなく反応してくれる。

 Apple製品に慣れている人ならば、何も教えられなくとも、見つめるだけで反応するアイコンやシンボルを頼りにアプリを起動し、部屋の中に自在に、好きな大きさで情報を並べられる。それぞれの情報は、肉眼で眺めているかのように精細で細かなテキスト情報にまで目を通す際にも不自由は感じない。

アイコン浮かんでる iPhoneやiPad、Macで見慣れたアイコンが住み慣れた空間に広がるのだが、そのいずれも精巧に作られている

 iPhoneやiPadのタッチパネルで行う操作の大多数は、違和感なく視線での操作に置き換えられている。クリック操作なら膝の上で親指と人差し指を軽くタップさせればOKで、そのままドラッグアンドドロップの操作も可能だ。

 「レガシーなPC」の操作がしたい? もしもMacを持っているなら、Apple Vision Proと同じApple IDでログインし、そのMacを開けば、目の前には巨大なMacの画面が広がって、手元のキーボードやトラックパッドでそのままできる。空間に配置されたメモやウェブの情報を頼りに、Macでメール処理や文書をまとめたりの作業をするのもいいだろう。

タップやドラッグ タップ操作やドラッグアンドドロップ操作は、膝の上で指を動かすことで行える

 いつも過ごしている部屋の空間に、全ての視覚情報が描かれ、全ての情報に“体積”がある――2D表示用に見えるiPadアプリやMacの画面も、近づいてよくみると、薄い板としてそこに存在しているかのようだ。

 そんな「板(スクリーンパネル)」の上に描かれる3D映像は、板から飛び出る形で描かれるが、異なる点もある。一般的な視差3D(3DS)よりも奥行きの表現が自然で、スクリーンの枠から大きく逸脱するような立体表現も、違和感なく表現される。

スクリーンパネル スクリーンパネルの表現は、特に奥行き方面の自然さに驚きを感じる

 最新のレーザー4Kプロジェクターで見る大画面の映画と比べても、Apple Vision Proで見た方が勝っている部分もある。両眼に備えられたマイクロOLED(有機EL)パネルは、漆黒の黒からの階調を的確に描き、ハイコントラストなシーンでのHDR表現も的確だ。

 自宅で映画を楽しむため、ホームプロジェクターに投資をしてきた人は、Apple Vision Proで描かれる映像作品の画質に少なからず感銘を受けるに違いない。それは銀幕に反射する映像とは風合いが異なるが、体験として素晴らしいことに異論はないはずだ。

映画 Apple Vision Proは両眼にマイクロOLEDパネルを備える。このパネルから得られる映像体験は、それでそれで素晴らしい

 Apple Vision Proネイティブのアプリなら、表示枠にとらわれず空間に浮かび上がる物体として表示させることも可能だ。机の真上で回る地球を眺めながら、文字通り“グローバル”の天候について観察する体験は、まるで何かのアトラクションのように感じるに違いない。

 使用中、何かを知らせるアラートは、その知らせる情報の元になっている表示の方から自然に聞こえ、部屋の形までを反映した反響、残響で自然に耳へと届くから、すぐにその情報を見つけることができる。

 このような体験を、いち早く“自分の目と耳と体で”してみたいのだ。

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