Apple Vision Proを買うべく、米ワシントン州シアトルに飛んでから、早くも1カ月が経過した。発売から1カ月経過したこのデバイスは、今でもさまざまな人に“新しい驚き”を与え続けている。
つい先日、とあるオープンオフィスでXR関連政策チームがApple Vision Proの体験会を開催した。そこに集まったTV広告や各種メディアの関係者の多くはApple Vison Pro“初体験”だったが、体験者が驚くのは当然として、体験者が驚くのを見て周囲の人たちがさらに驚くという光景が印象的だった。このようなリアクションの大きさは、近年のテクノロジー製品にはみられなかったものだ。
一方で、この1カ月間、さまざまなメディアやSNSでApple Vision Proに対して多くの意見が集まった。それは必ずしも賞賛の声ばかりではない。
Apple Vision Proの興味深い所は、テクノロジーに対して敏感な人はもちろんだが、むしろ新しいテクノロジーに積極的に“触れない”層の人たちの方が新鮮な驚きを感じている点にある。先入観のなさが、むしろ興奮を高めている感もある。
一方で、テクノロジーに敏感な人の中でも、特にハードウェアについて一定以上の知識を持っている人は少し冷めた見方をする傾向にある。Apple Vision Proがいかに“高コスト”であるか、言い換えれば普及に時間の掛かる商品であることを痛感しているからだ。
ある日、日本の大手ハードウェアメーカーを訪れた際、エンジニアや商品企画担当者に「Apple Vison Proを製品(プロダクト)としてどう思うか?」と聞いてみた。すると異口同音に「最低でも100万円以上の価格をつけなければ利益を確保できない」とコメントした。メーカー目線に立つと、Appleの3499ドル(最新のレートで約52万4500円)という値付けは“安すぎる”のだ(消費者目線では高すぎるのは間違いないが)。
「(従来のVR/ARヘッドセットにありがちな)問題をあそこまでつぶすには、徹底してコストを掛ける必要がある。そんな製品を(採算)度外視して出すということは、初めからライバルのやる気をなくすのが目的じゃないか?」なんていうジョークまで飛び出した。
要するに、Apple Vision Proは3〜4年、あるいはそれ以上先を見据えて、未来の開発者たちの興味を引きつけるるための“実験機”なのだ。
しかしだからこそ、この製品にワクワクする人が絶えない。そして一方で、普及までに時間がかかることも意味している。このジャンルを取り巻くビジネスを検討している人たちから見ると、まだまだ先の見えないジャンル(の商品)として映っているのが現状だ。
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