2016年にPCが向かう先は? 高性能な2in1か、原点回帰のノートか:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2016年01月02日 06時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

Appleが模索するパーソナルコンピュータのスイートスポット

 2015年はさまざまなメーカーが新製品を発売したが、その中で最も驚いたのがAppleの「iPad Pro」だ。サイズの大きいiPadが登場することは以前からウワサとしてあったものの、その位置付けがここまで「PC系」を意識したものになるとは思わなかったからだ。

 既に使用している方はご存じの通り、iPad Proは高性能かつ画面の大きなiPadである。筆圧検知対応ペンの「Apple Pencil」が使えるという特徴もあるが、いずれは他のiPadにも対応すると思うので、(画面サイズ以外の)iPad Proのアイデンティティーは何か? というと、高性能なことと、キーボード機能を持つ画面カバー「Smart Keyboard」をサポートするようになったことの2点に集約される。

 iPad Proについて語り進めるつもりはないが、Appleはこの製品を発表するイベントやその後のハンズオン、プレス向けの説明会などでも、iPad Proがコンテンツプレーヤー的な位置付けではなく、高い生産性を求められる仕事やクリエイティブの道具として使えるものなのだ、という視点を強調していた。

 Apple Pencilを同時発表し、iPad Proだけでサポートしたのも、(事実関係はApple内部でなければ分からないが)そういった面を強調する狙いがあるのかな? というのが、今振り返っての印象だ。

 このAppleによる新しいトライアルが成功するかどうかは、iPad Proを意識したアプリがどれだけ生まれるかに依存すると思うが、今のところApple Pencilを活用できる一部のアプリ以外で、iPad Proやキーボードを使った生産性にコミットしたアプリは見られない。まだ道半ばといったところだろうか。

iPad Pro 12.9型の大画面ディスプレイを採用した「iPad Pro」。写真は画面保護カバー兼キーボードの「Smart Keyboard」を装着した様子

 一方、Appleは2015年の春にコンセプトを一新した「新しいMacBook」も発売している。タブレット向けプロセッサを用いつつ、ディスプレイ、キーボード、トラックパッドというノートPCの伝統的な3大ユーザーインタフェース要素に最新技術を投入した製品だった。

 加えてUSB Type-C(AppleはUSB-Cと呼ぶ)に電源コネクタと外部接続の有線インタフェースを集約するなど、かなり斬新的な設計が特徴である。バッテリー駆動時間やレジューム速度も速く、MacにiPadの俊敏性を与えたような製品だ。

新しいMacBook Core Mプロセッサ、新設計のキーボードとトラックパッドを搭載し、主要インタフェースをUSB-Cに集約した「新しいMacBook」

 なぜこの2製品の話をするのかは、iPhoneの登場以来、業界のイノベーションを先導してきたAppleが、iPhone、iPadそれぞれで創出してきた新市場に成長余力の限界を見ているからこそ、これらを開発したのでは? と思うからだ。

 iPad ProはiPadのアプリ領域拡大、新しいMacBookはノートPCの利用シーン拡大という視点で商品が企画されている(余談だがMacBookのコンセプトを完結させるなら、LTEモデム内蔵モデルが欲しいところだ)。新ジャンルの創出よりも、各商品ジャンルの領域拡大を狙ったものだ。

 PCの高い生産性と、タブレットの手軽さ、身軽さの間に、「パーソナルコンピュータのスイートスポット」があるとAppleは考えているのではないだろうか。

スイートスポットにより近い位置にあるのはWindows搭載機か

 しかし、タブレットとPCの間、あるいは両方の長所を備えた端末にスイートスポットとも言えるちょうどいい製品の可能性があるとするなら、そこへの最短距離にあるのはMacやiPadではなく、Windows搭載機だ。しばらくiPad Proを使ってみているが、タブレットとしての利便性やディスプレイ表示の美しさなどはあるが、仕事道具として使う際の自由度はPCに及ばない。

 AppleのOS XとiOSは、それぞれ核となる部分の技術は同じだが、アプリエコシステムを含むプラットフォームの形は全く異なる。iPhone用に開発された基本ソフトを起点に、タブレットやテレビなどに用途を広げたものだ。

 これに対してWindows 10は、PC、タブレット、スマートフォンを、1つの基本ソフトでカバーしており、中でもPCとタブレットの間にはほとんど垣根がない。これまでは消費電力などの関係で、PCのパワフルさとタブレットの軽快さを両立するのは難しかったが、2015年にSkylakeで開発された製品を見ると、2in1の形態でもパフォーマンスに対するエクスキューズが不要になりつつある。

Surface Pro 4 Microsoftの12.3型タブレットPC「Surface Pro 4」。Windows PCベースの2in1として完成度が高い

 2016年はIntelがCoreプロセッサのリフレッシュを行い、Atomプロセッサに新しい世代の製品を投入する見込みと考えれば、このトレンドはさらに進んで行くと思う。当初はSurface Bookのように高価なプレミアム製品から始まっても、年内にはミドルクラスの製品にまで降りてくるのではないだろうか。

 Windowsには、タブレット時の使いやすいアプリがまだ少ないという大きな弱点はある。iOS用アプリをWindowsタブレットで動かす施策「Windows Bridge」がうまく機能し、魅力的なハードウェアが登場すればアプリも増えるという意見もあるだろうが、一方でWindows向けにはWebブラウザで各種サービスに十分対応できている現状もある。

 この辺り、まだ課題は残りそうだが、2015年はよりパワフルで使いやすい新しい世代の2in1ソリューションが提案されると予想したい。

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