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» 2017年02月08日 06時00分 UPDATE

他店より高ければ後から自動でお金を取り返すアプリ 米国で注目

[細谷元,ITmedia]

 お金を払った後でも、他店と比べて価格が高かったら差額を自動で返金してくれるサービスが米国にあるという。今回はそのサービスとは何かを見ていく。

その名は「Earny」

 日本と消費文化が異なる米国。日本に比べ返品や返金など頻繁に発生しているといわれている。これは小売店の戦略でもある。つまり、返品や返金などのプロセスを通じて顧客との接点を持ち、また来店してもらうというものだ。

 「最低価格保証」という制度もその一環で実施されている。顧客が購入した商品の価格が他店より高い場合、その差額を返金するという制度。日本でもホテル予約サイトなどが導入しているので聞いたことはあるだろう。

 米国では、最低価格保証制度のもと請求できるが、何らかの理由で請求されない額が年間500億ドルを超えるとされる。請求されない理由は、そもそも最低価格保証制度の存在を知らない、またはより安い価格を見つけるのが手間であるため、というのがほとんど。

 この最低価格保証制度の差額返金プロセスを自動化するサービスが2016年に立ち上がり注目を集めている。その名も「Earny」。

最低価格保証、価格チェックと返金申請を自動化

 同アプリを開発、運営するEarnyはカリフォルニアに拠点を構えるスタートアップ。クレジットカード大手のマスターカードが開催したハッカソンで優勝、その後投資ファンドSweet Capitalなどから100万ドルを調達し注目を集めている。

 サービスを開始したのは2016年5月頃。ユーザーはアプリをダウンロードし、メールアドレス、Amazonアカウント、クレジットカード情報を登録するだけで、Earnyが取り扱う小売店で購入した商品と同じものが一定期間内に競合店で安くなった場合、自動で差額分の返金を受けることができる。このときEarnyはその額の25%を手数料として徴収するビジネスモデルだ。ローンチ当初はiOSのみだだったが、現在はAndroidでも利用できる。

Earny iOSアプリダウンロードページ

 利用できる小売店は、Best Buy、Costco、Gap、Banana Republic、Nike、Walmartなど米国で有名な50ブランドほど。

 実際、差額返金の自動化とはどのようなプロセスなのだろうか。例えば、Best BuyでPCを1000ドルで購入したとする。すると、Earnyのボットはメールボックスに送られてくる電子レシートにアクセスし、何をいくらで購入したのかを確認。その後、小売店が定める最低価格保証期限内に、競合店で値下げが行われていないか常にチェックし、もし競合店での価格が低いことを発見すると、返金申請を行い、登録したクレジットカードに自動で返金する仕組みだ。

保証期間内の価格変化をチェックする

 米国では通常、小売店が定める最低価格保証期間は10〜30日間ほど。この期間内に競合店がより安い価格を提示していれば、差額分を返金する。購入時点では価格差がない場合でも、数日、数週間後に他店で値下げされることも多い。Earnyは常に価格差をチェックしており、ユーザーが忘れた頃に返金されているということも珍しくないようだ。

返金完了のお知らせ

小売だけでなく、クレジットカードの最低価格保証も活用

 不運なことに、Earnyがローンチしてすぐ米Amazonは最低価格保証制度を取りやめることを発表した。米Amazonの価格変化に対するポリシーは頻繁に変更されてきた。あるときは最低価格保証期間30日だったが、その後7日に短縮され、そしてついに廃止されてしまったのだ。

 これはEarnyにとって大きな痛手となったに違いない。このロスを挽回すべく考え出したのが、小売だけでなくクレジットカードの最低価格保証制度を利用することだ。

 米国ではクレジットカードを発行する銀行の多くが最低価格保証制度を設けている。クレジットカードで購入した商品の価格が他店で安い場合、その差額を返金する制度だ。現在、EarnyはChase銀行とCiti銀行のクレジットカードを取り扱っている。

 Chase銀行の最低価格保証制度は保証期間90日間、1回最大500ドル、年間最大2500ドルまで返金を受けられる。Citi銀行の制度は保証期間60日間、1回最大500ドル、年間最大2500ドルまで返金可能とほとんど同じ内容だ。

 アプリのダウンロードページでは実際に返金を受けたユーザーのコメントが見られ、かなりうれしいサービスであることが分かる。日本では「他店徹底対抗!」などとうたう量販店もあるが、仕組みとしての最低価格保証ではないし、何より購入後に返金なんて商品を返品でもしなければ発生しない。可能性は限りなく低いが、日本でも同様の制度/サービスが始まれば一消費者としてうれしく思う。

ライター

執筆:細谷元(Livit)


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