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» 2017年03月20日 06時00分 UPDATE

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:「オープンソース vs. Windows」の最前線だったミュンヘンの現在 (1/2)

なぜ2000年代にオープンソース化を大胆に進めたミュンヘンは、今になってWindows 10へ移行しようとしているのだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 ミュンヘンと言えば、ドイツのバイエルン州の州都であり、多くの日本人には「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」に代表されるビール祭りの中心地として記憶されているかもしれない。しかし、ことIT業界におけるミュンヘンと言えば、「オープンソース vs. Windows」の最前線という意味合いを持つ。

munchen 1 ミュンヘン市内を走る路面電車

2000年代に脱Windowsを大胆に進めたミュンヘン

 MicrosoftがWindowsでクライアントOSの支配権を決定的にした2000年代。そのカウンターカルチャーとしてオープンソースが注目を集め、ソフトウェアの開発や利用が広まっていった。ここで開発された技術群は現在のITインフラの根幹を支えているが、一方で「打倒Windows」的な掛け声で盛り上げられていた「デスクトップPC」としての採用はあまり広まらなかった。

 こうした中、2000年代前半にミュンヘンが市職員のシステムをWindowsからLinuxに全面移行することを発表した際には、オープンソースコミュニティーならびにIT業界関係者に大きな衝撃を与えた。

 当時米MicrosoftのCEOだったスティーブ・バルマー氏が現地まで直接出向いて会談の場を設けたほどで、その後欧州地域の自治体でいくつか同じようなオープンソース化が続いたが、ミュンヘンの決定はムーブメントの中心にいた。

 それがシステムの本格導入開始から10年を経て、「LinuxからWindowsへ」という逆の決定を下したことで、再びIT業界の注目を集めている。

 今日、Microsoftのフラグシップ製品である「Windows 10」は、Ubuntuをベースにした「Windows Subsystem for Linux(WSL)」によってLinuxバイナリ環境がそのまま導入可能になっているほか、同社クラウドサービスの「Microsoft Azure」では多くのLinuxベースのインスタンスが動作して世界のインフラを支えている。

 こうした状況から、今では「オープンソースコミュニティーに最もコミットしている大手ベンダーの1社がMicrosoftである」という意見もある。10年前とは情勢が大きく変化しているとはいえ、業界の一大決断と呼ばれたオープンソースへの移行がなぜ時を経て覆されたのか、その背景をみていく。

最も野心的なオープンソースプロジェクト

 本件を報じている米ZDNetのデビッド・マイヤーズ氏によれば、ミュンヘン市は2020年末までに全ての市職員が利用する業務クライアントをWindows 10に置き換えていく計画だという。

munchen 2 ミュンヘンの街並み

 現在、同市では「LiMux」と呼ばれるUbuntuベースのクライアントOSが稼働しているが、これをWindows 10との混在期間を経て、期限までに置き換えを完了させる見込みだ。生産性アプリケーションとして、オープンソースへの移行当初はOpenOffice.orgを採用したが、後にOracleによるSun Microsystems買収を経て誕生したLibreOfficeに切り替えており、今回はいよいよMicrosoft Officeへと移行する。

 このオープンソースへの移行に関する経緯は、米ITworldの2012年11月の記事でまとめられている。もともとプロプライエタリなソフトウェアで、かつ特定のベンダーに依存する仕組みを嫌う文化が欧州内部で醸成されており、ミュンヘンはその急先鋒(きゅうせんぽう)として機能していた側面が大きい。

 LiMuxプロジェクト自体は2004年にスタートし、実際のオープンソースへの完全移行が始まったのは2006年だ。もともとはWindows NT時代に計画が持ち上がり、後にWindows 2000の時代になって計画が実行された。

 ミュンヘンは計画を実行するにあたり、その移行理由の1つにソフトウェアのライセンス料金負担を挙げている。

 例えば、Windows 2000ベースのシステムを「Windows 7+Microsoft Office 2010」の構成へと変更する場合には3400万ユーロ強のコストが掛かるのに対し、「LiMux+OpenOffice.org」の構成では2280万ユーロで済む。これは1万1000ユーザー分のクライアントPCを移行した場合のコスト試算で、この差額がそのままソフトウェアライセンス料となる。

 またLinuxベースのシステムの場合、一部は従来のハードウェアをそのまま流用できるとのことで、実際のライセンス料負担よりもハードウェア分のアップグレードコストがさらに安くなる計算だ。また同記事が執筆された2012年の時点で1万5000台のクライアントが市内で動作していたという。

 LiMuxプロジェクトが2004年に開始されたのは、当時利用していたWindows NT 4.0のサポート期間が終了したことがきっかけだったが、結果として完全移行を実現した自治体の成功事例として大きく宣伝されたことで、後にフォロワーが続くようになり、「Windowsからオープンソースへ」のムーブメントにおける象徴とみられるようになった。

 ではなぜ、今になってこのムーブメントが逆流し出したのだろうか。

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