本製品はJIS配列ということで、既存のUS配列のSmart Keyboardとは、キーの配置や形状が異なる他、キーそのものの数も異なっている。スペースキーの左に「英数」、右に「かな」キーがあり、2段にまたがった「Return」キーが採用されているのが、US配列のSmart Keyboardとの大きな相違点だ。
これらはMacのキーボードの配列を踏襲しているので、日ごろからMacを利用していれば違和感なく併用できるだろうし、Windowsユーザーにとっても違和感は少ない。筆者の場合、普段の入力環境はWindowsがメインだが、今回のJIS配列Smart Keyboardであれば大きな戸惑いもなく、日本語の入力作業が行えた。従来のUS配列Smart Keyboardでは配置に慣れないことから入力に集中できなかったが、本製品はそのようなこともない。
ところでJIS配列と言えば、2段にまたがるReturnキーの存在が目立つが、本製品の最大のメリットはMacと同様、スペースキー左右の「英数」「かな」キーでIMEの切り替えが行えるようになったことだろう。これまでであれば、「地球」マークのキーを押してIMEを切り替える必要があったわけだが、本製品では独立した「英数」「かな」キーを用いて直感的に切り替えられる。
ちなみにキーピッチは約18.5ミリとかなり広い。iPad Pro本体が10.5インチとなって横幅が広くなったぶん、Smart Keyboardのキー幅およびキーピッチにも余裕ができた格好で、入力中に左右の指がこすれ合うといったこともなく快適だ。横方向のキーの数そのものが増えているのだが、Shiftキーや右寄りのキーの幅を変えるなどして影響を最小限に抑えている印象を受ける。
ところでiPad Proユーザーの中では、従来の「9.7インチiPad Pro」で本製品を使用したいと考えている人もいるのではないだろうか。
本製品は10.5インチiPad Pro用に設計されており、製品ページの互換性の欄にも10.5インチしか記載はないが、接続がSmart Connector経由であることに変わりはない。もし、本体幅がフィットしないことを我慢して、従来の9.7インチiPad Proでも問題なく利用できるのなら、手持ちの9.7インチiPad Proを10.5インチに買い替えずに、本製品だけを買い足すという選択肢が生まれてくる。
先に結論を書いてしまうと「認識はするが、おすすめできない」というのが筆者の意見だ。確かにSmart Connector経由で接続し、認識させること自体は可能だ。天地および幅のサイズが異なるため、上下左右がわずかにはみ出してしまうが、それも1センチあるかないかといったところで、少なくとも利用時には全く気にならない。むしろ若干横幅が広いことから、タイプに余裕があるのは利点と言っていいだろう。
ではなぜおすすめできないかと言うと、理由は2つ。1つはキートップの印字と入力文字とが完全に一致しないためだ。本稿執筆時の最新OSであるiOS 10.3.2で試したところ、10.5インチiPad Proではきちんと入力できる文字が、9.7インチiPad Proでは入力できなかった。例えば最上段のキーを試しただけでも、数字はきちんと入力できるものの、それ以外のキーが合致していない。これではストレスがたまることは必至だ。
もう1つは、自動スリープ機能が9.7インチiPad Proでは働かないことだ。iPad Pro本体とサイズがきちんと合致していれば、カバーを1〜2センチほど開くと画面がスリープから復帰し、それ以下になると消灯してスリープ状態になるのだが、本製品と9.7インチiPad Proを組み合わせた場合、完全に閉じた状態でも画面は表示されたままになり、バッテリーの消費を招いてしまう。手動でスリープさせなくてはならないため、機動力は大幅に損なわれてしまう。
9.7インチiPad Proは本稿執筆時点で既にiPad Proの製品ページから姿を消しており、これが終息を意味するのであれば、新たにオプションが発売される可能性は低い。それゆえ10.5インチiPad Pro向けの本製品を流用するという発想が生まれてくるわけだが、少なくともキートップの印字と入力文字とが一致するよう改善されない限り、実用レベルで使うのは難しい。
逆に、このJIS配列Smart Keyboardを使えることが、10.5インチiPad Pro、及び新しい12.9インチiPad Proの利点と言えそうだ。
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