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「Windows 10 Pro for Workstations」は何がスゴイのか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2017年08月22日 11時00分 公開

 2017年秋、「Windows 10」にまた新たなエディションが追加される。

 米Microsoftはリーク情報が出回っていたワークステーション向けOSの「Windows 10 Pro for Workstations」を8月10日(現地時間)に正式発表した。パフォーマンスや信頼性が必要な業務向けの最上位エディションで、2017年秋にリリース予定のWindows 10大型アップデート「Fall Creators Update」の一部として提供が開始される。

Pro for WS 「Windows 10 Pro for Workstations」が正式発表

Windows 10 Proの制限を取り払う「Pro for Workstations」

 Windows 10の名称が付与されたOS製品は、MobileやXbox One、IoTといったPC以外のプラットフォーム向けを除けば、「Windows 10 Home」「Windows 10 S」「Windows 10 Pro」「Windows 10 Enterprise」「Windows 10 Education(Pro)」などのエディションが用意されている。

 価格も用途も異なるこれらエディションだが、実質的に中身は一緒であり、ライセンス形態によって各種機能制限がかかっているにすぎない。そのため、機能制限がかかっているHomeを除いた最上位エディションのWindows 10 ProとWindows 10 Enterpriseについては下記のスペックが上限だ(論理コア数のカウントについては、AMDなどプロセッサのアーキテクチャによってカウントが異なる)。

  • 32bit版Windows 10 Pro/Enterpriseのスペック上限
    • プロセッサのソケット数:2
    • プロセッサ論理コア数:32
    • メモリ容量:4GB

  • 64bit版Windows 10 Pro/Enterpriseのスペック上限
    • プロセッサのソケット数:2
    • プロセッサ論理コア数:256
    • メモリ容量:2TB(Homeは128GB)

 一方で、Windows 10と同系列のコアを採用してサーバ製品として提供されている「Windows Server 2016」については「Standard」と「Datacenter」の2種類のエディションが用意されており、こちらの最大搭載メモリは24TBだ(Windows Server 2012 R2では4TB)。プロセッサについても4ソケット(4way)以上、論理コア数はHyper-V有効時に512コア(Windows Server 2012 R2では320コア)までサポートする。

 こうしたサーバ向けWindowsのスペックは、膨大なリクエスト処理や複数アプリケーションの同時動作で必要とされるからだが、同様に高いパフォーマンスを一般的なWindows OSで利用したいというユーザーも少なくない。特に大規模な演算処理を必要とするプロフェッショナル用途では、「ワークステーション向けのWindows 10が欲しい」というニーズが以前から存在していた。

 今回の新エディションは、MicrosoftがWindows Insider Program参加者らのフィードバックを経て、これに応えた形となる。

 Windows 10 Pro for Workstationsは、プロセッサが最大4ソケットまでサポートされ(従来は2)、メモリも6TBが上限となっている(従来は2TB)。

  • Windows 10 Pro for Workstationsのスペック上限
    • プロセッサのソケット数:4
    • メモリ容量:6TB

 基本スペックではWindows Server 2016には及ばないものの、特に大量のメモリを消費するアプリケーションを稼働していたり、Xeonを搭載したマルチプロセッサ構成のシステムを利用しているユーザーには、ハードウェア本来のスペックを生かせる改善がありがたいはずだ。

サーバOS譲りのパフォーマンスと信頼性

 単純なハードウェアスペック制限の開放だけでなく、Windows 10 Pro for Workstationsでは幾つかのサーバ向け機能の採用により、クライアント向けOSでもパフォーマンス改善に向けた取り組みが行われている。

 その1つが「SMB Direct」だ。「Remote Direct Memory Access(RDMA)」と呼ばれる機能をサポートしたネットワークアダプターが搭載されたマシンにおいて、ファイル共有プロトコルのSMBを介したリモートの巨大データ転送がCPUに負荷をかけずに、低遅延で高速に行えるようになる。もともとWindows Serverの標準機能で、「なぜクライアント向けWindowsでは使えない?」という話が度々出ており、ようやく今回の新エディションに追加された。

 同様に、パフォーマンス向上の一環として「NVDIMM-N」をサポートする。NVDIMMとは「Non Volatile DIMM(不揮発性DIMM)」メモリの略語だが、NVDIMM-NではDIMMモジュールに通常のDRAMだけでなく不揮発性メモリも搭載し、バックアップ機構を備えている。そのため、NVDIMM-Nでは電源をオフにしてもメモリにデータが残る。

 NVDIMM-Nでは通常のDIMMで供給されるDRAMとほぼ同じ速度でメインメモリにアクセス可能だが、この過程で頻繁にアクセスするアプリやデータがNVDIMM-N上に残り続けるため、より遅いストレージへのアクセスが減ることで、パフォーマンスを最大化できるメリットがあるというわけだ。

 そしてパフォーマンスと並んでWindows 10 Pro for Workstationsにおける大きな強化ポイントが信頼性だ。ファイルシステムとして「ReFS(Resilient file system)」をデフォルトで利用可能にしており、Microsoftは「クラウド並みの回復力(Resiliency)」を実現すると説明している。

 もともとは2012年にWindows Server 2012用のサーバ環境向けファイルシステムとして紹介され、クライアントPC向けには翌年の「Windows 8.1」でサポートされた。そのため、Windows 10においても利用が可能になっている。

 ReFS最大の特徴は、全てのファイルやメタデータに対してチェックサムを持ち、その完全性を保証する点にある。例えばエラーやストレージボリューム内の欠損を発見した場合、記憶域スペース(Storage Spaces)内に設定されたミラー領域やパリティ領域からファイルを自動修復し、処理の続行を可能にする。

 NTFSで最大256TBだったボリュームサイズは4.7ZB(ゼタバイト)まで拡大されており、前出のデータの完全性を保証する機構と併せ、サーバやワークステーションのような大容量データ処理に向いた作りとなっている。

 一方で、NTFSでは提供されていた「ファイル圧縮」「ディスククォータ」「起動ドライブ」といった機能が省かれており、一般のPC用途での利用には向いていない。あくまで大容量ストレージや大規模データを取り扱うワークステーション向けの機能だ。

Pro for WS ReFSではサポートされないNTFSの機能
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