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» 2017年08月25日 13時30分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:認証テストよりグッドデザイン賞を気にする開発担当者たち (1/2)

IT関連製品の拡販にあたり、第三者機関による認証は、製品の信頼性を高めるうえで効果的なのは言うまでもない。しかしメーカーの開発担当者の中には、これらにあまり注力することなく、全く畑違いとも言える賞にこだわる人々がいる。

[牧ノブユキ,ITmedia]
work around

 スマートフォンやPCの周辺機器、アクセサリーといったIT関連の製品を広く販売するうえで欠かせないのが、パッケージなどにおける対応規格の表記だ。

 どの規格に適合しているかをパッケージや製品紹介のWebページに分かりやすく記載することにより、その製品はどのような機器と組み合わせて利用できるか、判断できるようになる。このことがひいては製品の信頼の証となり、結果として販売台数の増加に貢献してくれる。

 こうした対応規格の表記では、第三者機関による認証を表示するのも効果的だ。例えばUSBの場合、主要メーカーが参加するUSB.orgという第三者機関で認証を取得したUSBケーブルは「Certified USB」などのロゴを製品パッケージなどに使用できる他、同機関のWebサイトにも掲載され、型番が検索可能になる。これがあれば正式にUSBの規格にのっとっているので安心して使えますよ、というわけだ。

 この他、本体機器メーカーがサードパーティー各社に対して、独自の認証プログラムを用意している場合がある。有名なのはAppleのMFi(Made for iPod、Made for iPhone、Made for iPad、AirPlay) Programで、このプログラムにパスすると、iOSのバージョンアップ後も互換性が保証されることに加えて、MFiロゴなどが製品パッケージに使用可能になる。サードパーティー各社にとっては競合他社に負けないためにも、このMFiの取得は欠かせない。

Apple MFi Apple製品のアクセサリーでよく見かける「Made for iPod/iPhone/iPad」のラベル。Appleが定めた性能基準に適合していることをデベロッパーが認定済みという証だ

 もっとも、サードパーティーメーカーの開発担当者からすると、これら認証テストはコスト面でかなりの重荷になっており、ある意味で忌むべき存在と言える。特にケーブルなどは価格以外の差別化要因に乏しいことから、こうした認証テストの費用をばか正直に原価に上乗せすることで、逆に店頭での価格競争力を失うという、本末転倒な事態に陥りかねない。

 そんな開発担当者の中には、こうした認証テストにはあまり興味を示さない代わりに、なぜかデザイン関連の賞に固執する人々がいる。日本では「グッドデザイン賞」がご存じのようにデザインにおける賞の権威として挙げられるが、IT関連の製品であればむしろ認証テストにその予算を割り当てた方が妥当に思える。

 もちろん、製品の信頼性に関わる認証テストをパスしたうえで、デザインにも注力したからグッドデザイン賞に応募するという流れもあるのだが、この優先順位が逆というパターンもみられるのだ。彼らはなぜ、デザインの賞に固執するのだろうか。

自分の担当製品にどれだけ多くの広告宣伝費を引っ張れるか

 一般的に、企業の広告予算は年間の売り上げに対する割合で決められていることが多く、家電メーカーは平均して約2〜3%だと言われる。特定の製品に割り当てられる広告宣伝の費用は、この「売上の約2〜3%」という枠から捻出されることになる。

 もっとも、広告宣伝というのは一般的には製品単位ではなく、ブランド単位やシリーズ単位で行われることの方が多い。例えばUSBケーブルの長さのバリエーションが4種類あったとして、4製品それぞれに予算が割り当てられるわけではない。この場合はUSBケーブルというひとまとまりのグループに対して広告宣伝の予算がつくのが常だ。

 つまり厳密に製品の数や販売予測数で割り当てるのではなく、プールされた予算の中から会社としての注力の度合いに応じて、広告宣伝の予算が配分されることになる。それゆえメーカーの開発担当者は、自分が担当する製品にどれだけ多くの広告宣伝費を引っ張ってくるか、口実作りに苦心することになる。

 その口実の1つが、先に述べた認証テストの費用だ。一般的に認証テストは製品の発売前に済ませるのが常であり、その費用は製品原価の一部として扱われることが多い。しかし製品の発売後に新しい規格が登場し、追加で認証テストを行うことになった場合、後から製品の原価に上乗せしようにも、会社のシステムの都合で対応できない場合がある。また他社に先駆けて新製品を投入するにあたり、認証テストはどうしても後回しにせざるを得ない場合もある。

 こうした場合、開発原価以外でなるべくそれに近い性質を持つコストセンターとして、広告宣伝費扱いで処理されることがある。その理屈が通るのであれば、認証テストはあえて発売後に行うようにし、その費用は製品原価としてではなく全て広告宣伝費で処理しよう……と考えるわけである。なかなかズルいテクニックだ。

 なぜこれがテクニックとして成立するかというと、開発費と広告宣伝費は、受け持つコストセンターが異なるからだ。多くのメーカーでは開発部門と広告宣伝部門は独立しており、コストセンターも別々になっている。

 つまり開発部門とは異なる別のコストセンターにこれら認証テストの費用を負担させることにより、開発担当者にとっては原価を抑えつつよい製品を作れたことになり、からくりを知らない上層部からは評価がアップするというわけだ。文字通り一石二鳥のテクニックである。

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