うわさのサーバ向けARMプロセッサ「Qualcomm Centriq 2400」が正式ローンチ Intel Xeonと比較した実力は?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

» 2017年11月09日 12時00分 公開

 Microsoftは2016年12月に「ARM版のWindows Server」を開発し、同社のAzureデータセンターにおいて運用を始めている

 この際、ローンチパートナーとして挙げられたQualcommのサーバ向けSoC(System on a Chip)である「Centriq 2400」は、プレビューから1年の時をへた2017年11月8日(米国時間)、米カリフォルニア州サンノゼで開催されたローンチイベントで正式にお披露目された。今回はこのイベントの模様を紹介しつつ、今データセンターで起きつつある変化を紹介したい。

Centriq 2400 Centriq 2400を手にデータセンター戦略を語る米Qualcommのポール・ジェイコブス常勤会長兼取締役会会長

なぜデータセンターでARMプロセッサなのか

 「PCやサーバでARMプロセッサを利用する」というトピックは、過去数年にわたってIT業界での大きなテーマになっている。特にサーバ分野では「High Density Computing」と呼ばれる高密度にサーバ機能を凝縮して並行での大量のデータ処理を可能にする仕組みへの適用が試みられてきた。

 この取り組みは32bitアーキテクチャの時代から始まり、ARMv8命令セットで64bit拡張が行われた今日まで続いているが、いまだ一定の成功を収めていない。理由はさまざまだが、あえて現状のx86アーキテクチャで動作しているワークロードをARMで置き換えるほどではないという面が大きいだろう。

 だがトレンドは変化しつつある。x86が実質的な唯一のアーキテクチャだったPCの世界において、間もなくARMアーキテクチャのQualcomm Snapdragon 835を搭載した「フル機能版Windows 10」の製品群が投入される。

 リファレンスモデルでの動作を見る限り、通常のx86プロセッサ搭載ノートPCと比較してもパフォーマンスは遜色なく、初めてこの分野でx86搭載製品の脅威になりそうだ。

 一方で、稼働中のサーバの9割超がIntelベースのプロセッサを搭載しているという現状において、ARM陣営の次なるチャレンジが一定の成功を収めることができるのか。QualcommのCentriq 2400はその実力を試されることになる。

 米Qualcommのポール・ジェイコブス常勤会長兼取締役会会長は、Qualcommがトレンドをリードする存在だと強調している。

 まずアーキテクチャのフットプリントとして、既にARMがx86を大きくリードしている点を挙げ、スマートフォンから小型の組み込み機器まで幅広い用途での利用が進んでいるARMアーキテクチャのデバイスは、2021年までに1000億台の累計出荷台数を達成する見込みだという。

 これが大きい理由としてジェイコブス氏は、プロセッサの世界においてプロセス技術を含めたトレンドで既にARMが業界をリードしており、実際に10nm製造プロセスの製品を先行して市場投入できているのもARMだと述べている。この波はデータセンターへも到来し、やがてはARMがx86の牙城を崩すことになるというのだ。

Centriq 2400 デバイスの多様性により、既にデバイスの年間出荷台数ではx86を大きく勝るARM
Centriq 2400 PCとスマートフォン市場におけるデバイス数の比較
Centriq 2400 製造プロセスにおけるトレンド。この波をデータセンターに波及させるのがQualcommの狙いだ

 プロセッサ側の技術トレンドだけでなく、幸いにもARMが市場を拡大しやすい環境ができつつあるのが今日のデータセンター事情だ。

 データセンターで稼働するアプリケーションは、従来ながらの「モノリシック」なものから、今日ではより「クラウド」的なものが主流となりつつある。このトレンドが意味するのは、従来のオンプレミス的な単一サーバの性能やアーキテクチャに依存しがちなアプリケーションから、よりスケールアウトが容易でアーキテクチャ依存が少ないアプリケーションへと主軸が移りつつあるということだ。

 2020年までにはこの比率が逆転してクラウド型のソリューションが中心となることが見込まれており、このトレンド転換のタイミングを狙ってCentriq 2400は投入される。

Centriq 2400 データセンターにおけるアプリケーションやシステムは、よりクラウド的なものへと移行しつつある
Centriq 2400 アプリケーションはコンテナ化やマイクロサービス化が進み、急速にアーキテクチャ依存から脱却しつつあるという
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月11日 更新
  1. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  2. 「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない (2024年05月10日)
  3. 個人が「Excel」や「Word」でCopilotを活用する方法は? (2024年05月08日)
  4. Minisforum、Intel N100を搭載したスティック型ミニPC「Minisforum S100」の国内販売を開始 (2024年05月10日)
  5. “NEXT GIGA”に向けた各社の取り組みやいかに?──日本最大の教育関連展示会「EDIX 東京」に出展していたPCメーカーのブースレポート (2024年05月09日)
  6. NECプラットフォームズ、Wi-Fi 6E対応のホーム無線LANルーター「Aterm WX5400T6」 (2024年05月09日)
  7. ASRock、容量約2Lの小型ボディーを採用したSocket AM5対応ミニベアボーンPCキット (2024年05月10日)
  8. SSDの“引っ越し”プラスαの価値がある! 税込み1万円前後のセンチュリー「M.2 NVMe SSDクローンBOX」を使ってみる【前編】 (2024年05月06日)
  9. Core Ultra 9を搭載した4型ディスプレイ&Webカメラ付きミニPC「AtomMan X7 Ti」がMinisforumから登場 (2024年05月08日)
  10. これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け (2022年10月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー