“地味子”じゃなかった第2世代Ryzen ベンチマークテストで徹底検証(1/3 ページ)

» 2018年04月20日 19時53分 公開
[石川ひさよしITmedia]

 先日発表された第2世代Ryzenこと「Zen+」。製造プロセスが12nmに進化した「Ryzen 7 2700X」と「Ryzen 5 2600X」のパフォーマンスを、新しいチップセットAMD X470とともに検証していく。

Ryzen 7 2700Xの性能をベンチマークテストで明らかにしていく

 まずは発表リリースの際に触れられなかったもう少し詳細な第2世代Ryzenのスペックについて紹介しよう。

 今回の第2世代Ryzenの一番のトピックは製造プロセスがグローバルファウンドリーズの14nm(14LPP)から同12nmプロセス(12LP)へと微細化された点だ。アーキテクチャーでは基本的にZenのままである。

 ただし、Intelでいうところの“チック・タック”のタックに相当するプロセスの微細化が果たされたことになる。製造プロセスが1つ進めば、同じクロックで動作させた場合は消費電力が下がり、同じ消費電力で動作させた場合はクロックが上げられる、というのが一般論だ。第2世代Ryzenもこれに当てはまる。

 とはいえ、第2世代Ryzenをスペックだけで見ると、製造プロセスの進化によるメリットが少し分かりづらいことも確か。第1世代Ryzenの最大TDPは95Wだったが、第2世代のRyzen 7 2700XではTDPが105Wに増えているためだ。

 Ryzen 7 1800Xが95Wで定格3.6GHz、最大4GHz。Ryzen 7 2700Xは105Wで定格3.7GHz、最大4.3GHzとなる。一見すると、クロック上昇したぶん、TDPが増えただけにも見えてしまうが、AMDによれば仮に同一クロックで動作させた場合、第2世代Ryzenのほうが第1世代Ryzenよりも最大11%消費電力が低く抑えられるという。この点には自信を見せている。

12nmプロセスのメリットとして電力効率またはパフォーマンスの向上が可能に

 Ryzen 7 2700Xでいえば、製造プロセスの進化で生まれた余裕と、これに10Wプラスした分だけクロック引き上げがある。そしてもう1つ、Precision Boost 2によってもクロックの引き上げが実現される。

 Precision Boost 2は、Ryzen MobileのときにAMDが熱心にアピールしていたが、ターボ技術をコア・スレッド数に対して柔軟に制御するものだ。第1世代のRyzen 7 1800Xでは、1〜2スレッド時は高クロックでも、それ以上は定格クロック付近まで下がってしまっていた。これが第2世代Ryzenでは、最大スレッド時でもより高いクロックで動作する。Ryzen 7 2700Xでいえば、1スレッド時から16スレッド時まで右下がりの直線に近いクロック制御が行われる。

Ryzen 7 2700XとRyzen 7 1800Xのブーストのクロックの違い。図のとおり意外と使いがちな3スレッド以降で大きく差が出る

 つまり、第2世代Ryzenは、12nmプロセス化による定格動作とターボ時のクロックの引き上げによりパフォーマンスがアップし、中間的なスレッド時のパフォーマンスもPrecision Boost 2による高クロック動作でパフォーマンスがアップする。エンコードやレンダリングなどマルチスレッド化が進んだアプリケーションを除けば、普段は全スレッドを使いきることは少ない。このことからも、Precision Boost 2によるクロック向上は効果がありそうだ。

 また、IPC(1クロックサイクルあたりの実行命令数)を向上させたという。アーキテクチャー面ではあまり手を加えられていないものの、キャッシュメモリ、メインメモリのレイテンシを削減しているとのことだ。L1〜L3キャッシュでは13〜34%レイテンシを削減し、メインメモリでは11%レイテンシを削減、トータルで3%IPCが向上している。

L1〜L3などメモリのレイテンシを向上することでIPCを改善

 メインメモリでは、Ryzen 7 2700X、Ryzen 5 2600XでDDR4-2933(デュアルチャネル)をサポートした。Ryzen 7 1800XではDDR4-2666までだったため引き上げられた格好だ。

 ちなみに、新チップセットのAMD X470については、第1世代Ryzen導入済みの方にとっては、マザーボードを買い替えるべきか悩ましいところだろう。第2世代RyzenもSocket AM4を利用するため従来のチップセットを搭載するマザーボードでも、ファームウェアを更新すれば利用できる。

 Ryzen 7 2700XのTDPが105Wとなったことで、AMD X470では電源設計もそれに合わせて設計される点が新チップセットのメリットではある。ただし、10W程度であれば、AMD X370チップセット搭載マザーボードならば吸収できそうだ。AMD B350以下のチップセットを搭載するマザーボードについては、ややコスト重視となり、とりわけ安価なモデルでは不安もある。とはいえ、これはRyzen 7 2700Xだけであって、他のモデルは95W以下なので問題ない。

 もう1つ新チップセットでポイントとなるのが「StoreMI」だ。SSDをキャッシュにHDDを高速化するもので、現時点での情報を総合すれば、1月にAMDが発表したFuzeDrive for AMD Ryzenに似ている。ただし、AMD X470ユーザーならば、無料で利用できるところが異なる。FuzeDrive Basicが19.99ドルだったので、価格にして2000円強といったところだろうか。

StoreMIは、大容量でも安価なHDDと、高速なSSDやさらに高速なメモリを組み合わせ、大容量で高速な仮想ストレージを作成する

 こうした点から、少なくとも既存のAMD X370マザーボードユーザーを想定すれば、CPUを買い替え価格に折り合いが付けばAMD X470に更新するのも良いが、CPUを買い替えなければAMD X370のままで良いし、CPUを交換するにしてもしばらくは様子を見ておくほうが良いだろう。

 新規に第2世代Ryzenを組むのであれば、ファームウェアアップデートの必要がないAMD X470マザーボードを選ぶのが好ましいが、AMD X370マザーボードの価格もこなれてきているので、これも価格との折り合いがつけばといったところ。いずれにしてもAMD X470はハイエンド向けチップセットなので、Ryzen 7 2700Xか2700を狙うユーザーのためのものとなるだろう。

4モデルの第2世代Ryzenが登場したが、Ryzen 5の下位セグメントは一部継続しRyzen 5 2400Gが埋め、Ryzen 3のセグメントも同様
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