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「Office 365」でコラボレーションの世界を飲み込むMicrosoft鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2018年07月16日 06時00分 公開

 米Microsoftは年次のパートナーイベント「Inspire 2018」を7月15日〜19日(現地時間、以下同)に米ネバダ州ラスベガスで開催する。また世界中のMicrosoft社員を集めた社内イベント「Ready Summer 2018」を7月18日〜20日に開催することも合わせて、「The Strip」と呼ばれるラスベガス中心部の多くのホテルを占拠する、非常に大規模な催しとなる見込みだ。

Inspire 2018 「Inspire 2018」の公式ページ

 会場の一部は両イベントで共有されており、パートナー企業とMicrosoftの担当者が出会う機会でもある。Inspire後半となる7月18日のセッション「Corenote」では同社のサティア・ナデラCEOが登壇する見込みで、何らかの新しいメッセージを打ち出すかもしれない。

Inspire & Ready 米Microsoftが開催するInspire 2018およびReady Summer 2018の会場案内図。ラスベガスを体験したことがある方なら、その規模の大きさが容易に想像できるだろう。なお、この時期のラスベガスは日中気温が軽く40度を超えるため、普通に外を歩きまわっていると命に関わる

 2017年のInspireでは、「Microsoft 365」の正式発表の他、エンタープライズ市場における「Windows 10 S」のポジションなど、Windowsとクラウドに関するアップデートがあった。

 今回のInspire 2018は「Office 365」を軸に、コラボレーションにおける最新の取り組みをよりアピールするとみられる。実際、同イベントの開催に先立ち、同社は7月12日にOffice 365関連で幾つかの発表を行った。ここでは、Inspire 2018に通じる3つのアップデートを整理していく。

「Teams」をSlack対抗となるフリーミアムモデルに

 アップデートの1つ目は「Microsoft Teams」だ。Office 365で提供してきたツールのTeamsについて、2018年7月12日に「無料オプション」の提供を開始した。

Teams for free 無料版のオプションを用意した「Microsoft Teams」

 Teamsとは、2017年3月にMicrosoftが一般提供を始めたチーム内でのコラボレーションを行うツールだが、競合となる「Slack」に対抗すべく、猛烈な勢いでアップデートを繰り返してきた。その経緯を少し振り返りたい。

 米TechCrunchによれば、2016年にMicrosoftは最新かつ人気のコラボレーションツールを取り込むべく、Slackの80億ドルでの買収を検討していたようだが、Microsoft共同創業者であるビル・ゲイツ氏と現CEOのナデラ氏の両名が反対し、最終的に買収を断念したという。

 Microsoftは最終的にソフトウェアの内製へと舵を切り、結果として誕生したコラボレーションツールがTeamsというわけだ。Webインタフェースの他、現在は専用のクライアントとしてWindows、macOS、Android、iOS向けを用意している。

 Teamsは組織内に複数のチャネルを作り、チャット形式でおのおのがメッセージやリンク、画像などのデータを書き込んでいくことで情報を共有する。直接メンバーを指定してのチャットや音声通話、動画チャット、ミーティングの設定なども可能で、この辺りはSlackとほぼ同じ感覚で使えると考えていい。

 ただTeamsの大きな特徴として、「Office 365 Groups」への標準対応が挙げられる。Groupsに対応しているOffice 365製品では、例えば「Outlookのスケジュールを基にグループを作成」といったように目的別の共同作業環境を設定することが可能だ。ここを起点にOffice 365の各種サービスをまたいだ作業を行えるようになる。

 そのため、利用にはOffice 365 Business/Enterpriseといった有料サブスクリプションが必要とされていた(より正確にはExchange OnlineやSharePoint Onlineが利用可能なサブスクリプション全て)。

 また「Surface Laptop」を発表した2017年5月開催の教育分野向けイベント「Microsoft EDU」では、Office 365 Educationの環境において、教師と生徒のクライアント間のコラボレーションにTeamsを活用していくことを発表した。

 このようにTeamsは、単純にSlackの対抗というポジションにとどまらず、MicrosoftがOffice 365をプッシュする上で中核のソフトウェアというポジションを得つつある状況だ。

Microsoft 365 Teamwork 分かりにくいMicrosoftのコラボレーションツール相関。用途に応じて3種類のコミュニケーション手段があり、これを仲介するのが「Office 365 Groups」となる

 他方で、Slackはいわゆる「フリーミアム」のビジネスモデルを採用しており、検索メッセージ数の上限やワークスペースの容量などで差異化することで、より広いユーザーに門戸を開いて製品利用の入口としている。

 そこでMicrosoftは2018年7月になって、TeamsでもSlack同様に無料版のオプションを用意し、この分野でフリーミアムの市場に参入したというわけだ。

 この無料版ではOffice 365の有料サブスクリプションが絡まない基本機能(チャットなど)を使える他、1ユーザー当たりファイル用ストレージ2GB、共有ストレージで10GBまでが利用可能になる。

 ユーザー数の上限が300人という、中小企業向けのOffice 365 Business(Essentials/Premium)と同様の制限を受けるが、お試し版としての利用に限らず、ちょっとしたコラボレーション作業には必要十分な仕様ではないだろうか。

Teams for free Microsoftが提示するTeams無料オプションと競合製品(Other Choiceとの機能比較。Other Choiceは言うまでもなく「Slack」だが、Teamsが優位なポイントのみ記載されている点に注意。例えば、Slack側にはTeamsにあるようなユーザー数の制限はない
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