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» 2018年07月18日 06時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:国内クラウドファンディングで広がる海外ガジェット販売 そのリスクを考える (1/2)

国内のクラウドファンディングサイトで行われているガジェット類の出資募集は、海外クラウドファンディングのそれと異なり、既に海外で販売中のガジェットを国内で売るための、実質的な「予約販売プラットフォーム」となりつつある。こうした奇妙なビジネスモデルが広まりつつある理由は何だろうか。

[牧ノブユキ,ITmedia]
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 ここ数年で、ガジェット好きのユーザーの間ですっかりおなじみとなったのが、KickstarterやIndiegogoといったクラウドファンディングサイトだ。Kickstarterはいち早く日本語化を果たすなど日本への進出にも積極的で、言語の壁に阻まれてこれらサイトを利用してこなかった一般層に対しても、今後ますます浸透することが見込まれる。

 一方、国内のクラウドファンディングサイトでも、ガジェット類の資金募集は絶えず行われているが、KickstarterやIndiegogoなど海外クラウドファンディングサイトとは、やや異質であることが多い。というのも、国内クラウドファンディングサイトのそれは、海外で既に販売中のガジェットを国内で売るための、実質的な「予約販売プラットフォーム」となっていることがあるからだ。

 KickstarterやIndiegogoでは、募っている資金は開発のためのもので、目標額に達しなければ発売自体を取りやめる、いわゆる「All or Noting方式」が多いわけだが、これとは明らかに性格が異なっている。

 このような、体裁上はクラウドファンディングでありながら、実態はまるで別物と言っていい奇妙なビジネスモデルが国内で広まりつつある理由は何だろうか。業者側のメリットを中心とした裏事情、そしてこうした製品の購入を検討する際に注意すべき点を見ていこう。

少ないロットで売り上げを立てられる方法

 業者がクラウドファンディングサイトを利用して海外製品の取り売り(この場合、海外から仕入れて販売すること)を行う最大の理由は、何といっても少ないロットで売り上げを立てられることにある。

 一般的に、量販店に卸すことを前提に完成品を海外から仕入れる場合、何万個、どんなに少なくとも「1K=千個」単位のロットが発生する。これだけ多いと倉庫代も必要になるし、船便を使っての納入になるため、スケジュールも読みにくくなる。

 しかしクラウドファンディング経由で販売するとなると、数は数百個、下手をすると百個を切る切らないのレベルまで減らしても、十分に採算が取れる。段ボール単位での輸送も可能になるので、納期が読みやすい航空便を使うなど、柔軟に対応できるし、マンションの一室に分割納品して繰り返し発送すれば、倉庫代までもが不要になる。

 もちろん、ロットの数が少なければビジネスとしての効率自体は下がるが、近年はPC周辺機器やアクセサリーに限らず、ユーザーの嗜好の細分化によって多品種少量の流れができつつあるので、もともと小ロットが前提のクラウドファンディングの仕組みは実に都合がいい。1製品当たりの売り上げは少なくても、製品数を増やしてカバーする考え方だ。

 また、クラウドファンディングで好評なら一般販売に切り替え、そうでなければそれっきりにするという、試験販売を目的とした使い方も可能だ。前者の場合、「クラウドファンディングサイトで大好評だったあの製品が一般販売開始!」といったセールストークも使えるので、販促面でもプラスアルファが生まれる。

 さらに、100個前後までロットが減ると、正式に日本代理店として契約を結ぶ従来のやり方ではなく、海外のクラウドファンディングサイトで一般客に混じってまとめ買いを行い、それを転売するだけという商売も可能になる。

 海外クラウドファンディングサイトを見ていると、100個セットや300個セットなど、明らかに個人向けではない数のリターンが用意されているのは、こうしたビジネスを見越してのものだ。出品する側も、そうしたニーズがあることを理解しているわけである。

前入金であるため資金繰りが楽になる

 もう1つの大きな理由として、代金が前払いであることが挙げられる。

 クラウドファンディングはもともと開発のための費用を調達するためのスキームで、それ故に前払いが前提だ。そもそも出資した費用はイコール製品の代金というわけではなく、リターンの中に製品が含まれており、それを御礼として受け取れる、という表現の方が正しい。

 通常のビジネスであれば、仕入れる段階でコストが発生し、その支払いを迫られるわけだが、クラウドファンディングのスキームを流用すれば、仕入れを行う前に潤沢な資金を用意できる。小規模な業者にとっては大きな魅力だ。

 やりようによっては、先に国内のクラウドファンディングで資金を集め、それを使って海外で製品を買い付けるという、ドロップシッピングに近いウルトラCも可能だ。この時点で既に自転車操業なのだが、これがどこかで破綻すると、夜逃げのようなトラブルが発生しがちなだけに、ユーザーとしては注意する必要がある。

購入意欲の高いユーザー層にリーチできる

 これ以外に、通常のショッピングサイトの利用者とは異なる層にリーチできることも、隠れた理由として挙げられる。

 クラウドファンディングを利用するユーザーは、画期的な製品や面白い製品を探すことを目的にサイトを訪れており、それらの欲求を満たすようであれば、ボタンを押すことをためらわない。この辺り、価格をシビアに見極めながらショッピングを行う一般的なユーザーとは、買い物の傾向が全く異なる。

 実のところ、国内クラウドファンディングサイトで売られている海外製品の中には、並行輸入品などが既にAmazonなどで販売されており、かつそちらの方が安値な製品もあったりする。

 しかしリーチするユーザー層が全く異なっているため、このことは意外と発覚しにくい。面白い製品があると条件反射でポチるようなユーザーは、同等製品が存在しないかを確かめようともせず、刺激的な開発ストーリーをうのみにしがちなので、まさにカモというわけだ。

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