iPhoneで広まる新時代のAIアプリを林信行が解説(3/3 ページ)

» 2018年10月17日 17時00分 公開
[林信行ITmedia]
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手術中の失血量を判定

 HomeCourtは世界的に注目が集まるイベントで紹介されたので、既に映像を見ていた人も多いかもしれないが、もう1つの製品「Triton Sponge」は開発者向けイベント、WWDCでApple Design Awards 2018というイベントで表彰されただけなので、知らない人も多いだろう。

 しかも、やや専門的な医療系の製品ということもあり、Apple Design Awards関連の記事でもきちんと紹介されていないことが多い。しかし、実は筆者は取材時に開発者の人と意気投合をして、世界の全メディアの中でも初めて、同社の本社を取材する機会に恵まれた。

米Gauss Surgicalのシッダルタ・サティッシュCEO

 スタンフォード大学のすぐ近くに本社がある米Gauss SurgicalはAIを使って医療を変えようとする注目のベンチャーで、初期の投資家には今は亡きIntelのアンディー・グローブ元CEOも名前を連ねており、創業者でCEOのシッダルタ・サティッシュさんはグローブ氏にかなり多くの有益なアドバイスをもらったという。

 そんなGauss Surgical社の注目製品、「Triton Sponge」とはどんな製品か。

 出産に立ち会ったことがある人なら手術の現場がどれだけ血にまみれているかを実感として知っているだろう。こうした手術の際の出血があまりに多いと患者に命の危険が及ぶため、輸血が必要になってくるのは、みなさんも想像する通りだ。

 失った分に相当する量の血を輸血できればそれが理想で、輸血量が少なすぎるのも問題なら、多すぎるのもまた問題になる。にもかかわらず、実は米国の多くの病院では、患者が手術中にどれだけの血を失ったかの判断は医師の勘に頼っている部分が多く、それによって年間数千件の出産で問題が起き、不幸にして亡くなる妊婦も少なくないという(日本の3倍以上)。

手術中の出血量の判断は難しい問題の1つ

 本件について、Twitterで討論をしていたところ、日本では手術中の出血を拭くガーゼの重さを計量して失血量を計算する病院も多いという情報が集まってきたが、それでも例えば、出産現場ではガーゼに羊水や洗浄液なども含まれており、実は重量だけでは、正確な失血量の測定には役立たない。

 そこで活躍するのがTriton Spongeというアプリだ。専用の赤外線カメラをiPhoneに取り付けた状態で使用する。同アプリではガーゼに血が浸り赤い染みが出来上がると、その染みの形状を見て、そこに何mlの血液が含まれているかを測定する、つまり画像認識型の失血量測定アプリとなっている。

ガーゼの染みから出血量を推定

 慌ただしい手術現場では、間違って既にスキャン済みのガーゼを、再度スキャンしてしまうこともあるかもしれない。しかし、既にスキャンしたガーゼはカメラに映った向きが異なっても、表裏が逆でも。きちんと「スキャン済みのガーゼの可能性がある」として認識し教えてくれる。

 最近では米国の新聞、USA Todayに「病院はどうすれば母体を守れるかを知っている。ただ実践していないだけだ」という鮮烈なタイトルの記事が出たこともあり、改めて注目を集めているアプリの1つだ。これから、まさに世の中に増え始める機械学習系実用アプリにして最も大勢の命に関わるのが、このTriton Spongeなのかもしれない。

 このように現在のAI、特に機械学習の技術は、主に画像・映像を認識して、人間では「(シュートが)入った・入らなかった」「(出血が)多い・少ない」くらいしか判断できなかった視覚情報を数値化し、これまで経験や勘に頼っていた部分を補い、裏付けてくれるようになる。こうした新しい時代の“AIアプリ”の登場を支えてくれるのが、名前に「bionic」が付いたiPhoneの新世代プロセッサなのだ。

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