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» 2018年11月06日 20時00分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:新「MacBook Air」を検証して分かった“8年ぶり刷新”の成果 (1/4)

やっと投入された新しい「MacBook Air」の実機をいち早くレビュー。12型「MacBook」、13.3型「MacBook Pro」との比較も交えつつ、多角的にこの新モデルの実力を探る。

[本田雅一,ITmedia]

 「やっと投入されたのか」――仕事道具として「MacBook Air」を使ってきたユーザーの中には、そういう感想を漏らした人も少なくないだろう。発表会で米Appleのティム・クックCEOは「最も愛されてきたMac」という表現をしたが、それもそのはずだ。

MacBook Air 新しい「MacBook Air」

 製品の基本コンセプトでいえば10年以上、大幅なコストダウンを図る機構設計の刷新が行われた2010年のアップデートから数えると8年以上、最後に機種ID(Appleが付与する製品設計のバージョン番号)が更新されたのは2015年のことで、2017年に内蔵するプロセッサのクロック周波数のみ引き上げられただけで2018年後半を迎えていた。

 MacBook Airが、学生や個人で仕事をする人たちに好まれた理由は明快。生産性を高めた2010年のアップデート後、開発費の償却も進んで極めてコストパフォーマンスがよい製品となったからだ。当時は11.6型モデルもあり、10万円を大きく切る価格(税込8万8800円)からMacBook Airが入手できた。

 同じ外観、設計のまま、8年もベストセラーであり続けたパソコンは、恐らくこの製品ぐらいだろう。薄くすることで可搬性を高めたMacBook Airの設計は、その後、Intelが定義した「Ultrabook」というWindowsノートPCのジャンルを生み出した(それまでも主に日本メーカーが独自に作り込んだ薄型軽量ノートPCは多数存在したが、Ultrabook以降はメーカーを問わず低価格な薄型軽量ノートPCが当たり前になっていった)。

 また、内蔵するインタフェース類が旧式のままであったことは、むしろ扱いやすいという側面も与えていた。

 他のMacBookシリーズがUSB Type-C(USB-C)、その後、Thunderbolt 3へと充電を含む端子を集約させる方向へと向かう中、SDXCメモリーカードスロットを内蔵し、USB Type-Aを2ポート備えるMacBook Airは、MacBookの主流からはどんどん外れていったが、周辺環境のインタフェース移行はそう急速には進まない。世の中の動き全体からすると、「心地よい」環境だったといえる。

 あるいは、キーストロークが短い新設計のバタフライ構造キーボードではないことも、古くからのユーザーには慣れ親しんだ環境だった。

 しかしこの度、さまざまな要素が出そろったところで、MacBook Airは、Appleが近年「MacBook Pro」に対して施してきた要素を盛り込み、最新のApple製品と「同世代」に肩を並べるようになったわけだ。

 先に結論を書いておくが、多くの人が心配しているだろうプロセッサのパフォーマンスに関しては、動画編集や3Dを駆使したゲームを快適に遊びたいといったニーズがなければ、さほど気にすることはない。体感的な速度は人それぞれだろうが、読み出しが高速なSSDの助けや、意外に高速だったプロセッサ性能もあって基本的な応答性はよいと感じた。

 なお、新モデルでの更新は多岐にわたっており、従来のMacBook Airを好むユーザー向けに、廉価な価格設定(税別9万8800円から)のまま、旧モデルも併売される。

MacBook Air 廉価な価格設定のまま、MacBook Airの旧モデルも併売される。写真右は、筆者所有の旧モデル(2010年のCore 2 Duo搭載モデル)

新しいMacBook Airを的確に捉えるための視点2つ

 今回筆者が試用したMacBook Airは、ベースラインとなる8GBのメインメモリ、128GBのSSDを搭載したモデルで、色はゴールド。Appleのゴールドは世代ごとに色味が変化しているが、今回のMacBook Airは「Apple Watch」のアルミニウムケース版と同系統と思われる、やや赤味が強いものだ。

 なお、新しいMacBook Airに採用されるプロセッサは1種類のみなので、処理能力などについてはどのモデルを選んでも変わらない。カスタムオーダーでメインメモリを16GB、SSDを最大1.5TBに増量できることを除けば、カスタマイズの選択肢もほとんどない。

 「ではその性能とは?」ということで、プロセッサの能力に注目が集まるところだが、その前にMacBook Airが全体のラインアップの中で、どのような位置付けなのかを、2つの視点で整理しておきたい。

意外にも近い、13.3型MacBook Proとの距離感

 1つ目の視点は、画面サイズが同じ13.3型MacBook Proとの違いだ。

 まずはサイズ感と重さ。実物を見れば分かるが、幅と奥行きのサイズは0.1mm単位で13.3型MacBook Proと同じ、304.1×212.4mmだ。画面サイズも同じで画素数(2560×1600ピクセル、227ppi)も同じ。発表会では周囲に比較するものがなかったが、実物を手にして机の上に置いて使い始めてみると、まるでMacBook Proのように錯覚を覚えるほどだ。

MacBook Air 304.1(幅)×212.4(奥行き)mmのサイズは、0.01mm単位で13.3型MacBook Proとぴったり同じだ

 キーボードをたたき始めると、全く同じコンポーネントながら、異なる押下音と微かなタッチの違いは感じるが、これは筐体の違いからくるものだろう。どちらがよい、悪いという話ではない。ほぼ同じと考えていい。

 ただし、トラックパッドは少しだけMacBook Airの方が、横幅が短い。実際に持ち替えて使っても気にならない程度の差ではあるが、恐らくバッテリーを収める場所を確保するためだろう。左右およそ10mmずつほどだと思うが(手元にMacBook Proがないため正確な数字は分からない)違いがある。

MacBook Air キーボードの使用感は、13.3型MacBook Proとほぼ同じ。トラックパッドは少しだけMacBook Airの方が、横幅が短い

 MacBook Airのアイデンティティーともいえるパームレストにかけてスラントした本体形状がこうした違いをもたらしているが、中身の構造、レイアウトはとてもよく似ている。ただし、搭載するプロセッサの熱設計の枠が大きく異なるため、エアフローは変えられている。

 MacBook Proにはある筐体底面横の大きなスリットがなく、まわりをぐるりと眺めていても、そこに吸気口と思しき場所は見つからない。使用していても、高負荷をかけなければファンが動くことはなく、まるでファンレス機のような錯覚を受ける。

 高負荷時に、ヒンジ部の裏に隠れている開口部の温度を計測したところ、左右で4度の違いがあり、画面に向かって左の方が高かった(室温25度で計測)。主な熱源(プロセッサ)は中央にあり、キーボード奥の中央が熱くなるのは両者とも同じだ。キーボードの操作への影響は軽微なので、熱が使用感を損ねる心配はしなくていいだろう(詳しくは後述)。

 15%薄くなったとされる厚みだが、比較対象はあくまで旧型MacBook Airだ。旧モデルは厚さ3〜17mmのくさび形状だったが、新モデルは厚さ4.1〜15.6mm。筐体の幅は約21mm、奥行きは約15mm短くなっているため、ボリューム感もかなり減っている。

 ただし、13.3型MacBook Proは厚さ14.9mmと、実は新しいMacBook Airの最厚部よりも薄い。MacBook Proの筐体はくさび形ではないため、全体のボリューム感はMacBook Airの方がコンパクトに感じるが、意外にもMacBook Proは小さいのだ。

 新しいMacBook Airの重さは約1.25kg。内蔵バッテリーの違い(MacBook Airが50.3Wh、MacBook Proが58Wh)や冷却機構が複雑なこともあって、13.3型MacBook Proの方が120gほど重いが、冷静にこの2台を使い比べてみると、キーボードを含めて極めて近い製品だとあらためて感じている。

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