レビュー
» 2018年11月07日 14時15分 公開

iPadルネサンス――文芸復興を目指した新しい「iPad Pro」 (1/3)

全てが新しくなった「iPad Pro」は、どこ一つをとっても新鮮な驚きに満ちた製品だ。その魅力を林信行氏が解説。「あの男の復活を感じた」(林信行)

[林信行/撮影協力:maruni tokyo,ITmedia]

 ネットでは既に「iPad Pro」に関するレビュー記事がたくさん掲載されている。残念ながら筆者は、今回の新製品発表会に参加できなかったため、レビューも後発、こちらは製品を触り始めてから1日未満、あまり深い感触まで確かめきれていない状態でのファーストインプレッションの記事となることをあらかじめ注意しておきたい。

 「全てが新しくなったiPad Pro」は、どこ一つをとっても新鮮な驚きに満ちた製品なので、そこを中心にまとめてみたい。

5mm幅の断面に表れたデザイナーの復活

 まん丸で、机の上をころころと転がってしまっていた、かつての「Apple Pencil」。その一方を断ち落として幅5mmの断面をつくり、そこに磁石を内蔵。本体に吸着して持ち歩けるようにするだけでなく、吸着することで本体とのペアリング設定が完了し、さらに充電もできる。しかも、この断面のおかげで机の上を転がることもなくなり、しかも、隅には高級感を感じるエンボス加工で「Apple Pencil」のロゴ。

 この5mm幅の断面を見て、AppleのChief Design Officerであるジョナサン・アイブの復活を感じた。同氏は、これまでFoster+Partnersとともに、Apple最大の作品ともいわれる新社屋、Apple Parkのデザインに忙しかった。

 そういえば、アイブがAppleの社員になって最初に手掛けたのは「Newton MessagePad 110」という製品だ。付属のペンを収納する画期的なデザインを用いたことで、入社するやいなやデザイン部門を率いるリーダー的な立場になった。

 付属のペンを、本体にマグネットでくっつけるアイデアは新しくないかもしれない。しかし、その作られ方や機能の集約の度合いがすさまじい。

 他製品のマグネット吸着型スタイラスペンだと、いかにも電子機器といったスタイラスの片面に「ここに磁石が入っています」と、分かりやすい別のパーツが追加されたような外観だが、新Apple Pencilはほぼ単一素材。そもそもこの中にどうやって電子基板を挿入したのか想像がつかない。しかも、そこに作られた5mm幅の断面に、収納(マグネット吸着)、ペアリング、充電、“ころころ”防止、さらには製品ブランディングとこれだけの機能を集約させている。

新Apple Pencilはボタンが一切ついていないにもかかわらず、チョンチョンと人差し指でノックすることでツール切り替えなどの操作ができる

 これが可能なのは、製品のどんなディテールに対しても膨大な議論を重ねたからこそで、それこそが本来のAppleが持つ工業デザインに対する姿勢である。製品デザインに興味がある人には必見のドキュメンタリー映画「Objectified」を見た人であれば、外からは見えないたった1個の電子基板にすら、耐荷重や放熱など7つくらいの機能を持たせるまで議論をして物を作っていると知っているはずだ。

 新iPad Proのパシっとたち落とされた4つの側面の引き締まった感じや、それでいて優しさを感じさせる4隅のアール(丸み)。アンテナの機能を持たせた樹脂のラインを、まるでadidasのライフスタイル製品のように製品の見た目を引き締めるためにあしらう使い方、さらには今日のAppleを象徴する100%リサイクルの素材(アルミ)選びなど、この製品と、ここしばらくのiPadとの間には製品のデザインに隔世の感がある。

 引き締まったのはデザインだけではない。本体の大きさもしかりだ。

 今回、貸し出しを受ける前に簡単な製品概要説明があったが、そこで見せられたiPad Proが11インチ版か12.9インチ版かすぐに分からなかった。

 以前の12.9インチモデルは画面も本体も見るからに「巨大」だったが、新12.9インチは、画面サイズはそのままに、ボディーのサイズを液晶画面の外周に合わせてキュキュっと小型化し、ビックリするくらいに見た目の印象が小さくなった。

 最初は「買うのは絶対に11インチ」と思っていたが、実物を見たら「12.9インチもありかも」と思えてきた。少なくとも、これまでの12.9インチと比べて持ち歩くカバンの制約は減りそうだ。

 ただ、40gほど軽量化されたとはいえ、まだ重さは約633g。iPad Proを机に置いた状態での作業が多い人は、12.9インチでもいいかもしれないが、手に持ったまま使うことが多い人は、やはり11インチモデルが向いているかもしれない。

 ちなみに11インチモデルは、2017年に登場した10.5インチモデルの持ち歩きやすいサイズ感を小型化するのではなく、本体サイズはそのまま保って画面サイズの方を対角で0.5インチ大きくしている、というのも今回の製品の何とも面白いところだ。

 なお、今回貸し出しを受けたのは12.9インチモデルのみなので、以下は12.9インチモデルのインプレッションとなる。

製品パッケージも本体のサイズをピッタリ生かした魅力的なスタイルに。なお、ヘッドフォン端子がなくなった関係で、新たにUSB Type-Cヘッドフォン端子アダプターの別売りが始まっている
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