iPadルネサンス――文芸復興を目指した新しい「iPad Pro」(2/3 ページ)

» 2018年11月07日 14時15分 公開

iPad独立宣言:もはやパソコンへの遠慮は無用

 2010年、故スティーブ・ジョブズが、スマートフォンともPCとも異なる新しいカテゴリーのデジタル製品として発表したiPadは、その後、農林水産業やスポーツ業界、ファッション業界など、それまでの「PCによるIT革命」の恩恵が少なかった領域に大きな革命をもたらした。しかし、その使われ方は、やや「情報・映像ビュワー」的なものが中心で、それはこの製品カテゴリーがブレークスルーを起こす上での障壁となっていた。

 先日、友人がFacebookに「iPadでKeynoteのスライドを作っているか?」と質問を投稿したが、私を含めほとんどの人は「Macでスライドを作り、iPadは表示だけ」という答えだった。

 iPadは、スリープから瞬時に復帰して、すぐにきれいな画面いっぱいに情報を表示し、インターネットにも接続できる道具として、新しい情報体験を切り開いた。キーボード一体で、「いかにも仕事道具然」としたPCとは違ったスタイルの情報革命を広げるのに確かに大きく寄与した。

 しかしその一方で、情報や作品、コンテンツを「製作する」「作り込む」という使い方においては、まだ「何か」が物足りなく、その点でPCに依存せざるを得ない状況だった。

 新iPad Proは、その欠けていた「何か」にAppleが初めて真剣に向き合い、iPad Proを本格的な製作の道具として踏み出させた製品だと思う(その過程で行われた2年以上に及ぶ試みは先日、別の記事でまとめた。関連記事:Apple新製品イベントの前に知っておきたい2年以上にわたる取り組み)。

 そういえば、iPhoneも昔はPCなしでは成立しない製品だった。PCなしではそもそも初期設定ができなかったのだが、ある時から単体で初期設定できるようになり、その後、PCが全く不要になったのを思い出した。

 新しいiPad Proは市場に存在するノートPCの92%よりも動作が速く、処理性能でも製品価格でもノートPCに“遠慮”をしなくなった。Lightning端子の代わりにUSB Type-C端子を搭載し、外部ディスプレイやメモリカードが普通に使えるようになった点も、新iPad Proがサブ機ではなくPCに代わる道具となり始めたことを物語っているのかもしれない。

 そしてこの新しい道を歩む上で、iPadが一番獲得しなければならなかった利用法が、コンテンツの製作、つまり文章を書いたり、絵を描いたり、写真を加工したり、負荷のかかるビデオ編集やARコンテンツを作るための利用法だったのではないかと思う。つまりiPad Proは、iPadの上で文芸を復興させる「デジタル時代のルネサンス」を目指した製品ではないか、というのが筆者の見立てだ。

電源アダプターがついに変更。端子もUSB Type-Cになり、付属ケーブルもUSB Type-Cに変わった。Lightning変換アダプターを別途購入すればIPad ProをiPhone用のモバイルバッテリー代わりに使えるのもちょっとした魅力

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー