メガネ、PC、プロゲーマー ――3つの「最高」はどんな化学反応を起こすのか

» 2018年11月13日 07時00分 公開
[岡安学ITmedia]
Think Lab内の「e-Sports pro player activate room」で集中力を発揮するCrazySam選手

 メガネ型デバイス「JINS MEME」を開発し、集中力を高めるための施策を行っているメガネメーカーJINS。最近では本社が入居する飯田橋グラン・ブルームに「Think Lab」というシェアオフィスを展開し、集中力を高める職場環境を提案しています。しかし、このシェアオフィスを利用するのはオフィスワーカーだけではありません。

JINSのシェアオフィス「Think Lab」

 JINSはeスポーツチーム「SunSister」とスポンサー契約を交わし、eスポーツプレイヤーの集中力を高める場として、Think Lab内に「e-Sports pro player activate room」(アクティベートルーム)を新設しました。eスポーツプレイヤーの高い集中力を最大限に引き出しつつ、彼らの集中力の源やeスポーツとの相関関係を研修する実証実験の場としても役立っています。

 アクティベートルームに設置されているゲーミングPCは、パソコンSHOPアークの提供によるもの。選手の要望を基に、eスポーツに用いられるゲームでも快適に動作するハイエンド仕様です。

 JINS MEMEが研究する集中、eスポーツ選手が発揮する集中、その環境作りとしての集中できるPC作り――これら3つが融合した、珍しい取り組みについて、それぞれを代表する方々にお話を伺ってきました。

アクティベートルームを背後に手を取り合う、SunSisterのCrazySam選手、パソコンSHOPアークの浦田優樹氏、JINSの渡辺寛紀氏(左から順に)

JINSが提供する「最高」の集中環境

 JINS MEMEは、眼電位、加速度、ジャイロという3つのセンサーを搭載するメガネ型デバイス。これらのセンサーからユーザーの集中やリラックスの度合いをデータ化できます。仕事や練習を行っている間の集中力の可視化・改善を行うアイテムとして、一定の評価を獲得してきました。

 そんなJINS MEMEを、高い集中力が必要となるeスポーツプレイヤーに使ってもらうことで、より効率的な練習を提供できるのではないかと考えたと、JINS MEME事業部プロデューサーの渡辺寛紀氏はいいます。

JINS MEMEを持つ渡辺氏

 「eスポーツに自分たちも関わり、何か役に立ちたいと考えていましたが、単純にスポンサーとして投資をするのではつまらない」――渡辺氏は「お金を渡すだけの関係」ではなく、「一緒に盛り上げていく」という立場でありたいといいます。

 「われわれができること、普段作っているもので何か協力ができないかと考えていました。そこでJINS MEMEを提供することにしたわけです。フィードバックとしてプロプレイヤーが使用したJINS MEMEのデータを回収させていただいていますので、ある意味、こちらが協力してもらっているともいえます」(渡辺氏)

 さらに、「最も集中できる場所」として銘打っているThink Labとのコラボも展開し、スポンサー契約をしているeスポーツチームの「SunSister」と「JUPITER」のための練習場・動画配信スペースとしてアクティベートルームを立ち上げました。

 「オフラインで顔を合わせて練習できる施設はeスポーツチームにとって重要な存在です。SunSisterのPUBGのチームのほとんどは地方在住なので、頻繁に練習に来られるわけではないですが、大会が近かったり、合宿が必要な場合には利用価値が十分にあります」(同)

 渡辺氏は、集まって練習する場にもさまざまな選択肢がある中で、ThinkLabのメリットを次のように話します。

 「いわゆるゲーミングハウス的なものも考えましたが、練習場として通うことにより、生活と練習を切り離すことでメリハリを付け、練習時に高い集中力を発揮できるようにと考えています。生活と同一になってしまうと、練習時の集中力が続かなくなる上、意思が強くないと生活に飲み込まれてしまう可能性もあります」(同)

 「JINSとしてはJINS MEMEとThink LabのPRとしてのスポンサードではありますが、それ以上に『メガネ屋でも、いろいろなことがやれるんだ!』というところをアピールしていきたい」と渡辺氏は語っています。

アークが提供する「最高」のPC

 アクティベートルームにゲーミングPCを提供するパソコンSHOPアーク システム開発担当の浦田優樹氏によると、もともとアークとSunSisterは6年ほど前からPCの提供など協力関係にあったといいます。

 「そんな中、JINSから誘われてアクティベートルームの展開に協力することを決めました」と浦田氏。

パソコンSHOPアークの浦田氏

 「JINSとも以前からお付き合いがありましたが、JINS MEMEと言う興味深いことをやっているのが気になっていました。『エナジードリンクを飲んでも15秒くらいしか集中力が持たない』とか、面白い研究をやっていて。JINSがeスポーツに協力するというのであれば、こちらも是非やりたいと思いました。これまではショップで販売しているPCを提供しているだけだったんですが、せっかくであればコラボモデルとして、選手が求めるPCを提供したいと考えました。もちろん、コストなどの制約もあるのですが、できるだけ選手が快適にプレイできる環境を提供したいと思っています」(浦田氏)

 JINS MEMEと協力することになったのち、アクティベートルームへPCを供給することになったアークですが、これを機に提供するPCを刷新することになったといいます。さらに、せっかくPCを新しくするのであればと、以前からやっていた選手とのコラボモデルも考え、提供していくこととなりました。

 PCショップからの提案に、選手も忌憚なき意見として要望を出しており、最高の結果を出すために、最高のプレイ環境をアークに望みます。

最高の環境でプレイできる「最高」の選手

 PUBGの複数の国内大会で優勝経験を持つSunSisterのCrazySam選手は、eスポーツに求めるPCスペックについて次のように説明しています。

CrazySam選手

 「6年前にチームが力を入れていたタイトルは『Alliance of Valiant Arms』(AVA)でしたが、今は『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(PUBG)をメインにしています。なので、求めるスペックもタイトルによって変わってきます。PUBGはスペックを要求してくるゲームなので、できるだけハイスペックのPCであることが望ましいですね」(CrazySam選手)

 「プレイしていて一番気になるのが、画面のかくつきです。大会で使われる機材に近しいもの、もしくはそれ以上の環境で練習ができれば良いです。練習のときの方が、環境が良いと大会で物足りなくなってしまいそうですが、現状だとそこまで感じたことがないので、欲をいえばスペックは高ければ高いほど良いですね」(CrazySam選手)

CrazySam選手の要望を聞き取る浦田氏

 また、アクティベートルームでは、プロ選手の練習の場としてだけでなく、動画配信の部屋も用意されており、選手やストリーマーによる配信も行っています。

 「大会で結果を出すのは最重要課題なのですが、チームとしてはそれだけでは済みません。大会がない普段の日の配信も重要です」と説明するのは、SunSisterマネジャーのJohnDoe氏。

SunSisterビジネスマネージャーのJohnDoe氏

 「SunSisterは、大会に出る選手だけでなく、動画配信を担当するストリーマーもいます。ストリーマーの方たちにもPCスペックについて聞きましたが、やはりハイスペックのPCを望んでいましたね。プレイするにしても、配信するにしても。また、コラボPCで使われているいるパーツは、SunSisterとスポンサー契約しているメーカーのものなので、そういった意味でもSunSisterのコラボモデルといえるのではないでしょうか」(JohnDoe氏)

 アークは、今回のコラボPCを店頭でも販売することを決定。プロ選手による監修PCとなれば、プロを目指す人にとっては見逃せないPCであることは間違いないでしょう。単純に現在入れ込めるだけのハイスペックマシンではなく、しっかり選手のフィードバックを受けての製品となっているのが、名前貸しではない本当のコラボPCとなっているわけです。また、作りっぱなしにならないよう、ファンミーティングなども開催し、選手によるサイン会なども企画検討していくとのこと。

3つの「最高」による相乗効果に期待

 最高の環境で、最高の選手が、最高のPCを使用することで、どんな結果がもたらされるのか。その結果によっては、JINS MEMEがeスポーツ業界に新風を吹き込むことになるかも知れません。JINS MEMEとSunSister、アークの展開するe-Sports pro player activate roomの今後が楽しみです。

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