Zen 2+Vega(7nmプロセス)=第3世代Ryzen Mobile

» 2020年03月17日 18時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 AMDは、2020年第1四半期(1〜3月)から順次、第3世代の「Ryzen Mobile Processors with Radeon Graphics」(以下「第3世代Ryzen Mobile」)を投入している。

 CES 2020で初めて披露された第3世代Ryzen Mobileだが(参考記事その1その2)、そのアーキテクチャ(設計)の詳細が明らかとなった。

第3世代Ryzen Mobile
アーキテクチャ図 第3世代Ryzen Mobileのアーキテクチャの概略図

Zen 2+Vega=第3世代Ryzen Mobile

 CES 2020の発表会のプレゼンテーションにもあった通り、第3世代Ryzen MobileのCPU部分は7nmプロセスの「Zen 2アーキテクチャ」に基づいている。

 Zen 2アーキテクチャでは、CPUコアとCPUキャッシュを一体化した「CCX(Core Complex)」を各種入出力を担う「I/Oダイ(Infinity Fabric)」と連結する構造を取っている。第3世代Ryzen Mobileでは用途に合わせてCCXを最適化し、4コア8スレッドの製品では4基のCPUコアを備えるCCXを2つ搭載して、1つのCPUを構成している。

Zen 2 Zen 2アーキテクチャの概要
モバイル向け 第3世代Ryzen Mobileでは、CCXの構造をモバイル向けに最適化している

 一方、CES 2020の発表会ではハッキリとしなかったGPU部分は、「7nm Vega」であることが明らかにされた。

 ここでいうVegaは、「Radeon RX Vega」シリーズのこと。つまり、第3世代RyzenのGPUコアは、最新世代である「RDNAアーキテクチャ」の1世代前である「GCN(Graphics Core Next)アーキテクチャ」だ。

 7nm Vegaは、GCNアーキテクチャのGPUコアを14nmプロセスから7nmプロセスに微細化し、CPUとGPUを統合した「APU」に搭載できるように再設計したものとなる。前世代のAPUが備えるGPUと比べた場合、3DMarkの「Time Spy」(DirectX 12ベース)テストの結果がCU(演算ユニット)1基当たり最大で52%改善するという。

7nm Vega GPUコアの概要。Radeon RX Vegaに搭載されていたGCNアーキテクチャのコアを微細化した上でAPUに搭載できるように再設計されたものだ

メモリや入出力回りも改善 消費電力も低下

 第3世代Ryzen Mobileでは、メインメモリの帯域幅や入出力回りの改善も図られている。

 メインメモリは「DDR4-3200(PC4-25600)」または「LPDDR4x-4266」までサポートできるようになった。これにより、メモリへのアクセススピードの改善が期待できる。

 APUではグラフィックスメモリをメインメモリ領域から確保する。メインメモリのアクセススピードが向上することによって、GPUのパフォーマンス改善も期待できる。

メモリ速度改善 メインメモリの最高対応速度が向上した。特にグラフィックス回りのパフォーマンスアップに効果を発揮するものと思われる

 PCI Expressのレーン(伝送単位)は4つ増えている。これは、NVMe SSD、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)や5G(第5世代移動通信システム)モデムなど、伝送容量の大きなデバイスを複数利用する際のパフォーマンス改善につながる。USB接続するデバイスが増加していることから、USBポートも2基増やしている。

I/Oの強化 昨今のノートPC事情を考慮して、PCI Expressのレーン数とUSBポート数を増やしている

 映像出力コントローラーも一新した。新しいコントローラーは、2基のUSB Type-Cポート(DisplayPort出力)から4K(3840×2160ピクセル)の映像をそれぞれ出力できるという。

映像出力 2つのUSB Type-Cポートから、2枚の4K映像を出力できるとアピール。スライドを見る限り、「Thunderbolt 3(USB4)っておいしいの?」と主張しているようにも思える

 CPUコアとGPUコアの微細化に加えて、チップ内のさまざまな機能をI/Oダイで直結し、電力制御を改善した結果、第2世代Ryzen Mobileと比較して消費電力を最大で20%削減できたという。

消費電力 前世代と比較して、消費電力は最大で20%削減できるという

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