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» 2012年03月15日 17時54分 UPDATE

Mobile IT Asia:“5年で25倍”のデータトラフィック、どうさばく?――KDDIの戦略を嶋谷氏が説明

スマホ移行で爆発的に増えているデータトラフィックをどう収容していくのかは通信キャリア共通の課題だ。KDDIの嶋谷吉治専務は、「Mobile IT Asia」で同社の戦略を紹介。宅内向けWi-Fiスポットの提供効果などを明かし、データオフロード対策に自信を見せた。

[山田祐介,ITmedia]
photo KDDIの取締役執行役員専務 嶋谷吉治氏

 「着実にデータオフロードを実現している」――。東京ビッグサイトで開催中の「Mobile IT Asia」で、KDDIの取締役執行役員専務 嶋谷吉治氏が、同社のトラフィック対策について講演した。ネットワークの効率化やLTEのロードマップなどに加え、現状のトラフィック対策の効果にも言及。「HOME SPOT CUBEの配布で、4割ぐらいのオフロード効果があった」と、無線LANによるデータオフロードの手応えを語った。

5年で25倍のデータ通信増が「コンサバティブな予測」

 フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが進む中、KDDIユーザーのスマートフォン比率も急速に高まっている。同社の稼働端末におけるスマートフォン比率は、2011年9月末に9%だったのが、12月には早くも15%に増加。販売比率もすでにスマートフォンが5割を超えている。こうした中でデータトラフィックも爆発的に増えており、2010年末から11年末の1年間で約3倍に膨れ上がった。2010年度〜2015年までにデータ量は25倍にまで増えると嶋谷氏は予測し、「これでもコンサバティブな予測」と念押しする。


photophoto データトラフィックは加速度的に増加している
photo スマートフォンではストリーミングの利用比率が高く、データ通信全体の約半分を占める。さらのこの中の約半分は、YouTubeの利用だと嶋谷氏は説明する

photo WiMAX対応スマートフォンの提供も1つのオフロード策だ

 こうした課題に対応すべく、同社が進めるのが「3M戦略」だ。3Mは、マルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースのこと。トラフィック対策に寄与するのは、この内のマルチネットワーク戦略となる。同社はグループのネットワーク資産を生かし、3G、LTE、WiMAX、Wi-Fi、FTTH、CATVといったさまざまなネットワークを連携させていく考え。これにより、快適な通信環境を提供しつつ、データオフロード、トータルネットワークコストの低減を図っていく。


photophoto マルチネットワークを競争力の源泉としながら、マルチデバイスやマルチユースの施策を進めていくのが同社の戦略だと嶋谷氏は話す
photo ビット単価の安い3G以外のネットワークも駆使することで、ネットワークコストの低減が可能という

 3Gネットワークの効率改善も進めており、4月からは「EV-DO Advanced」を導入する。これは、隣接する基地局同士が連携し、混雑エリアの端末を混雑していない隣接基地局に接続する技術だ。データの収容力が約1.5倍になり、ユーザーの体感スループットは「2倍程度になる」という。

 さらに2012年12月からは、3Gよりも電波利用効率にすぐれたLTEサービスを開始する予定だ。LTEは「他社に比べ提供が遅れた」が、「その分、人口カバー率70%を最初から実現し、ロケットスタートする」と嶋谷氏。新800MHz帯と1.5GHz帯で、それぞれ10MHz×2帯域幅を使ってサービスを開始する。音声は3G(1X)の技術でまかなうが、将来的にはVoLTEも検討しているという。ゆくゆくは2GHz帯もLTEにシフトし、さらに収容力を高めていく考えだ。


photophoto LTEで待ち受けし、通話時には1Xに切り替わるCS Fallbackを採用する(写真=左)。LTEの電波が弱くなるとCDMA2000に自動で切り替わる機能も備える(写真=右)
photophoto ネットワークの障害や品質低下を自動で感知し、パラメーターの最適化を図るシステム「SON」をLTEとともに導入する(写真=左)。高い収容力が求められる都心などではマクロ局エリア内にピコ局を設置し、時間差利用で干渉を防ぎながら運用するHetNet技術を導入していく。これにより収容力を高められるという(写真=右)

 データオフロード策として各社が力を入れている無線LANアクセスポイントの設置についても言及した。同社では現在、「4種類」のWi-Fiアクセスポイントを使い分け、Wi-Fiエリアを広げている。屋外向けには、半径150メートル程度をカバーする“広域Wi-Fi”と、半径75メートル程度をカバーする“屋外Wi-Fi”を展開している。屋内向けには、店舗向けの“屋内Wi-Fi”、ユーザーに貸し出す“宅内Wi-Fi”を提供。ビームフォーミング技術でエリアを広げているほか、2.4GHz/5GHzの双方に対応することで、混雑しにくいメリットもあるという。

photo 夜にトラフィックがピークを迎えるエリアは、自宅利用が多い地域と考えられる。こうした場所では宅内Wi-Fiでオフロードを進める。昼間などにトラフィックが増えるエリアもあり、こうした場所には公衆Wi-Fiを積極的に展開していく
photo 家庭向け無線LANアクセスポイント「HOME SPOT CUBE」を提供したユーザーは、3Gの通信量が約4割低下した

 公衆Wi-Fiはすでに8万スポットを設置済みで、3月末には10万スポットに達する予定。家庭向け無線LANアクセスポイント「HOME SPOT CUBE」を2月14日から提供を開始しており、提供したユーザーの3Gデータ通信量は平均で38%低減したという。同製品はスタイリッシュなデザインやワンプッシュの簡単設定が特徴で、Wi-Fiの設定を難しく感じるユーザーにも使いやすいと嶋谷氏は説明する。結果的に「4割ぐらいのオフロード効果があった」ことを踏まえ、「着実にデータオフロードを実現している」と自信を見せた。

 Wi-Fiをスマートフォンで利用すると、「すぐにつながらない」「電池の消費が激しくなる」といった課題も出てくるが、同社はこれらの問題を改善中だ。夏モデルでは接続に10秒かかっていたのを、秋冬モデルからは5秒程度にまで短縮。また、電波をサーチするインターバルを調節し、電力消費を2分の1に削減した。さらに、Wi-Fiに接続したユーザーに抽選でプレゼントを贈るキャンペーンなども展開し、利用者を増やそうとしている。

photo 端末側の改善も進めている

 このほか講演で嶋谷氏は、同社の災害時のサービス体制の強化についても説明した。同社は東日本大震災を受け、災害時体制の見直しを図り、可搬型発電機を130台に、車載型基地局を20台に、可搬型基地局を新規に27台導入するなど、各種の設備投資を行った。基地局のバッテリー長時間化も図り、2012年度末までに約2000局の基地局が24時間以上稼働できるバッテリーを搭載する。こうした取り組みを通じ、広域災害時にもサービスを提供できる体制をさらに強化していく。

photophoto インフラの増強に加え、ユーザー向けの音声お届けサービスなどにも取り組んでいる

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