2020年東京五輪はバイオジェット燃料で空を飛ぶ自然エネルギー

経済産業省は、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けバイオジェット燃料での航空機のフライトを実現するために「導入までの道筋検討委員会」を設置した。きょう2015年7月7日に第1回会合を開催する。

» 2015年07月07日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 バイオ燃料は、再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料に作られた燃料のことだ。燃焼する時には二酸化炭素(CO2)を排出するが、原料となる作物が成長する過程で二酸化炭素を吸収するため、CO2排出量がないものとされ、再生可能なエネルギーの1つとして注目されている。

 航空機業界では、世界的にCO2削減への取り組みが強くなる中、バイオ燃料への取り組み強化が進んでいる。実際に、ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)が、2020年以降の航空温室効果ガス削減対策として、バイオ燃料の利用を促進している(図1)。

 国内では2009年の日本航空に続き、2012年には全日本空輸と日本貨物空港が試験飛行を実施。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて本格運用を計画中だという(関連記事)。

photo 図1:ICAOの2050年までのCO2削減の取り組み(クリックで拡大)※出典:ICAO(定期航空協会資料より抜粋)

 そのため、多くの航空会社が導入を実施・検討しており、国内企業もバイオジェット燃料の研究開発を進めているところだ。2025〜2030年をめどに生産技術の確立を目指している。

 国内では藻類バイオマス技術を利用してバイオジェット燃料を合成する事業開発が進んでいる。JX日鉱日石エネルギーと日立プラントテクノロジー、ユーグレナの3社は2010年からユーグレナ(ミドリムシ)を利用したバイオジェット燃料の要素技術開発を開始した。ユーグレナは米国で航空機向け次世代バイオ燃料の実現に向けた研究を開始しており、2020年の実用化を目指しているという(関連記事)。

 また、IHIなど3社は2013年にA重油と似たバイオ油を作りだす屋外培養試験プラントの技術開発に成功している(関連記事)。

 これらの動きを受けて、国土交通省および経済産業省では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいてバイオジェット燃料でのフライトを実現することを目標として検討委員会を設置する。検討するべき課題を明らかにするとともに、今後の検討体制について関係者間で確認し、今後のバイオジェット燃料導入の道筋を描く。きょう2015年7月7日は第1回会合が開かれる。

 現在、主な検討内容として想定されているのは以下の3つのポイントだ。

  1. 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けたバイオジェット燃料によるフライト計画
  2. バイオジェット燃料の供給環境整備
  3. 国産バイオジェット燃料生産の見通し

 さまざまな後押しはあるものの、航空機燃料には、安全に運航できるように厳しい基準が課せられており、さまざまな認証をクリアすることが必要になる。今後はこれらの高難度の認証を超え、安全性を実現するとともに、コスト効率の高い燃料を開発することが、実用化への課題となってくる。

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