裏金問題と同じく、生成AIでもお金の問題は避けられません。多額の投資に対する費用回収は、以前から問題視されています。その影響かChatGPTの新モデル「ChatGPT Pro」が発表されたものの、月額料金が約3万円(200ドル)で話題になりました。
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従来の有料プランの10倍かつ円安の影響もあって、日本の利用者からは「インバウン丼」と同じように「高すぎる」「一部の人しか使えない」という意見も挙がりました。さらに従来の有料版プラン(ChatGPT PluS・20ドル)でも日本の利用者に対して消費税の徴収が告知されており、お金の動きが騒がしくなったのは否めません。
お金の動きでは「新紙幣」によってお札の顔ぶれが一新されたように、生成AI界隈でもChatGPT以外に新たなツールが多数登場しました。それでもChatGPTは他のツールで実装された機能を追加するなど、一強体制を固辞しようとしています。
ChatGPTは機能追加だけでなく基本性能も向上を続けており、新AIモデル「o1」では数学や物理において専門家以上の性能を発揮しています。一方で古いモデルである「GPT-3.5」が廃止されたことで、利用者からは不満も聞かれます。
紙の保険証が「マイナ保険証」で1本化されるように、古いものが無くなれば反発が出るのは避けられません。今後も機能追加によって新モデルと旧モデルが混在しており、いつ提供が終了するかは分かりません。利用者が増えて依存度が高まり、値上げされても使わざるを得ないのはVMwareだけではありません。今後はChatGPTの中長期的な利用が可能かどうかが注視されるでしょう。
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パリオリンピックで陸上競技女子やり投げで金メダルを獲得した北口榛花選手は「名言が残せなかった」と発言しました。金メダルという結果よりも、発言と話題性が注目されるのは時代を表現しています。
生成AIが話題になっている反面、実際の成果はまだまだ限定的です。将来において生成AIブームが「令和の米騒動」のように世間が大騒ぎしたわりに大したことはなかったと総括される可能性すらあります。
生成AI各社の発表にSNSで驚くばかりでなく、現実社会と働く会社で成果を出さなければ、生成AIはかつての第三次AIブームのように話題になっただけで何も残らなかったと言われかねません。「8番出口」のようなわずかな異変ではなく、目に見えて大きな変化が求められます。
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生成AIの進化は止まらず、12月には「もうええでしょう」とばかりにOpenAIは12日間連続でChatGPTに関する新発表を行いました。最終日には新たなAIモデルとなる「o3」を発表して、AGI(汎用人工知能)に最も近い性能をアピールするほどです。
しかし競合であるGoogleも「戦争やってんだよ、俺たちは!」と自社の生成AIであるGeminiにおける新発表をぶつけるなど、熾烈な抗争を繰り広げています。とはいえ怒濤(どとう)の発表に驚くだけでは意味がありません。「驚くだけ」「反省だけ」なら猿でもできます。25年に人間がやるべきことは、生成AIを活用して成果を出すために考えて実行することでしょう。
22年10月の登場以来、ChatGPTは23〜24年に渡って生成AI界隈において話題の中心であり続けてきました。同じく23年と24年のM-1グランプリでも、令和ロマンが史上初の2連覇を達成しました。
漫才師の高学歴化も注目されており、優勝した令和ロマンはどちらも慶應、最終決戦に進出した真空ジェシカは慶應と青山学院を卒業しています。令和ロマンにおける高学歴ならではネタ作りとして、情報を集めて分析を繰り返す手法も知られています。
同様にOpenAIとGoogleも世界中から高学歴を集めて開発競争を繰り広げていますが、M-1で最終決戦に進出したバッテリィズのようにアホなエピソード(健康診断で問診票を渡されたら結果が分かったと誤解した)から始まる新たな漫才も登場しています。王者のChatGPTが「終わらせよう」としても、生成AI界隈における新たなプレイヤーの登場が期待されます。
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もはやOpenAIとGoogleの開発競争は、令和の反社会的勢力ではなく昭和の暴力団をほうふつとさせる抗争です。流行語大賞に選ばれた「ふてほど(不適切にもほどがある)」は、昭和のバブル時代から令和にタイムスリップするドラマです。主人公による昭和では当たり前だった言動は、令和においてコンプライアンスに引っ掛かる「不適切」なものです。同様に、分野によっては生成AIの活用に対して「不適切」との批判が浴びせられることが少なからずありました。
しかし新しいものが登場すると反発を生むのは過去から繰り返されており、IT業界ではかつてのクラウドがそうでした。クラウドも当初は「セキュリティが不安」「外部にデータを保存できない」と反発がありましたが、普及が進んだ現在では金融機関の基幹システムや行政でも活用されています。
近い将来に生成AIが当たり前になれば、スマホと同じように無くてはならない存在になります。そのころには、24年は生成AIに対する賛同と反発が入り交じった過渡期と振り返られることでしょう。
もっとも、流行語“大賞”でありながら流行していない「ふてほど」が大賞に選ばれた違和感と同じく、世間の意見は細分化されています。国民全員が共通の話題で盛り上がることはなく、SNSによって個人の小さな意見すら大勢における主張のように扱われます。
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23年の流行語大賞は「アレ(A・R・E)」が受賞したものの、野球の話題ばかり選ばれると批判されました。同年に「生成AI」がトップ10に入ったものの、24年以降も世間で生成AIに注目して騒いでいるのは、まだまだ一部の人達だけです。生成AIが当たり前になるには、何をすれば良いのかを真剣に考えて実行に移すタイミングが25年の目標になるでしょう。
では最後に24年に大きな進化を遂げたChatGPTに聞いてみます。
人間の質問:
「大谷翔平選手と生成AIで、謎掛けを考えてみましょう」
ChatGPTの回答:
では、「大谷翔平選手」と「生成AI」のなぞかけをひとつ考えてみます。
大谷翔平選手とかけまして
生成AIと解きます。
その心は――
「どちらも “入力(投げ込み)” 次第で、とんでもない“打ち返し”を見せるでしょう!」
どうやら25年には、謎掛け芸人の仕事が無くなりそうです。
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