『忘れられた日本人』――古き村社会に学ぶマネジメント藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

民俗学者・宮本常一が、文字に残らない日本人の生きざまをまとめたのが『忘れられた日本人』。村社会と言うと閉じられた印象だが、うち(村)とよそ(世間)を行き来することで、村は発展を遂げてきたのだ。

» 2009年09月04日 12時00分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 民俗学者・宮本常一が、文字に残らない日本人の生きざまを全国行脚しながら発掘し、まとめたのが『忘れられた日本人』。イメージと違い、昔の日本人が自由闊達(かったつ)に生きながら、時代の変化に見事に適応してきた様がうかがえる。


うちとよその交流による自己変革

 村社会と言うと閉じられた印象だが、うち(村)とよそ(世間)を行き来することで、村は発展を遂げてきた。

 立場を離れて関係者が全員集まる「寄合い」にて、村の大事な意思決定を行なう。弁当を持ち込み、泊まり込みもして時には2日も3日も議論が続くという。その分、一度決まったことは全員が守る。子供が行方不明になるといった事件がおきれば、村中が黙々と辺りを探し回って解決を図る。

 意外に、昔の日本人は自由だった。どの村にも諸国を放浪していた「世間師」がいたもので、外の技術を伝えながら村自体の“リニューアル”に貢献した。女性であっても村しか知らないのは「世間知らず」。嫁ぐ前に諸国を数カ月放浪する行動力もあり、やはり外の情報を持ち帰っていた。

激変する環境に耐えられるか

 企業にせよ地域にせよ、人と情報を行き来させながら、自立的に変革を実現できていた。民主党による政権交代に期待もする。しかしその前に、環境適応を自律的に果たせるのか自分の組織を見つめ直してみたい。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1000冊超。


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