四輪自転車を考えた――計画マン、38年前の“夢”樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

筆者は、四輪自転車を所有している。四輪自動車ではない、自転車だ。この四輪自転車には、三井物産に入社した当時からの思い入れがあった。

» 2009年11月13日 22時20分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]
筆者所有の四輪自転車
こちらはスズキのフロンテSS。筆者が買ったのは色違いで、薄い青色だった

 筆者は、四輪自転車を所有している。四輪自動車ではない、自転車だ。この四輪自転車には、三井物産に入社した当時からの思い入れがあった。入社翌年の1972年、筆者は幸運にも住宅公団の買取分譲に当たり、新婚のヨメサンと入居した。場所は千葉だ。

 困ったのは渋滞である。その公団からバスに乗って、最寄りの駅に行くのは空いていれば15分ほどで行ける。行けるはずなのだが、常に渋滞していたので45分からひどい時は1時間以上もかかった。

 当時、筆者は渋滞を避けるためにスズキのフロンテSSという360ccの軽自動車(4人乗り)を購入した。確か薄い青色だった。同僚の鈴木君から中古だが10万円で購入したものだ。インドのタタが作った20万円の車に負けないコストパフォーマンスだった。小さなリスのような車だったが、実によく走ったものだ。

 筆者は成田街道(国道296号線)の渋滞を横目で見ながら、裏街道、裏道、田んぼ道、抜け道、掛け道を毎日走った。家を出てから7分以内に駅に着いたのだから、この差は大きかった。360ccの車でも、ぎゅうぎゅうに詰めれば大人が4人乗れたので、団地の高齢者たちを毎朝3人無料で駅まで運んでいた。

 抜け道を走りながら渋滞の車を遠くに見て、「このままでは車の渋滞とアイドリングの公害で、日本が自滅するのではないだろうか。何とか三輪自転車、四輪自転車を開発するべきではないか」との結論に達した。なぜ二輪の自転車じゃないのかというと、止まっても転倒しない、荷物が運べる、2〜3人で乗れる――などの理由だ。

 早速、三輪自転車と四輪自転車の研究に入った。38年前に書いた当時のノートには、電動アシスト自転車のコンセプトがあった。開発段階を表にすると以下のようになる。

段階 自転車
第1段階 完全人力四輪自転車
第2段階 電動補助人力四輪自転車
第3段階 電動四輪自転車

 三輪自転車の設計も進めた。その当時の筆者のノートは、自転車のスケッチが満載だ。まず自転車というのは、最高速度がどれだけ出るのかから調査を開始した。言っておくが当時の自転車には、シマノの18段変速ギアのような素晴らしいメカはない。平均時速は15キロから20キロ、最高時速でも30キロでればいい方だが、近所を走るにはこれで十分。

 人力を蓄えられないかと考え始め、フライホイールを使ってエネルギーを保存する方法を考えた。ホイールを超高速で回転させて、登坂時にパワーを使えないだろうか――というわけである。当時、太陽電池はまだ人工衛星ぐらいにしか使われていなかった。超高価だったからだ。その当時の意気込みが筆者のノートの詳細のスケッチにも見られる。38年後の公開である。



 当時の筆者は新婚だったが、10万円の中古自動車を維持するのに精いっぱいで、財政的に豊かではなかった。だから、三輪自転車、四輪自転車の実機の開発はできなかった。しかも1年後にアフリカに駐在員として出発してしまったのだ。中古のフロンテも同僚の鈴木君に買い戻してもらった(半額の5万円)。

 あれから38年。この四輪自転車をいかに改造し、活用するかの苦労と計画を説明しよう。

今回の教訓

 実は苦労しているんです――。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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