「あなただけの手帳」にするために――決めておきたい「自分ルール」2009手帳特集“超”入門編

使い方を確立している人には、手帳はこの上なく便利なツールだ。一方で、うまく使えないと感じている人にとっては、どうにもつかみどころのない道具だろう。今回は手帳とのうまいつきあい方を考えてみたい。

» 2009年12月11日 20時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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 なぜ、手帳とうまくつきあえないのか。

 前回はその原因を「手帳術インストールしすぎ説」に求めた。そしてこれ以外にも原因はある。少々前振りが長くなるが、今回はまずこれに触れたい。


手帳に書くのは「おそれおおい」?

 そもそも日本の手帳は、発行元の共同体がそこに所属する構成員に配布するものだった。手帳が白いと正体不明の罪悪感を感じるのは、この辺にも原因がある。つまり、もともと国家や企業、地方公共団体や学校などから支給されたものには、なにやら“おそれおおい”意識が働く。ノートであればためらわないはずの「記入」という作業が、なにやらハードルの高い行為になってしまうのだ。

 平成不況によって、企業がその構成員に配布していた「年玉手帳」が減少した。そのぶんだけ手帳の市場は広がった。だが、市販のビジネスパーソン向け手帳は、手帳のそういった出自を暗黙のうちに引きずっている。特定企業の社訓などが書いていなくても、罫線やフォントはどこかしゃくし定規なムードがある。

 手帳を使いこなせないのは、手帳に特有のこういった雰囲気に気おされているからではないだろうか。さらに言えば、最近人気の輸入品風国産手帳が売れているのは、そんなムードをほとんど感じさせないないからかもしれない。

持ち歩き&運用ルールの設定がカギ

 使い方を確立している人には、手帳はこの上なく便利なツールだ。一方で、うまく使えないと感じている人にとっては、(たまに便利さを感じることはあっても)どうにもつかみどころのない道具だろう。前回のテーマである手帳術のインストール方法につづき、今回は手帳とのうまいつきあい方を考えてみよう。

いつも持ち歩く。よく見直しよく記入する

 これは、基本であり究極の手帳術だろう。最近の手帳は大型化の傾向があるが、それでも常に持ち歩き、カバンからさっと取り出して見直したり記入したりするのは、“基本のキ”だ。これがないと予定やアポイントの参照ができない。記入の機会が少なければ、手帳がいつまでも白いままだ。

 手帳を活用している人の多くは手帳を常に持ち歩いているはずだ。社内の規定などで仕事用の手帳を自宅に持ち帰れないような場合をのぞけば、常に持ち歩き参照し記入している。そのことで手帳が過去を振り返り未来を展望する、またとないツールに育っていくわけだ。

ほかのツールとのすみ分け/使い分けのルールを決める

 前回は触れなかった手帳術の1つがこれだ。手帳は、使い始めると「一大手書きシステム」の様相を呈してくる。アイデア用メモ帳、それを育てるA5版ノート、アラームとしての携帯電話、Googleカレンダーを併用し、iPhoneで参照。WebツールのToDo管理アプリを利用など、どんなツールをどのように使ってもいいのだが、問題はそのすみ分けと使い分けだ。

 筆者の例で言えば、手帳の横罫ページには、メモはとらない。必ずメモ専用と自分で決めた薄型バインダーにメモするようにしている。また、家庭では、細々した家事や覚え書き的なことは小型のメモ帳に書くようにしている。仕事用の手帳にそれらのことは決して書かない。それらは家事には大切なことであっても、仕事用の手帳にはノイズだからだ。アイデアをふくらませたり、何かをまとめたりするのにも手帳は使わない。専用のA5版ルーズリーフノートを用意してそこに書いている。

 以上はあくまで私の例だ。要するに「ツールを用意するときは、厳密な運用のルールを事前に決めておく」のだ。“なんとなく併用”するのなら、それはルール決定のプロセスだと意識したほうがいい。

 例えば手帳とGoogleカレンダーを併用するとして、マスターはどちらでサブがどちらなのか。あるいは手帳に予定を記入しGoogleカレンダーに実際を記入するのか。一大手書きシステムである以上、明確な分業とすみ分け/使い分けルールがなければかえって効率が悪い。企業で言えば同じ業務を2つの部署で担当するようなものだ。

 システム構築に関する、万人向けのルールはない。部分的には一定の法則性などはあるだろうが、人によって使いやすいツールは異なるし、ツールごとの向き不向きもある。そしてそれゆえに、『情報は1冊のノートにまとめなさい』『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』などの本が、“他人が見いだした普遍的法則はなにか”を求めて読まれているわけだ。

無理をしないためのルール

 手帳とは、それを使う習慣である。それまで使ったことがなければ、まず使うことを身につけなければならない。その上でこそ各種手帳術は実行可能になるし、身につけようとも思える。いわばこの手帳利用のスタート地点に立つには、まず手帳の利用を習慣づけなければならないのだ。

 「手帳術インストールしすぎ説」で書いたのは、手帳を頑張りすぎた一例だ。そうではなく、続く範囲で適当なやり方をずっと続けた方がいい。手帳に限らないが、頑張りすぎたり意気込みすぎたりすると、続かないのだ。

 大切なのは頑張ることではなく続けること。ゆるくてもいいから続けることだ。頑張って数日で終わるより、ゆるゆると数カ月やったほうが見えるものは多いはずだ。

 その前提になるのが、前述の

  • よく参照しよく記入する
  • 他のツールとのすみ分けルールを決めておく

 ことだ。まずはこの2つを守る。その上で、無理をせず使っていくことだろう。

ユーザーの数だけ“究極の手帳”がある

 本連載の第2回で触れたように、手帳には万人に向いたこれだという回答がない。職業も業務内容も異なるビジネスパーソンの一人一人が、それぞれ自分にぴったりの手帳を模索し、その結果、とじ手帳なりシステム手帳なりに落ち着いている。また、ときおり書籍や雑誌を参考にした手帳術を取り入れる。続くものは続けるし、続かないものはやめておく。そうやって自分だけの手帳と手帳術を確立していくのだ。その果てにあるのが自分だけの究極の手帳だ。

 市販の手帳を買ってくるだけでは手帳は完成しない。手帳術を次から次へと取り入れるだけでもまだだ。そうではなく、まず手帳を購入し、そこに手帳術を簡単なものから“インストール”し、使い続けるうちに、好みと具合の良さにあわせて確立されたものがあなたの手帳なのだ。それはあなたにぴったりの手帳であり、独自に編み出された手帳術が含まれているはずだ。

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