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» 2010年02月26日 23時00分 公開

がんばれ、新幹線樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

各国で高速鉄道の開設計画が進んでいる。現在は日本の新幹線とフランスのTGVの一騎打ちのような状況だ。

[樋口健夫,Business Media 誠]

 さまざまな国の鉄道に乗ってきたわたしだから、新幹線の素晴らしさはよく知っている。

 N700系の座席でホットコーヒーを飲むときに、安らぎを感じる。数十年前に感じた、初期の新幹線特有の横揺れが、ほとんど感じられなくなっている。安定した高速走行と安心感。この感覚を味わうたびに、ヨーロッパの高速列車TGVに乗った時のエピソードを思い出す。

余裕を持って駅に到着した……はずだった

 数年前、わたしはヨーロッパの広域を自由に乗れるユーレールパスを持ってフランスを旅していた。TGVに乗るためには、切符を事前に購入しなければならない。座席指定で切符無しに乗ることはできない。それは十分に分かっていた。

 わたしはTGVで、南仏のナルボンヌからユーロトンネルを通り、ユーロスターを組み合わせてロンドンへ向かう予定だった。

 ナルボンヌの駅に着いたのは、希望の発車時刻の1時間前。しかし、すでに7人ほどが切符売り場に列を作っていた。カウンターは2つか3つあったが、係員は女性1人。向こう側には何人か駅員がいたが、顧客対応はしていなかった。

 黙って列に並んだが、1人の客当たりの対応時間は15分から20分ほど。30分が経ち、数人分は前に進んだが、これでは絶対に間に合わない。発車時刻の5分前になったとき、わたしは荷物を持って列から離れ、直接列車に向かった。

 プラットフォームは自由に出入りができたので、そのままTGVに乗り込んだ。見たところ、席は多少は空いているようだ。列車が動き始め、適当に空いている席に座った。そこに車掌が現れて、ユーレールパスを見せた。

 わたしが切符を持っていないことを知ると、車掌は困惑した顔を見せた。こちらも、人がいっぱいで指定席の取りようがなかったことをジェスチャー混じりに懸命に訴えた。このときは、すんなり「こちらの席にお座りください」と案内されて、なんとかなった。

 その後も何度かTGVには乗ったが、すんなりと乗れたのは、日本から座席指定を取って行った時だけだった。一度など、切符売り場があまりにもゆっくり過ぎて、シャルル・ド・ゴール空港からの国際便にあやうく乗り遅れるところだった。

 フランスの駅のカウンターでは、長い列でも極めてゆっくりしたやり方で、いったい何を話しているのかというくらいおしゃべりが続く。ドイツもスペインも、フランスよりはマシだった。フランス人というのは、見かけによらず(?)辛抱強い国民なのかと感じたものだ。

TGVとの一騎打ち

 オバマ大統領が2009年4月に発表したところによると、ロサンゼルス―サンフランシスコ間やニューヨーク―ワシントン間、シカゴ周辺など6件、フロリダでの高速鉄道、ロサンゼルス―ラスベガス間など、米国の各地で高速鉄道を開通する計画を予定しているそうだ。

 高速鉄道は、エコであることと大量の乗客を安定的に運べることから、アジア各国でも計画が進んでいる。ベトナムのハノイ―ホーチミン間、中国各地(北京―上海、大連―ハルピン)、インド(デリー―ムンバイ、デリー―コルカタ)、シベリア鉄道整備計画など、挙げていけばキリがない。

 これらの高速鉄道は、将来的にはリニアモーターカーになるのだろうが、当面は日本の新幹線とフランスのTGVの一騎打ちのような状況だ。わたしとしては、何と言っても、もっと新幹線が普及してほしい。台湾で新幹線が完成したときには、喜んで乗りに出かけたほどだ。

 鉄道は列車の良しあしだけではない。駅も、駅員も、切符売り場も、すべてが鉄道のシステムの一部だ。フランスでの鉄道サービスは、決して満足できるものではない。

 これと比べれば、我が新幹線、列車の本数も多いし、安定感は最高だと思っている。がんばれ、新幹線。

今回の教訓

 Sushi、Tempura、Shinkansen――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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