右側通行? それとも左側通行? 日本の未来はどっち樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

海底トンネルや海峡をまたにかけた大橋で、アジアと日本を地続きにできるかどうか考察してきたが、ただつながったとしても懸念があるのもの事実だ。それは道路を通行する側が左右で異なることである。

» 2010年02月04日 18時00分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 先週まで、日本が海底トンネルや海峡をまたにかけた大橋で、アジア大陸と地続きにできるかどうか考察したが、仮にロシア韓国と海底トンネルでつながって、さらにベーリング海峡が橋でつながれば鉄道や車で米国まで走ることができる(あくまで「つながれば」だが)。ただつながったとしても懸念があるのもの事実だ。それは道路を通行する側が左右で異なることである。

左側通行と右側通行の変換、どうする?

 日本が左側通行なのは当り前だとして、米国やカナダ、ロシア、韓国、北朝鮮中国などなど――いずれも右側通行の国である。日本と海底トンネルで地続きになれば、トンネルのどちらかで、左右の通行を“変換”しなければならなくなる。実は実際にこうした変換を行っているところもあるのだ。Wikipediaによると、こんな記述がある。

左右交通区分の転換(Wikipedia)

 左右通行区分が異なるタイとラオス両国を結ぶタイ=ラオス友好橋は左側通行であり、通行区分を逆転させるためラオス側手前で上下線が平面交差によって入れ替わる構造になっている。一方第2タイ=ラオス友好橋は右側通行であり、タイ側で上下線が平面交差によって入れ替わっている。

圧倒的に多い右側通行

 4年半滞在したネパールも英国にならって左側通行の国だった。インドもタイも左側通行の国である。しかし、世界中の国々を数えると、

  • 左側通行:74カ国
  • 右側通行:166カ国

 である。圧倒的に右側通行が多いのだ。それでは「今から日本も右側通行に」となったらどうだろう。もちろん、変更直後は大混乱になるはず。そんなに簡単ではない。

 右側通行のサウジアラビアで8年以上自動車を運転していたが、日本に帰国した直後、広い道路から一車線の道路に入った時に、何回か無意識に反対側を走っていてあわてたことがあった。左右の車線がはっきりと分かれている幹線道路なら問題はなかったが、右側通行を左側通行に変えるのはやっぱり危険を伴いそうだ。

 だが、そうでないという話も聞いた。1967年9月3日に左側通行から右側通行に変更したスウェーデンのことだ。当時は大混乱を予想したが案外簡単に実現したと、スウェーデン滞在中に友人に聞いたことがある。直後の交通事故は荷車がぶつかったケースぐらいだったという。スウェーデンと国境を接するノルウェー、フィンランド、デンマークのいずれもが右側通行であり、自動車による往来が活発であったことが混乱を最小限にとどめたのかもしれない。

 国単位で左右の通行を変更したのは韓国や台湾が有名だ。日本が戦争で降伏した後、左右を変更して右側通行となった。右側通行から左側通行に変更した例もある。サモアでは、2009年に右側から左側に変更している。オーストラリアと近いからである。もう1つ身近な例では沖縄県だ。1972年の返還後、1978年7月30日にそれまでの右側通行から左側通行に変更した。

 鉄道はどうだろう。日本では自動車と同様に左側を走っているが、フランススイス、台湾、中国などでは、車が右側通行なのに、鉄道は左側。韓国は左右が混在している。航空機や船舶は世界各国の共通ルールとして右側通行だけとなっている。


 冒頭の問題をもう一度考えて見よう。もし海底トンネルや海峡大橋で各国とつながることになれば、タイ=ラオス友好橋のように平面交差で左右を変換するのが短期的には有効そうだ。長期的な視点に立つと、左側通行の周辺国が多い日本は現状の右側通行を改めたほうがいいかもしれない。

 ただし、これはスウェーデンと同様、自動車の往来が活発であることが条件だ。また、右側通行に改めるとすると、高速道路の出入り口、バスの運行路、信号機など、すべての道路行政に関係してくる。実際に変更するとなると多額の資金を必要とするのは間違いない。おまけに現在の通行側だからこそ商売になるガソリンスタンドや、外食産業などもあるはずだ。

 ――とまあ、そんなことを夢想しなくても、将来的には自動車の無人運転が実現して、右側だの左側だの考えなくてもいい時代がくるかもしれない。きっと来るんじゃないかな。

今回の教訓

 いっそ全世界の道路を一方通行にするとか。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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