無料化で満足するな――高速道路「自動化」にかける夢樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

長距離運転はしたくない。というのは、わたし自身が運転していたら、本も読めないし、PCも使えないし、渋滞に巻き込まれたら疲れるからだ。高速道路無料化が叫ばれているが、本当に必要なのは高速道路の“自動化”なのではないか――。

» 2010年02月12日 20時30分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 車の長距離運転はしたくない。というのは、わたし自身が運転していたら、本も読めないし、ノートに書き込むこともできないからだ。もちろんPCも使えない。特に高速道路渋滞に巻き込まれたらひどく疲れる。だから旅なら鉄道や飛行機、町中でもタクシーを選ぶことが多い。出張なら東海道新幹線のN700系。車内は静かで東京−新大阪間をフルに仕事ができる。

 ただ自動車だって技術革新があるはず。わたしが乗りたいのは自動運転機能が付いた自動車である。ゆりかもめや日暮里・舎人ライナーなどの新交通システムで利用している無人運転を自動車にも転用したらいいではないか。こうした自動運転の新交通システムは海外でも事例があり、総延長75キロ(無人運転世界最長)の「ドバイメトロ」や、冬季オリンピックでにぎわうカナダの「バンクーバー・スカイトレイン」も無人運転で有名だ。

 技術的な問題はさておき、自動車の自動運転はどういうものになるだろうか。ここで車の良さを考えてみたい。

  • 車は、ドアツードアの行動が可能
  • 車の運転を楽しむこともできる
  • 自由に行きたいところに行ける
  • 荷物をたくさん運べる

 ほかの交通手段と比較してこうした長所を持つ自動車を自動運転でスポイルしてはならない。一方、比較的自由に走行できて、同じ場所を走る台数も多い自動車の場合、人間や動物が突然飛び出してきたケースや、ほかの車の動きにどのように対応するか――などの懸念があるだろう。半自動にするか、完全自動にするかも考える必要がある。

 いくつか考えたところ、一番効果的なのは冒頭の長距離運転を自動化するのが良さそうだと思った。特に高速道路だ。人や動物が横切る可能性も低いし、交差点がないから車の向きも一定で、車線変更ぐらいの対応で済みそうだ。現政権では、あまり使われていない高速道路を無料にする計画を持っているが、それだけの発想ではあまりに悲しい。東京−大阪間を無人で走行できるようにするのである。

 高速道路では、まったくハンドルに触れる必要がなくなり、運転以外のこともできるとなれば素晴らしい。自動車の構造もまったく新しくする必要が出てくるだろう。走行中の運転席から離れて、後ろの席で別の仕事もできる。これぞ真の“自動車”だ。

 家族全員で長野にキャンプに行く時には、途中の高速道路を自動化してしまうことで、ドライバー役のお父さんも家族とのコミュニケーションを楽しめるはず。一般道に出れば手動運転に切り替れば、運転する楽しみも満喫できるだろう。高速道路の渋滞でぐったりして現地では眠ってばかりということもなくなり、観光地のアクティビティが増して地域経済の活性化に一役買うかもしれない。


 あのリーマン危機が1つのチャンスだった。なぜあの時、高速道路公団と自動車メーカーは、高速道路で自動運転の大規模な試験を行わなかったのだろうか。もちろん経済的な問題はあろうが、自動車に対する夢がしぼんでしまったではないか。

 運転は楽しい――と自動車メーカーは呼びかけるばかりだが、渋滞する高速道路の運転が楽しいとはとうてい思えない。楽しいところは手動で、楽しくないところは自動でと分けられるなら合理的だ。今こそハイブリッド車や電気自動車に自動運転機能を搭載し、高速道路の自動化を進めてもらいたい。

今回の教訓

 ぜひ全面自動化してほしい――。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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