今、ミラノとエルサレムにあるSさんの家は蔵書でいっぱいです。「正確な数はもう分からなくなってしまったけど、数万冊はあるだろうね」と彼は言います。もちろん学者ですから学術書もたくさんあってもおかしくありません。とはいえ、この蔵書の多さにはやはり少年時代の経験が大きく影響していると考えるのが自然でしょう。
本から得た哲学を芯として自分の人格を作り上げ、本の中の登場人物を友として、これらを糧にしながら、彼は必死で前向きに生きるコツをつかんできたのでしょう。苦しい時代だったでしょうが、そうした習慣を身につけられたことは、彼にとって素晴らしい財産になったのではないかと思います。
「自分の味方はすぐ近くにはいないかもしれないけれど、本の中には絶対にいる」
こう考えると、前向きにいろいろなことに挑戦していけると思うのです。
「先生に恵まれない」「上司の教え方が悪い」「尊敬できる人がいるけどとても私など相手にしてくれるわけがない」と悶々と悩んでいる人もいるかもしれません。
確かに、教え方がうまい先生や上司なんてそんなに多くはいないものです。それに、たとえ評判の良い先生に巡り会えたとしても学費が高くて続けられなかったり、先生も忙しすぎて自分のために割いてくれる時間なんてほとんどなかったり……。また、そもそも、評判が良くても自分の傾向に合っているかどうか、という問題もあるでしょう。
では、本を先生と考えてみるとどうでしょうか。本は読者を差別することがありません。怒ることはないし、やめたければ途中でやめてもかまいません。自分のペースに合わせて、好きなときに好きなことを勉強できるのです。
本を読むのが苦痛に感じる人も、このように考えれば本を開くことが楽しくなるのではないでしょうか。ちょっと気晴らしに温泉旅行にでも……なんて、どこかに行ったりするよりもずっと安上がりで、もっともっと新しい世界をあなたの心の中に開いてくれるのです。
スケジュールも自分で自由に決められます。本を読むことを、本の都合に合わせて待つなんて必要がないわけですから。読みたいと思ったら今すぐ買いに行くか、図書館にでも行けばよいのです。それに本屋にまで行かなくても、今ならインターネットでいくらでもあなたの好きな本を見つけて買うことができるでしょう。
どうか、あなたの気に入った良き先生となる本を見つけてください。ほんの少しのお金を出すだけで、素晴らしい先生たちがあなたの力になってくれるのです。
(次回は、「ライバルを見つける」について)
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