個人事業主が語る、独立する人が知っておくべき会計経理:大増税時代(3/3 ページ)
独立、開業をする人は何かしらの専門知識を持っている場合が多い。一方で「経理や税金は全然分からない」という人も多いはずだ。本記事を読めばそうとは言えなくなるはずだ。
コラム:廃業するより悔しい方がいい――筆者が法人化しないわけ
筆者の場合、計画的に起業したのではなく、取りあえず手続きの楽な個人事業主を選択した。その後売り上げも増え、法人化もチラッと考えたが、現在は個人事業主のままで十分だと思っている。
まず筆者の職種(仕事)を説明しよう。こうして原稿の執筆もしているが、主な仕事は他の企業の製品広報だ。具体的には、顧客の新製品を出版社や新聞社に案内し、記事として紹介してもらう。ジャンルはPC系、携帯系、AV系、デジカメ系、Web系、エンタープライズ系などIT系全般だが、時にはラジコンなど玩具メーカーからも依頼を請けている。
例えばデジカメ用の「1000倍速CF」や「おさわり探偵 なめこ栽培キットのiPhoneケース」「iPhone用充電Bluetoothキーボード」「Google Apps用スマホアプリ」など、年間に数十製品のリリースを手伝っている。
この広報業に関しては、メーカー系の顧客が多いので、個人事業主より法人の方が取引がしやすい感じもするが、実際には不都合を感じたことはない。外資系企業の国内初製品で大手の代理店とコンペになったこともあるが、他社は100万円以上、アイピーアール(筆者)の見積もりは半額以下なのであっさりと仕事の依頼がきた。業種によっては「法人しか取引しない」と言われるかもしれないが、IT系の業界はあまりこだわらない感じがする。
執筆業、ライターといった原稿を書く仕事は法人である必要はほぼない。多くの人が個人事業主として活動をしている。個人ではガッツリ稼がない限り、法人にする必要はない。だか法人化して編集プロダクションとして社員を雇い、集団で原稿書きを行っている会社もたくさんある。
筆者のもう1つの仕事はカメラマンだ。レース写真の撮影のため年に十数戦ほどサーキットに通っている。もともと趣味で撮っていたら仕事の依頼が来るようになったので“趣味仕事”と呼んでいる。カメラマンの仕事も個人事業主で問題なく、サーキットの取材センターで会う多くのカメラマンが個人事業主だ。
このように、職種としては法人化せず個人事業主のままで問題ない仕事をしている。開業して3年目の決算までは順調に伸び、売り上げも1000万円を越え消費税の対象にもなった。このまま売り上げが伸びるなら法人化も考えるところだが、リーマンショックの翌年に400万円ほど売り上げが減った。その後は何とか持ち直し廃業の危機は去ったが、現在は食って行ければいいという考えで、売り上げを伸ばそうとか事業を拡大しようとは思っていない。
安定してガッツリ儲かっていれば法人の方が税制面で有利だが、売り上げ、利益が激減すると個人事業主の方が有利となる。個人事業主は儲かって税金が増えると悔しい思いをするが、法人化して売り上げが減ると苦しい状況になり場合によっては廃業の危機となる。どちらかを選択するなら儲かったときに悔しい方が廃業よりはいいだろう。
筆者は昔から「仕事は楽でもうかって楽しいのが理想」と思っていて、リーマンショック前はかなり理想型に近かった。しばらく日本の景気回復も期待できないので、無理せずボチボチと仕事をするなら法人化の必要はないと思っている。
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