ソーシャルメッセージングが持つ2つの意味と多重化の重要性:モバイルネイティブで行こう(2/2 ページ)
東日本大震災に際して、iPhoneからSMSとMMS(ケータイメール)を送ったのだが、普段通りには届かなかったのは筆者だけではあるまい。LINEやFacebook MessengerなどSNSと連係したサービスでメッセージングの多様化を考えた。
ソーシャルメッセージングと国ごとのカルチャー
スマートフォンだからぜひデータ通信を楽しみたい。しかし友人とのコミュニケーションを考えるとSMSの料金パックも外しがたい。しかし両方支払うのは高い。コミュニケーションを活発に行う若年層を中心にして、携帯電話、特にスマートフォンの料金でこんなジレンマに陥っている。これを打開してくれるのが、ソーシャルメッセージングのアプリケーションやサービスである。
特にFacebook Messengerは世界各国で通用する万能のソーシャルメッセージングサービスと言える。しかし日本と違ってビジネス関係でいきなりFacebookでつながることはよほどのことがない限りはあり得ない。そのため、Google+のメッセンジャーやiPhoneのiMessageのように、SMS料金を取られず、Wi-Fi環境下でも利用できるメッセージングサービスへのニーズが強い。
筆者の住む米カリフォルニア州バークレーにはサウジアラビアからの留学生も多いが、彼らは米国でiPhoneを契約していたとしても、BlackBerryを手放さない。話を聞くと、キラーとなっているのは「BlackBerry Messenger」(BBM)というアプリケーションだ。これを使うと、SMSのようなテキストコミュニケーションをBlackBerryユーザー同士で行える上に、SMSの国際送信料金を取られることもないからだ。母国の友人や家族とのコミュニケーションがBlackBerryベースで進んでいることも理由だろう。
また欧州では「What's App」、韓国人は「カカオトーク」といった具合に、各国それぞれ、友人同士で使っているソーシャルメッセージングサービスがあり、Wi-Fiスポットを使って料金をセーブしながらも、母国と同じような頻度でのコミュニケーションを楽しんでいる。日本人の場合、今現在はLINEがその地位を獲得しつつあると言えるだろう。
複数の端末、環境からもメッセージングにアクセスできる「多重化」
先日、LINEがPCにも対応し、スマートフォンと同じアカウントでメッセージングが可能になった。つまりPCの前でも、外出先のスマートフォンでも、同一のメッセージングを専用ソフトで楽しむことができる環境が整ったというわけだ。Facebookもメッセンジャーアプリを用意しているが、PCではWebブラウザからチャットするスタイルに留まっており、専用アプリの快適さを考えるとLINEが一歩リードしていると言える。
またAppleもiMessageをiPhoneやiPod touch、iPadで利用できるようにた。Mac向け時期OS Xである「Mountain Lion」では「メッセージ」アプリを搭載し、iMessageのエコシステムにMacを参加させることを目論んでいる。なお現在のMac OS X 10.7 Lionでも「メッセージ」のβ版を試すことができるが、やはりチャット専用ソフトの快適さはWebのそれにはかなわない、という感想だ。
さらに音声のコミュニケーションも重要だ。LINEでは音声通話が、iMessageではFaceTimeを利用したビデオ通話がそれぞれシームレスに行える。Wi-Fi環境であればパケット料金やデータ制限を気にせず、無料で通話もできるのだ。
ソーシャルメッセージングと通話サービスの統合。既存の電話機による音声通話の役割を完全にはなくさないとしても、電話番号をベースとしたこれまでのコミュニケーションから脱却する可能性を十分に感じるのは筆者だけだろうか。
とはいえ重要なことはコミュニケーションをしたい人たちと同じアプリやサービスを利用することだ。例えば、友人や職場のコミュニケーションの環境について、どのようなアプリや手段が最も使いやすく、信頼性が高いのか、ということを日常のコミュニケーションを通じて検証して、自然にいいものを採用していくこと。簡単に言えば「あのアプリはどうだろう?」「このメッセージサービスはどうだろう?」と試行錯誤してみてほしい。そして冒頭にも触れたように、1つの手段のみに頼るのではなく、複数の連絡手段の確保を行っておくこともまた、重要な要素となってくる。
筆者プロフィール:松村太郎(まつむら・たろう)
東京、渋谷に生まれ、現在は米国カリフォルニアのバークレイで生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年ごろより、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(Web/モバイル)の関係性について追求している。
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