――今のビジネス環境だと、一年半成果もなく何かを作り続けるのは難しそうですが、それができたのはなぜでしょうか?
鳥嶋: 鳥山さんも職がなかったし、僕も他にやることがなく、ヒマだったからですね。ただ途中からお互い少しずつプロになっていくので、できるものの精度が上がっていきました。それが目に見えてきて、面白くなり始めたのです。僕も研究しているうちに読みやすい漫画と読みにくい漫画があるのが分かってきました。読みやすいものを突き詰めて残ったのが、ちばてつやさんの『おれは鉄兵』(講談社)でした。
19ページの漫画を50回考えながら読んでコマ割りを研究したのです。これを漫画家に指導したら漫画がめきめきうまくなりました。ようやく僕の指導は高校の教員レベルから予備校講師のレベルになり、きちんとした打ち合わせができるようになったのです。それがやっぱり面白かったですね。
――鳥山さんに漫画の研究をしてもらうことはなかったんですか? 漫画の研究は鳥嶋さんがされたと?
鳥嶋: はい。そこは役割を分けていましたね。
――それだけボツにしていたのに『Dr.スランプ』にゴーサインを出したのはなぜでしょうか?
鳥嶋: 純粋に面白かったからです。ただ少年漫画ということもあり、鳥山さんは女の子を主人公にするのを嫌がったんです。だからアラレが第一話で消えちゃうんですね。でも僕はアラレが面白いから主人公にしてくれと言いました。鳥山さんは「恥ずかしくて描きたくないから嫌だ」というわけです。
それで女の子を主人公にした漫画『ギャル刑事トマト』を描いてもらって、賭けをしました。『ギャル刑事トマト』が読者アンケートで3位以内に入ったら僕の言う通りにすると。だめなら、鳥山さんの言う通りにする。結果、僕が勝ち、めでたくアラレが主人公になりました。
――ということは『Dr.スランプ』のストーリーはできていたけど、ちょっと止まっていた期間があったということですね……。しかし19票だったデビュー作は気になりますね(笑)。
鳥嶋: そうですね。デビュー作に興味がある方は『鳥山明○作劇場1(ジャンプコミックス)』に『ワンダー・アイランド』という作品があるので、それを読めば、なぜ19票だったのかが分かると思います(笑)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング