監督と管理は違います。政策と文書も違います。今は、これがだめ、あれがだめ、という文書が多すぎます。政策とは仕組みの構築であり、発展を促すものです。今の時代に必要なのは「政策の専門家」であり、「文書の専門家」ではありません。政策の制定は1つの技術と言えます。
システムの複雑さを解決するには、(アリババのECサイト)タオバオの経験が参考になるかと思います。17年前、私たちはタオバオに数多くのルールを導入した結果、複雑になりすぎて出店者が理解できなくなりました。その後、私たちは「一つ足したら三つ減らす」ことを決め、ルールを1つ増やすたびに、既存のルールを3つ減らすことにしました。文書が増えすぎて、誰がどんなことをしても(ルールに引っかかって)問題が生じる可能性があります。
理論とシステムは違います。専門家と学者も違います。専門家は経験があり、うまくやれますが、うまく総括できるとは限りません。学者の多くは自分で実践しませんが、他人の実践から理論を形成できます。専門家と学者が連携してこそ、理論と実践も融合し、本当の意味で今日と明日の課題をイノベーションで解決できるようになります。
私たちはオフィスで考えた理論で物事を進めるのではなく、実践から理論を導き出す必要があります。P2Pの多くは、オフィスの理論を実践に移しました。P2Pを正確に理解することから多くの教訓が得られます。インターネット技術を否定するのではなく、オフィスの理論をそのまま実践してはならないという教訓です。
世界の多くの規制当局がここまで規制し、リスクをなくすという現象が起きています。自分の部署のリスクを取り除いても、経済全体がリスクにさらされます。すなわち、経済が成長しないというリスクです。未来の競争はイノベーションの競争であり、規制の競争だけではありません。習近平がおっしゃるところの「政権能力を上げる」こととは、監督管理によって秩序ある健全・持続可能な発展を実現することで、監督管理によって発展を犠牲にすることではないと、私は理解しています。
<後編へ続く >
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。 最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」 (小学館新書)。twitter:sanadi37 。
「6年前のM&A」でアリババに罰金、企業分割もちらつかせる中国当局の真意
アリババなど中国大手IT企業3社が12月14日、独占禁止法違反で50万元(約800元)の罰金を課せられた。いずれも過去のM&Aを当局へ申請しなかった点が問題視されている。世界ではGAFAへの規制が強まっているが、中国をデジタル大国に押し上げた立役者であるメガIT企業に対しても、同様に当局の姿勢が締め付けへと変化している。
上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード
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「孫正義氏はアリババへの投資で運を使い切った」中国メディアが分析するソフトバンク低迷の要因
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楽天の国内年間流通額の2倍、「独身の日」を支えるアリババの最新技術
中国最大のECセール「独身の日」で、アリババのECサイトは今年4982億元(約7兆7200億円)の取引額を記録。楽天の国内年間取引額の2倍に相当する注文・決済・配送需要が2〜3週間に集中する同セールを乗り越えるために、さまざまな技術がアップデートされてきた。ここでは、2020年のセールを支えた最新技術を紹介する。
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世界最大のECセール「独身の日」が中国で始まった。売上高を更新し続ける同セールだが、インタネットやEC人口は頭打ちで、構造改革を迫られていた。ここでは、セールの歴史をおさらいしつつ、コロナ禍の「ニューノーマル」が、構造の見直しに好機となっている今年の動きを紹介したい。
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中国で「国慶節」の8連休が10月1日に始まった。昨年の同連休では、旅行者数がのべ7億8200人、国内観光収入が6497億1000万元(約10兆円)だったが、コロナ後初となる今回の大型連休で、旅行と消費の動向が注目される。また家電セールも好調だ。
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中国バイトダンスのショート動画アプリ「TikTok」と、米オラクル、米ウォルマートとの技術提携案が今月19日、トランプ大統領の「原則承認」を受けた。しかし、バイトダンス、米企業2社の発表文のニュアンスにずれが生じており、TikTok新会社の立ち位置を巡り、憶測や波乱の芽を生んでいる。
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アリババとシャオミの寵愛受けた「小鵬汽車」が描く“呂布”テスラを倒す道
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