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» 2021年01月14日 12時00分 公開

ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(前編)浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

[浦上早苗,ITmedia]
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 監督と管理は違います。政策と文書も違います。今は、これがだめ、あれがだめ、という文書が多すぎます。政策とは仕組みの構築であり、発展を促すものです。今の時代に必要なのは「政策の専門家」であり、「文書の専門家」ではありません。政策の制定は1つの技術と言えます。

 システムの複雑さを解決するには、(アリババのECサイト)タオバオの経験が参考になるかと思います。17年前、私たちはタオバオに数多くのルールを導入した結果、複雑になりすぎて出店者が理解できなくなりました。その後、私たちは「一つ足したら三つ減らす」ことを決め、ルールを1つ増やすたびに、既存のルールを3つ減らすことにしました。文書が増えすぎて、誰がどんなことをしても(ルールに引っかかって)問題が生じる可能性があります。

 理論とシステムは違います。専門家と学者も違います。専門家は経験があり、うまくやれますが、うまく総括できるとは限りません。学者の多くは自分で実践しませんが、他人の実践から理論を形成できます。専門家と学者が連携してこそ、理論と実践も融合し、本当の意味で今日と明日の課題をイノベーションで解決できるようになります。

 私たちはオフィスで考えた理論で物事を進めるのではなく、実践から理論を導き出す必要があります。P2Pの多くは、オフィスの理論を実践に移しました。P2Pを正確に理解することから多くの教訓が得られます。インターネット技術を否定するのではなく、オフィスの理論をそのまま実践してはならないという教訓です。

 世界の多くの規制当局がここまで規制し、リスクをなくすという現象が起きています。自分の部署のリスクを取り除いても、経済全体がリスクにさらされます。すなわち、経済が成長しないというリスクです。未来の競争はイノベーションの競争であり、規制の競争だけではありません。習近平がおっしゃるところの「政権能力を上げる」こととは、監督管理によって秩序ある健全・持続可能な発展を実現することで、監督管理によって発展を犠牲にすることではないと、私は理解しています。

後編へ続く

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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