好調組に共通しているのは、デジタル施策の徹底、機能性重視のアイテム、低価格の3軸だと考えられる。
トレンドファッションを身に着けたいが、外出の機会が減った今、そうした商品への支出を抑えたいという消費者のニーズに対し、しまむらは、気軽にトレンドアイテムを楽しんでもらえるよう低価格で提供している。混雑を避けて、家族でアウトドアやスポーツを楽しみたいといった消費者ニーズに対し、ワークマンは、防寒用、スポーツ用、部屋着など、用途が明確なものを低価格で提供している。
そして、それらのアイテムを家にいながら、購入したいと思わせるデジタル施策が、コロナ禍の鍵だ。実際にモノを見ずに購入することはハードルが高いが、「買いたい」と思わせる施策として、ワークマンもしまむらもインフルエンサーによる情報発信に注力している。
多くのファッションブランドが陥りがちなのは、イメージを優先するあまり、モデルや芸能人を起用して、消費者の求めるリアリティーとのギャップを作ってしまうことだが、消費者の感覚に近いインフルエンサーが商品を着用したり、紹介したりすることで、リアルな着用イメージや使い心地をイメージしやすくなるのだ。消費者目線を徹底し、「買いたい」と消費者に思わせた企業が、コロナ禍で売上を伸ばせたのだろう。
山本 知子
グロービス・ファカルティ本部研究員。英国国立ウエールズ大学院経営大学院MBAプログラム修了。日系企業や外資系企業にて、ブランド事業の企画立案から販売政策まで一連のマーケティング業務に従事。グローバルブランドにて、新しいコレクションの立ち上げも経験。グロービス経営大学院にてマーケティング領域のコンテンツ開発を担当。共著書に、『改訂4版グロービスMBAマーケティング』。
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