ワタミ渡邉美樹会長が見据える“コロナ後のマーケティング戦略”攻めの姿勢(3/3 ページ)

» 2021年03月31日 15時52分 公開
[武田信晃ITmedia]
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コロナ後を見据えたマーケティング戦略

 飲食店だけではなくそれを支える生産者、問屋、食品加工業者なども厳しい状況を迎えている。コロナ禍で商品が売れないことから大量の在庫を抱えているのだ。一方で、在庫を放出すれば値崩れが起きるジレンマも抱えている。

 渡邉会長は「1年分の在庫を一括で購入することで、値崩れを起こさずに生産者を助ける。一緒にコロナを乗り越えていく」と取引先を支援する考えを述べた。

 具体的な取り組みとして「特急レーン 焼肉の和民」において「極上! A5和牛コース」(100分、130品目、4380円)という食べ放題のコースを1年限定で実施する。「ワタミには大きな利益は出ないものの、多くのお客さまを呼ぶことができる。お客さまもA5ランクの和牛を食べ放題で安く食べられる。結果、生産者も救われる」と3者がウィンウィンになることを強調した。

 利益への影響を記者から問われると「短期的に影響はあるものの、コロナ後に『焼肉の和民』が世の中に定着しているようにすべきと考えています。今は利益は小さくても、『焼肉と言えばワタミ』というポジションを取ることのほうが重要です」と将来を見据えたマーケティング戦略だとした。

焼肉の和民を定着させるためのプロモーションはマーケティング戦略の一環

 焼肉店での換気については、100秒に1回の割合で換気が終わっていることが実証実験で判明したため、店の看板などを利用してアピールしていきたいとした。

店内の空気の流れを可視化(写真は同社提供)

 店舗展開については「当初の予定通り120店舗。銀行の融資が下り次第、直営店を展開し、同時にフランチャイズの展開もスタートしていく」と語り、コロナ禍でも攻めの姿勢であることが伺えた。テークアウト・デリバリー業態では「から揚げの天才は21年3月末までに92店舗までとなり、来期は200店舗の出店を計画している。40〜50社の企業がフランチャイズでの出店をしたいと申し出てくれており、お待ちいただいている状況」とテークアウトブームに乗って積極展開していく考えだ。

 「から揚げと焼肉はレッドオーシャンであることは間違いない。私たちはもともとレッドオーシャンが好きで、市場が大きくて厳しいところに参入して勝てば大きな果実を得られる。だからワタミの戦略としては間違っていない。差別化は『QSC(Q=クオリティー; S=サービス; C=クレンリネス)』しかないと思っている。しっかり実施していく」と厳しい状況を勝ち抜く自信を見せた。

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