――この3年のアクアは、衿や袖などを手軽に予洗いできる超音波ユニット「らくらくSONIC」を内蔵した洗濯機、海外ドラマに出てくるような両開きデザインの大型冷蔵庫など、「他社にはない商品」を出し続けています。これは旧三洋電機の開発者による力が大きいのでしょうか。
もちろん三洋電機からの技術もありますね。特に日本向け製品は、日本国内で開発しているため、その技術を活用しやすい環境にあります。グローバル向け製品は、中国本土で作っていますので、その開発過程で生まれた新たな技術もあります。当然、三洋電機のDNAはありますが、さらにハイアールの新しいDNAも上手に取り込んだ結果、「他社にはない商品」が開発できたと思っています。
――海外メーカーのハイアール傘下に入ったことで、起きた問題はありましたか。
ハイアールはそもそも、米国のゼネラル・エレクトリックやイタリアのキャンディなど、多くの国の家電メーカーを買収しているため、むしろそれぞれのローカル市場への理解は非常に深いと感じています。買収された企業は、基本的に現地をターゲットとした製品を開発するため、現地の声や判断を大切にしてくれていると感じますね。
とはいえ、われわれ日本の声を何でも聞くというわけではなく、数字やユーザー調査などしっかりとした根拠はもちろん提示する必要があります。逆に数字や根拠があれば、かなり自由度が高い開発ができるともいえますね。決断スピードに関しては日本企業と比較できないほど速いため、やりやすい部分も多いです。
そのような背景もあり、根拠の1つとなるユーザー調査はかなりしっかりやっています。1000人規模のインターネット調査、1カ所に集まってのモニター調査、グループインタビュー、試作品を使った調査など、ありとあらゆる形式で「どの製品が売れるのか」を調査しています。「こういうものが売れそう」という発想だけでは開発にGOは出ず、論理的な理由付けが必要です。このあたりはハイアールならではの、非常にデジタルな決定プロセスだと感じます。
また、ハイアールとの連絡をかなり密に行っており、お互いに相手の事情を把握できていることも、スムーズな意思決定にいい影響を与えています。コロナ禍以前は頻繁に行き来していましたし、現在はオンラインですが頻繁にコミュニケーションをとっています。われわれの販売状況をリアルタイムで共有しているので、実際「先週、○○でpretteが売れたのはなぜだ?」というような会話が日夜繰り広げられています。
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