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生成AI、明治の活用法 社内アイデアソンで生まれた案は?生成AI 動き始めた企業たち(1/2 ページ)

» 2024年04月18日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

連載:生成AI 動き始めた企業たち

 生成AIがビジネスを大きく変えようとしている。従来のルールを覆す「ゲームチェンジャー」となり得る新技術に、企業はどう向き合うのか。生成AIの独自開発・活用に名乗りを上げた企業に構想を聞く。

これまでの掲載

日本IBMサイバーエージェント日立製作所富士通NECパナソニック コネクト

NTTデータ情報通信研究機構(NICT)三菱電機村田製作所JR西日本

アサヒビール九州電力住友生命保険住友化学名古屋鉄道ライオン旭化成 

 連載「生成AI 動き始めた企業たち」第19回は、大手菓子メーカー、明治の取り組みを紹介する。同社は1月15日から従業員約1万人に向けて生成AIツール「meiji AI Talk powered by ChatGPT」の運用を開始した。

 「生成AIと従業員の知見を掛け合わせることでこれまでにない価値創造・業務効率化の実現を目指す」との目標を掲げ、メールなどの文章作成や要約作業、プログラミング言語のコード生成などに活用しているという。活用アイデアの創出に向け、社内ではどのような取り組みをしているのか。回答は、明治ホールディングス グループDX戦略部 イノベーションGの佐々木恭平氏。

ビジネスへの影響 自社の強み 競争優位性 リスクと対処法 ルール整備
村田製作所 ルーティン業務の自動化でアウトプットに集中できる データの活用におけるAI利用に強み 過去からのAI活用に関するノウハウ蓄積が競争力に 「守り」「攻め」の2つのリスクを見る必要がある 利用規則で制限を設けている
JR西日本 さらなる生産性向上に期待 通話要約の業務で18〜54%の効率化を実現 人と生成AI両輪で事業を展開 個人データを機械学習に利用しないことが必須 ルールブックを作成し対応者全員に研修
アサヒビール 人がより創造的な活動に従事できる 文量の多い技術資料を要約できる 早期の試行で生成AIの適応範囲を理解 政府や業界の動向に注視が必要 グループ会社で注意点などを共有
九州電力 業務の品質維持や高度化でより低廉で安定した電気を届けられる これまで自社設備の保守・維持管理でAIを積極活用 自社にとっての最適ツール・活用法を検討 情報セキュリティ対策の徹底が必要 生成AI利用のガイドラインや解説動画を作成
住友生命保険 自身では思いつかないアイデアを得られる 顧客から得たデータを価値に換え還元する「顧客価値増大モデル」に強み ウェルビーイングサービス領域でトップを目指す 国の方針も踏まえ社内規定を見直しリスク抑制を図る ガイドラインの作成・運用や勉強会による啓蒙活動も実施
住友化学 従来の暗黙知を共有知化し新しいビジネス価値を創出 独自生成AI「ChatSCC」を導入し最大50%以上の効率化を確認 独自のコア技術を活用したビジネス展開や競争力の確保を目指す 社内データを情報源として回答生成する仕組みを設けハルシネーション低減を検討 独自のプロンプト集や指示文書作成テクニックの動画を社員に公開
名古屋鉄道 生成AIを第2の自分として使うヒトが評価される社会に AI画像解析で踏切事故の未然防止を推進 鉄道現業部門や顧客向けサービスでも生成AI活用を検討 セキュリティ教育、リスク対策を継続して実施 「入力情報」と「生成物」の2点をポイントにガイドラインを整備
ライオン ビジネス効率化や従業員のスキルアップに貢献 「知識伝承のAI化」ツールが技術の属人化を解消 先端技術の積極的活用と人材育成 適切な利用範囲を明確にしたガイドライン発行などが必要 生成AIの適切な活用を支援するコミュニティ運営などを実施
旭化成 生成AIはDXの「X」の部分を加速する強力なツール 全社員が対象の人材育成プログラム「旭化成DX オープンバッジ」を実施 各事業分野に特化した独自のAIモデルの構築を目指す 生成AIを「使う」リスクと「使わない」リスクの両面に向き合う リスクや留意事項をまとめ全社にガイドラインを発行し周知
明治 これまでにない価値創造・業務効率化の実現が可能に 社内アイデアソンではRAG技術を活用した社内データ検索の効率化などが創出 社員の生成AIリテラシーを高めるための取り組みが必須 meiji AI Talk はセキュリティーを担保するため自社のAzure環境に構築 利用画面上で都度リスクなどを注意喚起
各社の回答(要約)

Q. 生成AIはビジネスと社会にどんな変化をもたらすか

 生成AIの登場により、これまでにない価値創造・業務効率化の実現が可能になると考えています。当社は、日本マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を活用し、当社の環境にあわせて構築した生成AIツール「meiji AI Talk powered by ChatGPT」を、2024年1月15日より社員約1万人を対象として運用を開始しました。

 導入後の社内説明会には多くの社員が参加し、注目度の高さを感じました。現在は、メールなどの文章作成や要約作業、Excel関数に関する質問やVBA(※1)のコード生成などに活用しています。また、効果的な使い方など情報を発信するコミュニティーも立ち上げ、社員同士が良い活用方法をシェアできる仕組みを作っています。

(※1)VBA:「Visual Basic for Applications」の略語で、ExcelやPowerPointといったMicrosoft Officeのアプリケーションの機能を拡張することができるプログラミング言語のこと。

効果的な使い方などを発信するコミュニティーを立ち上げ、社員同士が活用方法をシェアできる仕組みを作っているという(同社提供、以下同)

Q. 自社のAI技術の強みは何か

 「meiji AI Talk powered by ChatGPT」は、汎用的なLLM(大規模言語モデル)として全社員が幅広い業務シーンで活用できる生成AIです。

 当社独自の活用方法はまさに検討段階であり、これから着手するところですが、23年度にこの足がかりとして複数部署のメンバーによるアイデアソンを実施しました。この取り組みから創出された生成AIの活用アイデアとして、RAG(※2)の技術を活用した社内データ検索の効率化や、システムヘルプデスク業務を生成AIで代替するなどのアイデアが創出されました。今後はこれらのアイデアを実現すべく、効果検証を行いながら進める予定です。

(※2)RAG:「Retrieval Augmented Generation」の頭文字をとったもので日本語に訳すと「検索拡張生成」のこと。

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