マニュアルアダプタまで購入して、オート以外の撮影もできるようになったOM-10。だが、カメラをこれしか持っていなかったら我慢して使うところだが、これ以外にも使えるカメラは山とある。マニュアルで使うなら、OM-10じゃなくてもいいわけである。
そう思うと、OM-10の出番も少なくなってきた。何かほかの面白そうなカメラを、と探していたのだが、そういうときに限ってOMシリーズの程度のいいヤツが見つかるものである。ほかに面白そうなカメラもなかったので、手に取ってみた。
よく見ると、普通のOM-2とは違って新しい感じがする。プリズムの腐食もないし、スクリーンも綺麗だ。症状は、シャッター不良。電池残量はまだあるようだが、どこかでシャッターが引っかかっていて、ミラーアップしたままである。
こういう症状は、OMシリーズではよく聞く。よく聞くということは、探せば直しようがあるということである。直らないようだったら、プリズムとスクリーンをOM-10に移植してもいい。そう思って購入した。例によって、3150円である。
帰って調べてみると、これはOM-2のリファインモデルで、OM-10から5年後の84年に発売された「OM-2 SP」であることがわかった。SPとはボディにも刻まれているが、SPOT/PROGRAMの頭文字を取ったものである。
OMシリーズとしては初のプログラムAEモードを備えたモデルで、シャッタースピードと絞りがお任せで撮れる。既存のレンズを使ってこれを実現するのは大変だったろうが、残念ながらそれを使う機会はほとんどないと思う。
ファインダ内の露出計が見やすく、マニュアルカメラとしても普通に使いやすそうだ。ボディ脇のボタンを押すと、液晶のバックライトが点いて、露出計が見やすくなる。さすがはOM一桁台だけあって、細かいところまでよくできている。
シャッタースピードもマニュアル設定可能ということで、バルブ撮影もできるのだが、速度リングがどうしてもバルブまで回らない。あちこち調べてみると、レンズ脇の下の部分に、小さなボタンがあるのを見つけた。これを押しながらリングを回すと、バルブまで回る。
セルフタイマーの仕組みは、非常に変わっている。最初は機能がないのかと思っていたが、ボディ前面にある赤いLEDの上の突起を持ち上げて、左に倒すと、セルフタイマーモードとなる。元に戻すまで何度でもそのままでセルフタイマーとなるのは、便利なのか不便なのかよくわからない。
露出補正は、OM-10のように「それってISO感度直接回してるだけじゃん」的なものではなく、ちゃんと現在のISO感度設定をキープしたまま、ダイヤルが回る。原理的には結局同じ事なのだが、表示の仕方で使い勝手がずいぶん違う。
底部には同じような蓋が2つあるが、電池を2カ所に入れるわけではない。真ん中寄りのほうは、モータードライブ接続用の端子である。しかし同じような蓋で、紛らわしくなかったのだろうか。
このカメラ、電池を使う割には電源ボタンがない。OM-10と同じように、しばらくすると勝手に電源が切れている。復帰させるにはモードを変えるか、シャッターボタンを軽く押す。
電源ボタンがないため、すぐ電池が切れるという誤解もあるようだ。カメラ自体はそれほど珍しい作りではないが、OM-1や2の陰に隠れてか、あまり中古市場では見かけないカメラである。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
第18回:お得にマクロ、接写リングの魅力
第17回:人気がないにもワケがある? OM-10の実写
第16回:ホコリと格闘するOM-10の修理
第15回:一眼レフを身近にしたOLYMPUS 「OM-10」の悲劇
第14回:優秀なレンズが揃うM42マウント
第13回:厚い壁に阻まれた? ZENIT-Eの修理
第12回:平凡の中に潜む非凡、「ZENIT-E」
第11回:カリッとした描写が魅力、さすがはマミヤセコール
第10回:ミモダエする週末、「MAMIYA ZM」
第9回:「OLYMPUS XA」の撮影
第8回:キカイだけで理想を具現化してみせたXAの中身
第7回:場違いなほどの完成度――「OLYMPUS XA」
第6回:「EXA IIa」の撮影
第5回:「EXA IIa」の分解と修理
第4回:シンプルかつ質実剛健、「EXA IIa」
第3回:VITO BLの撮影
第2回:VITO BLの分解と修理
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